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夢を叶えてあげたのはわたし

なんとなくテレビを点けたらたまたま流れてきたヨーロッパの風景。

そういえば、一年前の今ごろにわたしは働いていた会社をやめて、引越しをして、慌ただしくヨーロッパ旅行に旅立ったのだった。

旅してみたかった。もっと仕事を頑張ってみたかった。引越したくなった。居心地の良かった会社を辞めるとき、今思い出すといろいろな理由が思い浮かぶし、人に聞かれるたびに多分適当にいろいろな理由を言っていたような気もするけど、決定的な何かなんてわからない。

きっと決断する瞬間なんてほんとうはそんなものなのかもしれない。

気がついたら部屋に少しずつダンボールの数が増えていき、名残惜しい人たちと名残惜しい場所で何度もさよならの乾杯をし、荷物をつめて、空港に行った。


海外にたった一人で、ほんとうに一人ぼっちの旅は初めてだった。緊張もしていた。はず。だけど、飛び立つときにはもう寝ていた。

到着してから5週間、ありとあらゆる場所に行った。

泊まる場所も交通手段も旅しながら決めた。

夢の途中にいる。って、ふわふわと何度も思った。

随分遠くまで来ちゃったんだなあ。って何度かぽつんと思った。

もう帰ってもいいなあ、まだ帰りたくないなあを繰り返して、歩いて歩いて歩いて、あっというまに帰ってきた。


日本に帰ってきて、一気に入ってくる情報量の多さにめまいがした。

高さのばらばらなビルも、アスファルトのつるっとした道路も、色鮮やかなカラフルな広告も新鮮に感じたのはちょっぴりだけで、あっという間に日本に馴染んだ。

滞在中は一度だって恋しくならなかったのに、戻ってから2週間くらいはパンもピザもパスタも食べる気分にならなくて自分はやっぱり生粋の日本人なんだってほんのちょっとだけ落ち込んだ。


『ヨーロッパに行きたい』

自分がほんとうにやりたいことが叶ったのは、もしかしたらほとんど初めてだったかもしれない。

お金を貯めれば誰だって行けるでしょって、言われたらそれまでだけど。でも、小さい頃からの夢を叶えたのは紛れもなくわたしで、夢の途中にいたあのとき確かにわたしは幸せだった。

わたしはわたしのことを幸せにしてあげられるんだなあって思った。


わたしはもっとわたしのことを幸せにしてあげたいなって思う。大げさなことじゃなくて小さなことでももっときっと。

明日はなにをしてあげよう。

小さな幸せをくりかえして、その先にまた、ヨーロッパを散歩しているわたしをつくってあげようと思う。





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hitomi.
もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。

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