かくれんぼと夢と儚さと/ユメミザクラの木の下で
昨日ご紹介した『ふしぎな木の実の調理法』に引き続き、今日もこそあどの森です。
すっかりハマってしまって、ちょこちょこと読んでいるのだけど、今日読んだ『ユメミザクラの木の下で』が本当にほんとうにとても良すぎたので、連続だけどお話させてください。
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遠くは離れて暮らすバーバからお手紙でかくれんぼの話を聞いてから、かくれんぼのわくわくって一体何なのだろうとスキッパーは興味を惹かれます。
スキッパーはずっと一人で静かに生きてきたから、人とかくれんぼしたことがないんですよね。
今回の物語のキーワードは「かくれんぼ」です。
【あらすじ】
ある春の日、お散歩にでかけたスキッパーは知らない女の子に出会って一緒に遊ぶことになります。まるで幽霊やお化けのように名前も名乗らず「ウサギ」とだけ呼ばせて、現れたり消えたりするウサギやその友達たちをスキッパーは不思議に思いながらも、楽しく遊んで、最後はみんなでかくれんぼをするのですが…。
何度もやるうちにすっかりほんもののかくれんぼの楽しさに夢中になっていくスキッパー。だけど、スキッパーが鬼役になって探しているうちに、突然前触れもなしにその時間は終わってしまうのです。
当然スキッパーは戸惑いますし、探します。
スキッパーはいっしょうけんめいさがしました。みつかりません。すこし不安な気持ちになりました。もっといっしょうけんめいさがしました。でも、どんなにさがしても、みつからないのです。
泣ける…。
かくれんぼって鬼であってもかくれる側であっても絶対にお互いを信頼してないとできない遊びだなと思うのです。
万が一途中でどちらかが飽きてひとりぼっちにされてしまったら、かなしすぎる。
そんな心がきゅううううとなるような時間がすごく丁寧に描写されていて、スキッパーのこと、どんどん抱きしめたくなっちゃいます。
この突然消えてしまった「ウサギ」は誰なのか、不思議な時間はなんだったのか、後半の「おとなのたちの話」パートでどんどん明かされていく秘密に、はあああとため息がつい出てしまいました。
そして最後のページ。開いた瞬間、思わずぞくっとしてしまいました。物語としてあまりに美しすぎて。
なんて上質なファンタジーなんだろう。
起きた瞬間は覚えているのにどんどん忘れていってしまう夢は、いつだってほんの少しだけ切ない。それを物語として完璧に見せてもらったような気がします。
心が優しくなって、だけどちょっと切なくなる。そんな夢を読みたいときに。