時代に対応したアプローチ
基盤なき活動に持続性はあるのか...
前回の記事では補償という問題を取り上げましたが、補償するためには経済的な基盤は必要です。日本の自然保護団体や、いろいろな自然を扱う機関には、経済的基盤の重要性への認識が先進国の中でも特段低いと考えています。その認識の低さは、活動規模の小ささや国民への普及活動が小規模だという現実に反映されているのです。
ボランティア活動というのもまた素晴らしい考え方ですが、想いで突き動かされた主張によって生活を追われてしまうのでは、そのひずみはまた新たな形で違う角度からの想いによって阻止すべき問題となってしまうのです。
動物を狩る・捕る人たちは、対象の動物を見つけることに長けているという話は前回の記事でしました。では動物たちを捕るなと主張する人たちは、逆にその動物を野生で目の当たりにすることが出来ればこの上なく貴重な体験になりますよね。
見つけて捕るのではなく、見つけられない人たちに見つけて見せることを仕事にできれば、それは捕りたい人にも捕ってほしくない人にとってもWIN WINな解決策なのです。ではなぜ世の中がそういった流れに向かないのか?それは見つけることが得意な人々が必ずしも“発信することにも長けているわけではないからです。営業をかけながらガイドをすることよりも、気ままに出向いて捕獲すれば収入になるのであれば捕獲することを選ぶ方が効率的で選択肢としてもっとも合理的な判断なのは一目瞭然です。では誰が彼らを、動物を見つけるプロとして社会へとアピールし、人間社会で彼らが生きるための収入補償をすればいいのでしょうか。
環境ガイドはプロフェッショナル
もしも自然ガイドというツアーガイドの地位が確立された社会があったとしましょう。そのツアーガイドの所属先は環境団体です。環境団体によって旅行会社や、ツアーを希望する個人に対し斡旋され、雇用関係が成り立ちます。ツアー料金は高額設定となります。その理由は、環境ガイドはその環境を、顧客の要望を安全に叶えるプロフェッショナルだからです。野球で例えるならばまさにプロ野球選手です。
さて現実に話を戻したときに、なぜこの構造が自然保護ではなかなか起こらないのか。それは興行収入への意識の違いです。プロ野球は試合を通し、グッズの販売や飲食・放映権など興行に対しての対価をしっかりと徴収します。その金額は、プロ野球という興行を継続可能な金額を的確に確保しているわけです。ファンクラブの年会費は必ずしも高額ではありません。しかしそれは年間で144試合という試合が行われているという基盤構築を行う基本があってのものです。一方で、自然保護に目を向けてみましょう。ある自然保護団体の会員費は入会費が1,000円、年会費が5,000円です。もっとも高額なもので10,000円という設定で、プロ野球と極端な金額差はありません。しかし自然保護団体は144回も一回40,000人動員するイベントをもちろん行っていません。その一方でパンダのマークでおなじみのWWFは、最低が5,000円というのは同じですが最大の設定は100,000円です。この差が日本で環境活動が活発化できない要因なのです。
基盤がなければ地元の支援もできなければ、声をあげるだけで実践的な活動ができず、声は挙げるけれども動物生息域の地元の生活保障もできないのです。ボランティア頼みで、ボランティアが集まらない時には活動ができないという状況では、自然保護の継続というもっとも必要な持続性を維持できないのではないでしょうか。さらに担い手育成が出来なければ、近い未来には多くの動物たちの命も、共生ができないという危機に直面するのです。
目の前の命を救う自然保護活動と、持続性の高い長い目で見たシステム構築の両立なくして本当の自然保護は成り立たない。今一度基盤の重要性を自然保護という業界でも検討する必要が差し迫っています。
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