國分功一郎さん①「暇と退屈の倫理学」Podcast全文テキスト化/ep03-1「アワノトモキの読書の時間」
2021年6月からホシノさんと配信をしている、
Podcast「アワノトモキの読書の時間」 Work Teller
現在、全放送(約120回分)を少しずつテキスト化しております。
今回はep03-1(3冊目の1話目)
ep03(1~3)「暇と退屈の倫理学」(國分功一郎さん)
ep03(1~3)で取り扱わせていただいた3冊目は、
國分功一郎さんの「暇と退屈の倫理学(増強新版)」
(新潮社から文庫本が出ているので、そちらのほうが追加の説明もあり、読みやすいようです)
文庫版の帯には
「東大・京大で1番読まれた本」の文字が。
(東大・京大の学内書店で2022年1月~12月実績、とのこと)
30万部を突破したベストセラーなので、
改めて説明の必要がない本ですが、
私が手にした2019~2020年時点ではそこまで売れていなかったはず。
「まえがき」の冒頭から、
意外性があって「お!」と思ったのを記憶しています。
「倫理学」を本にする(品行方正でありそうな)大学教授が、
「俺」「歌舞伎町」と使うんだ
(なんかアブノーマルな人なのかな?)、と。
本書の中では、時代も、洋の東西も、
読者がついていけなくなるほど、
縦横無尽に論を展開されるので、
途中で理解不能になる部分もありますが、
才気走る、エキサイティングな書籍です。
ep03-1、よろしければご一読ください。
Podcastはコチラから↓
出会い直して思うこと(浪費ではなく、消費させられる私達)
本書では、「浪費と消費の違い」が1つの重要メッセージだと思います。
浪費:そのものを自分なりに味わうこと。そのもの自体を受け取ること。
消費:他者の奴隷、記号・概念、物語を求める(村上春樹さん的)こと。
私自身のことを考えると、
この本を読んでおきながら、日々日々「消費」し、
「搾取」されて生きているな・・・と。
資産家・有閑階級ではないので、
ずっと「暇だけど×退屈していないよね」
という生活を送れるとは思えませんし、
以下の図のように、
きれいさっぱり4象限に人が分類はできるとは思いませんが、
時には「暇を持ち」×「退屈しない時間=浪費する時間を持ちたい」
と思います。
自分にとっては、
このnoteを書いているときかもしれませんし、
早朝5時起きでジャーナリングをしているときもしれません。
もしくは、昼間にランニングをしているときかもしれません。
余談ですが、そういったときには、
恐らく「目的」や「目標」、「合理性」、「合目的性」のようなものに
蓋をする必要がありそうです。
【全文】ep03-1「暇と退屈の倫理学」(國分功一郎さん)
配信:2021年9月14日 21分25秒
アワノ
こんにちは。「アワノトモキの読書の時間」です。
この番組は、働く人と組織の関係性の見直しをテーマに、
私が独自の視点で選んだ本を1冊3部構成でご紹介していきます。
取り上げる本は、売れ筋の本ではありません。
皆さんがご存じのない、少しニッチなものが多くなるでしょう。
20年以上、人、組織の関係性を見つめてきた私の観点から、
今の時代に必要だと思うものだけをご紹介していきます。
1.暇と退屈の倫理学(國分功一郎さん)
アワノ
はい、 では、アワノトモキの時間、
第3回目を放送させていただきます。よろしくお願いします。
ホシノ
はい、お願いします。
アワノ
今日ご紹介させていただく本は、題名が「暇と退屈の倫理学」という、
少し変わった本になります。
著者は國分功一郎さんという哲学者。
今、東京大学の大学院で准教授(2024年時点では教授)をされている方が、
初めて出された本になります。
ホシノ
はい
アワノ
暇と退屈の倫理学。
「なんじゃこりゃ?っていう感じだと思うんですけど。
ホシノ
そそりますね。
アワノ
そそりますか?珍しいですね、
ホシノ
毎回、アワノさんの紹介する本は、そそられてますよ。
2.暇を持とう、自分なりの生活をしっかり味わおう
アワノ
この本のテーマというか 伝えたいことは、
僕なりの言葉で言うと、
まず暇を持とうってことなんですね。暇を持とう。
そして、自分なりの生活をしっかり味わいましょう、と。
ホシノ
うん。
アワノ
なぜかというと、何かの奴隷にならないようにっていう、
こういうメッセージかなと自分は受け取りました。
ホシノ
なるほど。
アワノ
暇を持とう、そして生活を味わって、
何かに振り回されないようにしましょうねっていう。
その メッセージだけをみると、割と普通なのかもしれませんが、
そのことを400ページにわたって7つの章で、
400ページで 7章構成。
人類学、歴史学、経済学、社会学、哲学、生物学、生理学、
心理学、倫理学みたいなところから考察していくっていう。
ホシノ
非常に面白そうですね。
アワノ
そうなんです、仰るように知的好奇心をくすぐるというか、
ほんとそういった本なんですけど、
読んでてすごく、こう興奮するんですよ。
興奮する、エキサイティングな書籍ですね、とっても。
3.得た「暇」を、消費で搾取される労働者はある種の「奴隷」
アワノ
暇と退屈ってなんだろうって話なんですけど、
なぜこの著者がこういうテーマを設定されたかの背景、 課題感ですね。
國分功一郎さんが持つ、
今の世の中に関する課題感をちょっとご説明させてもらうと、
ホシノ
はい。
アワノ
まず現代では、我々労働者なんですけど、
暇を持つようになったと。
資本主義がどんどん発展していって、
労働者の権利っていうのもしっかりこう守られて、
強化されてきて。
わかりやすいと言うと、
残業時間がどうだとかよく言われるじゃないですか?
ワーク・ライフ・バランスというか、
何年か前からよく言われだしたと思います。
とにかく、労働者が暇を持つようになったんですよ、時間的な。
ただ、その暇は誰かに搾取されて消費されてると。
例えば、レジャー。
レジャーというと、週末は旅行に行かなきゃいけないとか、
どこどこに子どもを連れて遊びに行かなきゃいけないとか、
ショッピングしなきゃいけない。
何か、「暇を有意義に過ごすように頑張らなきゃいけない」とか。
そういうことだったり、何かMBAのような勉強や資格を取らなきゃ、
役に立つ事しなきゃ、みたいな。
ホシノ
うん、うんうん。
アワノ
なぜ暇が搾取されるかというと、
我々はもともと、暇がない、
要するに、時間がないことでできなかったこととか、
願いつつも叶わなかった、やりたかったこと、
「本当に好きなことがわからない」から っていう話なんですね。
よくわからず、とりあえず時間だけポンって与えられましたと。
で、その与えられた時間に、
例えば資本家、企業側とかですね、
何かものを作るサービス提供者とか、
もしくはネット広告ですよね。
それらによってネット・スマホに
どんどん表示されて来るじゃないですか、
新しい情報がどんどん。1つ検索入れると。
それによって、空いた隙間に 気晴らしですよね、
消費としての気晴らしっていうのを、
どんどん提案されて、受け入れていかざるを得ない状態になる。
ホシノ
ね、
アワノ
次々、新しいものを得たい、消費するという繰り返しになっちゃってる。
ホシノ
なんか、あれだね、パッケージ化された気晴らしみたいなものってことだね。
アワノ
そうですね、そうですね。
ホシノ
考えなくて、金払ったらそれを消費することができますよと。
うんうん。
で、体験自体も、今だとSNSかなんかでシェアされて、
そこの価値まで保証しますみたいな。
「インスタ映えの カフェですよ」みたいな話とか。
アワノ
そうですね、なるほどね。おっしゃるように。
余談ですが、インスタ映えってなんか最近もう古いらしいですね。
中高生から言わすと古いらしいですよね。
僕も聞いて、「え!?」って思ったんですけど。
インスタ映えって言ったら、
発信すると誰かがその インスタ映えするところに行って、
そこの体験とかものは本当に味わいたいんじゃなくて、
インスタ映えするために行くっていう感じですよね。
そうすると、みんながやりだして終わりがないんで、
繰り返しちゃうってことですね。それについて、
ホシノ
なるほどね。
アワノ
極端に言うと、テロとか過激派ってあるじゃないですかとか、
宗教、ギャンブルとか。
ホシノ
うん、
アワノ
だから、どこかに遊びに行って
インスタ映えするところに行くとかだったら、
まだ 害はないんですけど。
極端に何をすればいいかわかんない。
暇ができちゃったから、空虚になって、
過激な刺激を 求めたり、何かこう信じることで救われようとするのは
奴隷になるみたいなところがある。
ちょっと強い言葉なんですけど。
4.物語を求める私達(村上春樹さん曰く)
ホシノ
村上春樹がそのことを、
「物語を求める」って言ってましたよね。
アワノ
なるほど、物語を求める
ホシノ
そう、自分の中に物語がないから、
人に与えられた、信じやすい物語を勝手に信じてしまう、と。
村上春樹の「アンダーグラウンド」という本の中では、
サリン事件を扱っていて、で、その物語 を
悪い風に使う人たちについて、すごく深く考察をされていたと思う。
アワノ
なるほど。うん、まさにそれはそうですね。
アンダーグラウンドね。
ホシノ
アンダーグランドを転機に、
村上春樹の小説には、完全なる悪者ってのが出るようになったんだよね。
アワノ
というと?
ホシノ
そこに対しての警鐘を鳴らしていく必要がある、
ということを考えいるみたい。
アワノ
明確にってことですね。なるほど。
ホシノ
はい、すいません、余談でした。なるほどね。面白い。
アワノ
いやー、それ面白いですね。
でも、おっしゃる通りで、さすがホシノさん。
そうです、そういうことかなと。
「暇と退屈の倫理学」の著者、國分功一郎も、
そういう課題感を持っていてこの本を書かれたと思うんです。
それに対する処方箋というか、
結論は3つあるんですけども、
うん、 それは順を追って説明していきたいと思うんですが、
ここからがちょっと長いんですよね、本が。
先ほど申し上げたように、400ページ、7章あるので、
1章ずつ、ちょっとこんな感じですってまとめながらパっときたいと思います。
5.第一章 暇と退屈の原理論 暇に気づかないふりをするために熱中する
アワノ
1章が、「暇と退屈の原理論」ということで、
人類学から見ていくんですけども。
ここは簡単に言うと、
少なくとも欧米社会においては、
1600年代、17世紀から退屈というのは
社会を覆う、考えるべき重要テーマの1つだった
ということを書かれてます。
ホシノ
はい。
アワノ
ブレーズ・パスカルというフランスの哲学者ですかね。
彼らが取り上げられてるんですけど、
人間というのは1人でじっとしていられないから不幸なんです、と。
その時代の、ウサギ狩りの話を例に出されていて、
ウサギ狩りを行く人は別にウサギを狩りたいんじゃなくて、
「何か熱中するものが欲しい」からウサギ狩りをしてるだけなんだと。
ホシノ
うん、
アワノ
だから、自分を騙すために熱中してる、
気づかないふりをしているっていうのが、
その17世紀の欧米社会でもあったと。
ホシノ
うん。
アワノ
その時から、暇と退屈というのは、
生きる人たちがどうしたらこう解決できることなのか?
という風な ことを考えていたという、
まずはそんな話です。第1章は。
ホシノ
なるほどね。ちなみに、産業革命っていつだっけ?
アワノ
産業革命、イギリス。いつでしたっけ?産業革命。
ホシノ
その前後ってことになるのかな。
アワノ
産業革命は18世紀半ばが19世紀だから、
ちょっと後ですかね。今の話に関してでいうと。
ホシノ
じゃ、それとはまた別なんだね、
アワノ
おそらく
ホシノ
で、この1600年代、16世紀っていうのは
何があった時だったかな?と思って。
アワノ
何があったんすかね。16世紀。
ホシノ
うん、暇が生まれる時代。
なんかよく言われるのは、
産業革命で暇が生まれるとかって聞いたことがあって。
アワノ
あー
ホシノ
あとはあれかな。
貴族の生活みたいなものが、ある程度のシステム化完成したのかな?
アワノ
それはちょっとあるかもしれないですね。
ホシノ
うん、
なるほど。ありがとうございます、はい。
日本でも平安時代なんかにこう、
文化がガーンと発達したみたいな話もあるじゃない?
アワノ
まさにそうですね。
暇があるから、それを潰すために文化が、芸術が、スポーツが、
みたいな、広がっていくって感じがする。
ホシノ
あれ?ルネッサンスは もっと前か。
だいぶ前なんですかね?
アワノ
ルネッサンスは14世紀ですかね?
ホシノ
で、ルネッサンスの起こりも、確かその貴族文化だったと思うから。
うんうん。多分それで覚えたら流れが作れそうだな。
アワノ
はい。ありがとうございます。
もうちょっと我々、
そこ整理し直す必要がありますね。
ホシノ
歴史の流れで追いたくなってしまった。
アワノ
素晴らしい。うん。
ホシノ
日本史覚えるみたいな感じ。
アワノ
新しいですね。なんかそれもすごく大事みたいですね。
この本的に。やっぱりそういう観点が。
ホシノ
はい、
アワノ
なるほど。
はい、ちょっと僕はこの本の内容をまとめることで精一杯です笑
ホシノ
ありがとうございます。よろしくお願いします。
6.第二章 暇と退屈の系譜学 暇と退屈に向き合う必要性が生じた定住生活
アワノ
はい。で、二章目が「暇と退屈の系譜学」ということで、
これは歴史学的な観点。
ここは日本の西田正規さんという、
京都大学などの大学で教授をされた方の
「 定住革命」という論を用いて説明されていて。
これは何かというと、
人は約10万年前に、それまでの狩猟しながらの遊動生活、
つまり動きながらの 生活から、定住に変わりましたと。
まさに新しい生活様式ですね。
今(2021年)よく政府が言う新しい生活様式に移ることによって、
この退屈と不可分になってしまったと。
これは要するに、遊動生活、その狩猟生活って、
どんどんいろんな新しい所に行くので、刺激がすごくある。
変化対応とか。
そうすると、動物としての本能・能力をフルに活用する。
引っ越しとか転勤、転職をこう、常にしてるような感じですよね。
もう飽きる暇がないっていう、そんな感じですね、うん。
それが定住生活になることによって、
逃れられないコミュニティができて、
所有という概念が出て、経済格差が出て。
でも、ずっと同じ場所にいるので、
動物としての本能・能力があり余っちゃう。
それで、さっきおっしゃったように、
文化とか芸術、法なんかをこう発展させていった。
まとめると、「暇と退屈に向き合う必要性」
が生じましたよっていうのが第二章。
ホシノ
なるほど、
アワノ
定住、
ホシノ
定住ね。
アワノ
これはもう、ここは変えることはできないですよね。
今からいきなり色々移り住む生活に
人類全体が変わることってなかなか難しいと思うので、
ホシノ
時間はかかるでしょうね、
アワノ
一部の人はね、
例えばホリエモンとか多動力とかって言ってますけど、
これを個人的にやってるんでしょうね、多分。
人間としての能力をフルに活用するっていう、
動物的なね、使い方というか、
ホシノ
一部ね、他拠点生活とかね、2拠点生活みたいな人もいるし。
そこら辺は一部出てきてんだろうなと。
あと、ワーケーションなんかもそうだよね、きっと。
アワノ
そうですね、そうですね。
ホシノ
ただ、とはいえ、
定住のために家を買うっていう文化はまだまだ廃れなさそうな気がしますね。
アワノ
そうですね。 うん。
なかなか、そんな10年、20年とかじゃ変わらないですね、この辺り。
國分功一郎さんは、
定住するという前提で今後を考えていきましょうっていう、
そんな話です。
ホシノ
うん。
7.第三章 暇と退屈の経済史 時間の搾取、消費の搾取
アワノ
第三章が経済学ですね。
フォーディズムとかポストフォーディズムという、
社会学というか、経済学の考え方が出てきます。
フォーディズムの時代とは、
アメリカ自動車メーカー「フォード」ですね、
資本家によって労働者の余暇も管理されてたっていうことなんですよ。
要するに、いかに同じ型のもの(T型フォード)を
高品質にたくさん作って売るかって、高度経済成長の時代なので、
ホシノ
うん、
アワノ
なので、労働者は余暇、休みの日も
(自動車づくりの)生産性を上げるために、
疲れすぎないように余暇を過ごすべく、管理されたらしんですよ。
僕自身も、同じようなことが過去にあったかなって、
そう思います。
労働者って、余暇というのを、
どううまく過ごしたらいいのかわからないので、
管理されても、別にそんなに不満には思わないし。
過ごし方がわからないからこそ、
そこでレジャー産業というものが現れて、
余暇をレジャー産業によって消費されるように仕向けられてきましたよ、
といのが、まず1つ目です。
ホシノ
うん、うん、うん、うん。
アワノ
そのフォーディズムというのも終わってるので、
ポストフォーディズム、その後ですよね。
今なんかだと、分かりやすくいうと、
iPhoneとかスマホって、1年ごとや半年ごとに新しいモデルが出てきますと、
ホシノ
うん。
アワノ
モデルチェンジが繰り返されて、
消費者は、我々はそれを買います。
でも、別に我々は、
その新しいiPhoneを手に入れようとしてるんじゃなくて、
モデルチェンジした新しいスマホを持ってる自分、
最新のiPhoneを持ってる自分というのを求めている。
でも、その状態は、完全に消費者が踊らされてるので、
新しいものを求めざるを得ないと。
ホシノ
うん、
アワノ
これって結局、その労働というものが、
それ(iPhoneのモデルチェンジなど)に合わせて、
我々は働かなきゃいけない。
(メーカー側も)新しいモデルに合わせて作らなきゃいけないとか、
会社の製造の体制から、デザインから、広告でも、
それに合わせて我々動かなきゃいけないってことで、
労働のあり方が、消費とか生産のあり方に規定されてしまっている。
そんな内容が本書で展開されてます。
だから、以前は資本家に時間が搾取されてました。
今は消費社会に搾取されてますよと。
そんな話ですかね。
ホシノ
これもあれだね、強いメッセージと流れですね。
アワノ
そうですね、そうですね。
ホシノ
感覚としては、
要はその情報の受け手側で、要は一般市民側が、
もっといろんなものを取り戻そうよっていう流れになるのかな、これは。
アワノ
そうですね。そうですね。
我々というから、自分なんかもそうですけど、消費者を。
ホシノ
うん。
アワノ
操られてると。慣らされ、操られている。
ホシノ
わかります、わかります。
アワノ
第三章はこんな感じですかね。
ホシノ
なるほどなるほど。
TWICEの新曲が出たら聞きに行っちゃいますもんね。
アワノ
まあまあ、それはね、
そこを楽しむってことであれば全然いいと思うんですけど、
「TWICEを味わって」いたらいいと思うんですよね。
新しい曲が出たから、それを誰よりも早く知っているから自慢しなきゃ、
誰かに言わなきゃとか、でなかれば。
ホシノ
はい、失礼しました。
アワノ
いえいえ、
そのものを味わっていれいいみたいですね。はい。
8.第四章 暇と退屈の疎外論 浪費と消費の違い
アワノ
では、第4章は暇と退屈の阻害論という、
ちょっと難しい話かなと思います。
社会学と経済学から消費社会を改めて見ていくと、
僕は2つ、面白い概念が本書に入っていると思うんです。
まず、浪費と消費は違いますよ、と。
ホシノ
はい。
アワノ
1つ目は、フランスの 社会学者になるのかな。
ボードリヤールという方。
消費について、
面白い本(消費社会の神話と構造)を書かれてるんですけども。
この方の概念を使って、
「浪費はいいことですよ」って言うんですよ。
消費はダメだけど、浪費はいい。
なぜかというと、浪費というのは物を受け取る贅沢があるからだと。
ホシノ
うんうん。
アワノ
たとえば、お腹いっぱいご飯を食べたら、
もうそれ以上食べられない。(十二分に受け取っている)
食べられないっていうのは、浪費の1つの例としてあげられていて。
一方、消費というのは、
「記号」とか「観念」を消費していくことで、
ミシュランの星が何個のお店に行った、
それをアピールするために 食事に行くとなる。
そこ(浪費と消費は)は違いますよと。浪費は大事ですよという話です。
ホシノ
うんうん
アワノ
労働の文脈で言うと、1日15時間労働をする。
さっきね、収録が始まる前に話題になった
「忙しい自分をアピールする」(=忙しさという価値を消費する)という、
そんな感じですかね、労働の消費。
ホシノ
はいはいはいはい。そっか、そこも含まれるんですね。
アワノ
そうみたいですね。
平日、もしくは土日でも、
「自分はこうリア充で、なんか 充実してるぜ。」
みたいなことをSNSに投稿する。
「余暇を僕は満喫してるんだぜ」ってアピールしちゃう。
で、「いいね」もらいたがるみたいなのは、
これも「労働の消費」が拡張されたものらしいですね。例えばですが。
ホシノ
なるほどね。そうかもしれない。
アワノ
だから浪費という言葉は、1つの大事なテーマ。
テーマというか、大事なキーワード。
ホシノ
あ、ちょっともう1回。
そこ、消費と浪費の違いってなんでしたっけ?
アワノ
浪費は、物を受け取る。
簡単にいうと、すごくそのもの自体を味わうっていうことではないかと。
TWICEの歌だったら、背景からしっかり学ん知って、
各メンバーの経歴とか、歌にかける想いみたいなものも受け取って、
TWICEの歌自体、踊りそのものなどを楽しむ、という感じなんですかね。
ホシノ
なるほどね。
アワノ
で、消費っていうのは、
そのTWICEの新曲を知ってるぜっていう、(自慢とか)それだけ。
ホシノ
なんか実態として何かを残してったりすることが
あんまりなさそうなのが消費なんだね。
アワノ
そうですね。
ホシノ
うん。
アワノ
浪費には終わりがある。
消費には終わりがないっていう、そんな書き方をされてます。
ホシノ
自分の欲望から起きるのが浪費になるってことなのかな。
だから終わりがあるのかな。
自分の外、誰かが作ってしまった欲望に乗っかっちゃうのが消費で、
そっちは延々作られちゃうから終わりがないみたいなイメージかな。
アワノ
それもあると思います。
ごめんなさい、僕も勉強不足で、はっきりお伝えできず。
ホシノ
いえいえ、もうこういうのはそれぞれ解釈してって楽しめばいいんですよ。
うん、弱い文脈っすよ。
アワノ
例えば別の例で分かりやすく言うと、
高級外車を買う方っているじゃないですか。
フェラーリとか、マセラティとか、
何千万円、3000~5000万円とかで。
それ自体をほんとに楽しんで乗ってるんだったらいいと思うんですけど。
なんだかこう、人に見せるために買うとか、
金持ちだぜってアピールするために買うのが消費。
ホシノ
なるほどね。いや、ここら辺も難しいね。
アワノ
難しいですね。
ホシノ
うん。
服なんて絶対、じゃあ消費だよね。
アワノ
多くはそうだと思います。
ホシノ
あ、でもブランドが、ブランドを見せたいんだったら浪費になるのかな?
形とかが好きなんだったら、 それは浪費になるっていうことになるのかな?
境目は、明確にないのかもしんないけど。
アワノ
かもしれないですね。
ホシノ
その人のスタンスにもよるのかもしんないね。なるほど。
アワノ
1つのこう考え方ですかね。
ホシノ
はい、ありがとうございます。
アワノ
もう1個、マルクスとかジャンジャック・ルソーとか
1970年代の論を持ってきて、阻害論というのも語られてるんですけど。
本来性なき阻害論。
これはちょっと説明するのが難しいんで、言葉だけ。
本来性なき阻害論とは、
あるべき理想を掲げるのやめましょうという、
そういうことかなと僕は受け取りました。
この2つの概念がこの第4章には語られていました。
Podcast「アワノトモキの読書の時間」 Work Teller
ep03-1/「暇と退屈の倫理学」(國分功一郎さん)
は、以上でおしまいです。
ありがとうございました。