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【短編】自☆殺☆部!

【0】
飛び散った肉片がホームを汚し、乱れたダイヤのように僕の精神も不安定になっていた

「それで、入ってくれるの?」

そんな中、彼女は笑みを崩さず僕に問いかける。その小さな声は、周囲を埋め尽くすサイレンの音にかき消されてもおかしくないのに、それでも確実に僕の鼓膜へ届いた

「自殺部」

聞こえなければよかったのに

心からそう思った――

【1】
「人生なんて死ぬまでの暇つぶしだ」

すでに授業が始まっているにも関わらず、僕は屋上で寝そべりながら空へ向かって呟く

高校入学から3ヵ月、華やかな学園生活なんて夢物語だと気付くには十分すぎる時間だった

僕の中では、すべてにおける限界みたいなものが見えていて、活力なんてのは蓋をしたアルコールランプのように鎮火済みである

くだらない

そう、人生なんてのは死ぬまでの……

『ガチャ…… ガチャ……』

暇つぶ……

『ガチャ……! ガチャ……!』

「おい! こっちが人生を達観視することで精神の均衡を保ってるときにガチャガチャなにやって……」

思わず起き上がって音のする方を見ると、そこには僕の視線と同じ高さにいる女性がいた

屋上で唯一、ハシゴを使わないと上がれない場所にいる僕と同じ高さなんてあり得ない。そう、自殺防止のために囲われたフェンスをよじ登っていなければ

「ん?」

彼女は少し首を傾げながら、メガネ越しの瞳でこちらを見ている

スカートから覗く健康的な生足など気にせず、ウマの尾のように黒のポニーテールを揺らして登る作業を再開した

「おい……おいおいおい! 死ぬ気か!」

そう言いながらハシゴも使わずにジャンプして降りると、一目散に彼女の元へ駆け寄る

「早く降り……」

そう言い切る前に、彼女はフェンスから飛び降りた

僕の方に――

「ぐふぇ!!!」

すごい衝撃が走った

前方には女子高生特有の柔らかさといい匂いが、後方にはアスファルト特有の硬さと熱さが……まさに天国と地獄を体現している

いや、地獄が勝ってきた。骨が痛い

「あんた、何がしたいんだ……」

そう問いかけると、彼女は密着していたことを恥じることなく立ち上がってこう言った

「下見よ。自殺できるかのね」

……は?

言ってる意味がよく分からない。いや、もちろん自殺という行為が何を指しているのかは知っていて…

誰が聞いてるわけでもないのに、頭の中で言い訳が始まる

達観していた人生を、いざ本当に投げ出そうとしている人間が目の前に現れて、僕は情けなくも狼狽えていた

「死のうとしていたのか……?」

怖気づいた頭で何とか言葉をひねり出すと、対照的に彼女は満面の笑みを浮かべる

「ははは! 言ったじゃん! 下見だって。部活の一環として確認してただけだよ」

「部活の一環?」

自殺できる場所の下見と、部活の一環という言葉があまりにも結び付かず、思わず疑問がそのまま口に出ていた

そんな僕を見て、彼女は『よくぞ聞いてくれました!』と言わんばかりに目を輝かせる。なんだか罠にハマった気分だ

「その前に自己紹介! 私の名前は相馬 和香(あいま わか)、3年生で自殺部の部長をしてるの!」

自殺とは無縁の笑みを浮かべ、彼女は右手を差し出した

「よろしくね! 希望溢れる1年生くん!」

【2】

「自殺……部?」

そんなネット検索したらお悩み相談所へ案内されそうな部活を僕は知らない

一応、学内の部活動はすべて確認したはずだが、そんな名前の部活は存在しなかった(そもそも学校が許すはずない)

「そうだよ! って言っても、そう呼んでるのは部員だけなんだけどね。部室もないし」

彼女はそう答えると、垂れるポニーテールを指に絡めながら『およよ……』と可愛らしい声を漏らした

何というか、自殺とは正反対に属する人だよな……もしかすると、僕は何か勘違いをしているのかもしれない

「そうなんですね。もしかして『心の電話相談』とか、そっち方面に近い活動だったりするんですか? 下見って言うのも、フェンスの強度というか自殺防止強化の一環……的な?」

そう問いかけると彼女はにっこりを笑いながら僕の肩を叩いてきた

「おお! 興味津々のようだね! 『百聞は一見に如かず』なんて言葉もあるし、部の紹介もかねていっちょ行きますか!」

え? 何処に?

そう訊こうとしたその時、屋上の扉が開いて1人の女性が出てきた

「さぁ、出発進行!」

そう言うと、相馬先輩は学校外の方向を指さした

【3】
「いやー! ドキドキしたね! 裏門とはいえ授業中に抜け出すのは」

相変わらずヘラヘラ笑う相馬先輩の後を、僕たちサボりメンバー(仮)はついて行く

いや、断ろうとは思ったんですよ? でも、急に出てきた女の人に……ほら? 腕組まれちゃってるんです。逃げられないじゃないですか

逃げたくないじゃないですか

初夏の風が鬱陶しく肌を撫でる今、僕の気持ちだけは春に戻っていた

「ねぇねぇ。女の子に腕を組まれて何か言うことないの~?」

そんなことを思っていると、ついに話しかけられてしまう。ドギマギしながら、僕は声のする方を向いた

肩に触れるぐらいのウェーブかかった金髪、赤く染まるリップはネイルとお揃いで、耳には大きめのピアスが開いていた。全体的に派手というか……なんとなく、ギャルなんだろうなって感じる

衣替えが始まっているのに、それでも長袖+カーディガンを腰に巻くあたり『ファッションは暑さとの勝負!』って言葉があるのも頷けた

「え……あ、あぁ! すみません! なんか得してます!」

「得してますってw きみ、面白いね!」

こんな返しでも笑ってくれるギャル、俗にいう『オタクに優しいギャル』ってやつなのか? まさに都市伝説ギャル……うん、ギャルがゲシュタルト崩壊しそうだ

ふと、汗ばんだ手を風が撫でる。ギャルの温もりが消えたのだ

「でも、その特はもう終わり。人生なんていい事ばかりじゃないから。それに、ここまで来れば逃げようなんて思わないでしょ?」

瞳の中に作為的なものを感じた。聞きたくなかったが、さすがに答え合わせをしないといけないだろう

「やっぱり、ギャル子さんも自殺部のメンバーなんですよね?」

仕込みだと気付けば緊張も薄れ、自然に(多分)話すことができた

「ギャル子さんってw そう言えば自己紹介がまだだったね。神座氏 京子(かんざし きょうこ)、2年生だから君の先輩だよ! そしてご名答! 今日は私がレクチャーしてあげるから、その勇士を目に焼きつけたまえ!」

そう言いながら人差し指を僕の鼻に押し付けて、ピンッと弾いてくる。僕は照れ臭くなり、『うっす……』と返事しながら速足で前へ進んだ

まぁそうだと思ってましたけどね。むしろ相馬先輩の関係者じゃなかったら怖かったぐらいだし

それと同時に確信する。自殺部は名前のような怖ろしい活動を目的にしていないと(神座氏先輩のようなギャルが自殺すると思えないし……)

「おーおー! 京子とも打ち解けたようで関心関心。その勢いで入部しちゃいなよ~」

先頭にいた相馬先輩と、いつの間にか並んでいたらしい。茶化すようにわき腹を肘でぐいぐい押してくる

なんだが、悪い気はしなかった

自殺部に入れば、こんな日常が待っているのかもしれない。屋上で不貞腐れて『人生なんて死ぬまでの暇つぶし』なんて思わずに済むのかもしれない

そうだ。勝手に諦めて、自分から殻にこもっていたのは僕じゃないか。だったら、だったら……

「そ、そうですね……前向きに検討します」

僕は頬を赤らめながら、そう答えた

「前向きいいね! まさにその言葉が相応しい場所に向かってるところだよ! ほら!」

返答を聞いて、相馬先輩の歩幅は大きくなった(喜んでると思っていいのか?) 置いていかれないように僕と神座氏先輩も後につづく

『ガタンゴトン……ガタンゴトン……』

まるで僕らを歓迎するかのように、電車の音が鳴り響いた

【4】
「ほら! 急いで急いで!」

切符を購入して(僕のぶんは買ってもらえた)階段を勢いよく駆け降りる

次にくる電車は特急らしく、ホームにはスーツ姿の男性やカップルなど、多種多様な人々が到着を待っていた

「間に合ったね! 次は各駅だから微妙なんだよ」

「あぁ、目的地はまだ先なんですね」

どうやら、ここからは電車移動のようだ

ん? でも切符は隣駅までの料金しか記載されていない?

「いや、ここで合ってるよ。さっそく部活動紹介を始めようか! ほらほら京子~」

そう言いながら神座氏先輩の背中をぐいぐいと押す

緊張しているのか身体が強張っているように見えた。しかし、それに反して晴れやかな表情をしている

彼女は一歩踏み出し、僕の方を向いた

「ねぇ、私ってギャルっぽいかな?」

え?

よく分からない角度の質問が飛んできたので、つい呆気に取られてしまう

『間もなく電車がまいります。黄色い線の内側までお下がりください』

「言ったよね? ギャル子さんって」

「あ、はい……言いました」

何が始まってるんだ? 紹介とやらはどうなっている?

「なんで?」

「いや、その……見た目がなんとなく……」

もしかして皮肉っぽくて怒っているのか?

あの時は笑っていたのに、今更なんで……

『ブォーーーーー!!!』

電車が勢いよくホームを目指して走ってくる。それと連動するように、彼女も線路の方へ走り出した

「神座氏先ぱ……!」

駆け寄ろうとするも、咄嗟のことで対応が遅れる。周りの人たちも気付いたのかホームが騒然とし始めた

そんな騒音の中、なぜかハッキリとその言葉は聞こえた

「見た目で判断すんな。犯罪者」

『ギュリン! ギュリン! ブォーーー!!!』

『ぐちゃぐちゃ……にちゅ……キィーーー!!!』

生々しい音と、ブレーキ特有の甲高い音が混ざり合いながら鼓膜を壊していく

飛び散った血液が頬を伝った。脂のような塊も所々に付着して、重力に逆らう力を失ったそれらはボトボトと床へ落ちていく

死ん……だ……? 人が?

これフィクションじゃないよな? ドッキリ? え?

「神座氏先輩? 嘘ですよね? ねぇ、かんざ……うえぇ!!!」

胃酸が逆流して口からゲロが吐き出る。鼻から抜ける酸っぱい臭いと床に散らばった肉片がゲロと混ざりあっているのを見て、更に吐いてしまう

僕はしゃがみながら呼吸をすることに専念した。上手く呼吸ができないのとゲロが相まってかなり苦しい。負の連鎖だ

「京子はね。中学生のころからファッションに興味があったんだって。それはモテたらしいよ」

そんな僕を相馬先輩は無視して、人間だったものを拾い上げながら淡々と話し始める

「夏休みだったかな? 貯めたお金で渋谷に行って、ずっと欲しがってた服を買ったんだ。本人にそんな気はなかったらしいけど、露出が多い服でね。待ちきれず公衆トイレで着替えた後にレイプされたんだ」

「レイ……プ?」

意識が朦朧としているせいか、印象的な言葉を繰り返し声に出していた

そんな過去があったなんて、確かに最悪だったと思う

でも、それは今しないといけない話なのか?

「日本でも治安が悪い場所は悪いよ。私たちは幸せを身近に感じていただけ……そして彼女は心に深い傷を負った。この時期に長袖を着ているのだってリストカットが原因なんだ」

ただ黙るしかない

何も知らずにファッションだから着ていると思っていた僕にとって、バツの悪い話だったからだ

「すぐに犯人は捕まった。彼らの言い分は『ビッチみたいな恰好をしていたから誘っていると思った』だったらしい。そいつらが人として終わっているとはいえ、彼女はそれ以来"""見た目で判断されること"""を恐れ始めた」

『犯罪者』

彼女の言葉が脳裏に木霊する。まるで呪いのように纏わりついて離れない

だから……だから死んだのか?

僕が彼女を見た目で判断したから? 傷つけたから?

「まぁ、それとこれとは別だと思うけどね。部活動に私情を挟むべきではないかな」

『ほら』と言いながら、相馬先輩は僕の肩を思いっきり引っ張り上げた

「ノイズはあったけど、これが自殺部の活動だよ。どうかな? 入部届なんて大層なものはないから、今日からでも入れるよ!」

「なに……言ってるんですか?」

彼女も返り血を浴びており、その制服は真っ赤に染まっていた。きっと僕も同じだろう。彼女の死を羽織りながら、彼女の死と活動結果の関係性が紐解かれていく

「自殺を防止することが目的じゃない。私たちは自殺をすることで"幸せを生むこと"を目的としているんだ」

幸せ? これが? 幸せって……なんだ?

僕の知っている『幸せ』と同じ意味で使っているのか? 

だとしたら、今の状況は真逆だ

「人が死んでるんですよ!? 幸せなわけないじゃないですか!?」

「そう? あれ見てみなよ?」

飄々としながら彼女はホームにいる男性を指さす。スーツ姿の彼は謝りながら電話をしていた

「申し訳ございません! 人身事故が起こりまして……はい! 申し訳ございません! 分かりました!」

彼は電話を切ると、『ふぅ』と息を吐いて自動販売機の方へ向かった。そのままコーヒーを開けると、背伸びしながらつぶやく

「午前休つかえたし、ゆっくりするか。面倒だったんだよな今日」

今度は別の人たちを指さす。そこには学生の集団がアプリを開いて線路を撮影していた

「ヤバくない!? 絶対バズるって!」「まぁ俺はグロ耐性あるけどさ~普通のやつは吐いちゃうだろうなw」「つか遅刻確だったしラッキーじゃね?」「おいw お前クソだなw」

他にも『仕事用の資料ができていなかったが、今回の事故を言い訳にしている人』や『今日は出勤が難しそうなのでリモートに切り替えますと電話している人』を順に指出していく

「彼らは確実に"幸せ"だよね? コーヒー片手にのんびりする時間も、承認欲求を満たすためのネタも、遅刻の言い訳も、他すべても京子の死が生んだんだ」

価値観が違いすぎる

聞いたうえで理解できないし、理解をしたくない。そんなことのために神座氏先輩は死んだのか? こんなことのために、人は死ねるのか?

「京子が"幸せを生むこと"に対して、そんなことを思ったのか知らないし、単純に死にたかっただけなのかもしれない。でも、理由なんてどうでもいいんだよ。目の前の光景こそが答えなんだから」

『ウゥーーー!!! ウゥーーー!!!』

遠くから救急車のサイレンが聞こえる。駅員が呼んだのだろうけど、きっと意味はないだろう

神座氏京子は、確実に死んだ

「相馬先輩……いや、自殺部の活動は間違ってます!」

反論したところで死んだ人間は帰ってこない

ただ、それでも無性に腹が立って仕方がなかった。反論せざるを得なかった

「間違ってる? なんで?」

「だってそうでしょ!? 少なくとも僕は今、かなり不快です! "不幸"になってる! 他の人だって気分がいいわけない! それに、電車が止まって困る人がたくさんいるはずです!」

意味不明な土俵で話をしている自覚はある。でも止まれなかった

「飛び降り自殺が行われた結果、たくさんの"不幸"が生まれたんです! 矛盾している! 自殺部なんて即刻なくすべ……」

「なんかさ、ズレてない?」

彼女は気まずそうに僕を制止する。まるで聞き分けのない子供をあやす大人のように

ズレてる……? その言葉は、あなたが1番使っちゃいけないはずなのに

「だって、自殺部の活動目的は『幸せを生むこと』なんだよ? 誰かが不幸になったとか関係なくない? 幸せと不幸の比率とか、元からあった幸せが不幸になるとか、そんなのはどうでもいいんだよ。自殺した結果で生まれた幸せ"のみ"に意味があるんだから」

「それは……」

仮にそうだとして、その歪な幸せを生んだとして……

それはいったい……

「なんの意味が……あるんですか?」

「そんなの、人それぞれ受け取り方が違うから知らないよ」

僕は察した。無意味だと

常識の通じない人間の、常識の通じない行動に巻き込まれたんだと

ちゃんと授業を受ければよかった。屋上なんて行かなければよかった。こんな場所についてこなければよかった

こんな先輩に、出会わなければよかった――

「それで、入ってくれるの? 自殺部」

彼女は笑いながら問いかける

僕は思わず泣きそうになった

そうか……この状況で、まだ自殺部に入部する可能性があると本気で思っているんだ

僕の答えは決まっている

「二度と僕の前に現れないでください」

倒れてしまいそうになりながらも、それでも必死に階段を駆け上がる

1秒でも早く、この場から去りたかった

「またね」

後ろからそう聞こえた気がした

【5】

僕は遅めの起床を果たすと窓を開けた。秋の訪れを感じる肌寒い風が部屋に入り込んできた

適当にパジャマを脱ぎ捨て、僕は出かける準備をする

あの日以来、僕は電車に乗れずにいた

電車だけじゃない。相馬和香に会いたくなくて学校も退学した。今は無理を言って通信制の高校に通っている

同時に精神科へ通院するようになり、投薬を続けながらリハビリを続けていた

あの出来事から2年が経とうとしている

「……よし」

僕はスニーカーの紐を結ぶと、震える手でドアを開いた


『ガタンゴトン……ガタンゴトン……』

あの音が聞こえてくる

リハビリの成果もあり、今ではホームまで足を運ぶことが出来るようになった

ここに来ると嫌でも思い出す

肉片になった人間の姿、赤く染まるホームの地面、その上に立っていたあの人を……

「はぁ……はぁ……」

胸が苦しくなり、呼吸が荒くなる

落ち着け……大丈夫だ。大丈夫

僕は深呼吸をする

生きていくと決めたんだ。死ぬまでの暇つぶしなんかじゃない。それこそ死ぬ気で生きていくと

「神座氏先輩のように、心に傷を負った人を救うんだ。自殺だって減らしてみせる……そのためには僕が一歩踏み出さないといけないんだ」

自分を鼓舞するようにつぶやいた

自殺防止事業に就職して少しでも償いたい。変な言い方になるが、今の僕にはそんな夢があった

『ブォーーー!!!』

電車が来る

目をそらしちゃダメだ

すべてを受け止めて前に進むんだ!

「立派なことだと思うよ。屋上で不貞腐れてた君が、今では夢を見つけた。これって"幸せ"だと私は思うんだよね」

そう思ったとき、背中から声がした

嘘だ――

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

僕が動けずにいると、声の主はゆっくりと姿を現す

相馬和香がそこにはいた

「久しぶりだね。私が卒業するまでに学校で1回も遭遇しないからさ、すごく心配しちゃった! ケガでもしてたの?」

彼女は何も変わっていなかった

見た目も、その異常性も

「なん……で……ここ……に?」

吐きそうになりながら声をひねり出す

震えは止まらず、目からは涙が溢れてきた。立ってることが出来ず、膝から崩れ落ちる

「いや~ 華の大学生だからね。講義よりこっちに時間使っちゃうんだよ」

『ぐちゃぐちゃ……にちゅ……キィーーー!!!』

僕の目の前に目玉が転がり込んできた。床は血まみれになり、飛び散った肉片が散乱する

顔を上げると、そこには笑顔の彼女がいた


「自殺サークルの活動に」

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