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『十二国記 図南の翼』がアツすぎて今年の冬消えたらしいぞ!!!!!!!!!

こんにちは!!!!
最近日本で春と秋を見失いがちな男こと遅筆マンです!!!!いや、みんなそうだろ!!!!

いまの地球、春と秋が品薄状態らしくて一説によると宇宙人が地球のイイ感じの季節買い占めて他の惑星に転売してるらしいですよ?(カスの陰謀論
ほんと、どこの銀河でも転売ヤーって酷いもんすわ笑

最近じゃすっかり冷え込んじゃって今日は鍋でも食べようかな……などと考えている諸兄にはまずそういう考えから改めてもらう

冬が寒いなら冬を消してしまえばいいんです

そう、最高にアツい小説を読むことによって!!!!

というわけで、本日は俺界隈から冬を消し飛ばしたアチアチ激アツ小説こと十二国記より「図南の翼」を紹介させてください
悪いなミツカン、今年の鍋シーズンはこいつで終わりだ

図南の翼 あらすじ

この国の王になるのは、あたし! 恭国は先王が斃(たお)れて27年、王不在のまま治安は乱れ、妖魔までも徘徊していた。首都連檣に住む少女珠晶は豪商の父のもと、なに不自由ない暮らしと教育を与えられ、闊達な娘に育つ。だが、混迷深まる国を憂えた珠晶はついに決断する。「大人が行かないのなら、あたしが蓬山を目指す」と──12歳の少女は、神獣麒麟によって、王として選ばれるのか。

公式あらすじより

まず図南の人気についてはXで頂いていた反応から、かなり初期から察していました

その人気ぶりはみなさまから頂いていたリプライ↓からも大いに感じていたし、読めば面白いのもわかってはいたんですが……

すんません!!俺はマジで読むのにあんま乗り気じゃなかった!!!
もうこれは本音でいくしかない!!!

だって、主役が珠晶なんでしょ〜〜〜〜?? 俺は気にくわねぇんだ、あの小娘がよ〜〜〜〜〜!!!

くらいのテンションでした

というのも、前回読んだ『風の万里 黎明の空』において登場したヤバ女にして俺が愛した女こと祥瓊
物語の途中、あまりにもヤバすぎる彼女を正論でボコした血と暴虐の女王(偏見)こそ、今巻の主人公・珠晶その人だったからです

自分が肩入れしていたキャラにキツく当たったキャラはちょっと……というテンションだったんで、珠晶に対しては警戒心バリバリで臨みました

当初の雑感は↑の通り

そりゃあ祥瓊はヤバいですよ。正論パンチされてもしょうがないですよ。だってSEEDで言ったらフレイ・アルスター(cv:桑島法子)だもの

自分の父親に家族を処刑された人に「法を破った方が悪いんじゃない!処刑されて当然よ!」みたいなこと言うし
珠晶にボロカスにされたあと普通に金目のもんパクって逃げるし

だからって、そんな祥瓊を正論でいじめていいなんてことには……まぁなるか。なるわ。ごめん祥瓊、どう考えてもお前のが悪い。反省せい!!!!
あと祥瓊はちゃんと盗んだもん返して珠晶に謝りに行こう?なっ?

(↓ちなみに万里で祥瓊を弁護してた前回記事がこちらです)

というわけで、みなさまから頂いた声と己のなかにある不安がひしめく微妙〜〜〜〜な気持ちで読み進めていたのですが……

小野不由美の手のひらで転がされがちな男こと俺

図南は基本的に主人公である珠晶、彼女に雇われた朱氏・頑丘、そして謎大き女性専用沼製造機イケメン・利広の三人を中心にしたロードムービー的な小説です

王を目指すために旅をする珠晶と頑丘の出会いから物語は始まるのですが、初読時の俺の心境の変遷は以下Xのポスト通りです

(珠晶と敵対し、頑丘を兄貴と慕っていた時代。大人の横入りに痺れ憧れ散らかす)

(珠晶の生い立ちを知り、彼女に失礼な態度をとった頑丘とは決別。珠晶の姐貴の舎弟として生きる決意をする)

(厳しい旅のなかで頑丘の生き様に痺れ、そういえば最初からこの人を兄貴と慕っていたっけと急に思い出す)

人格分裂しとんのか俺は?

こんなに変わり身早いの、松永弾正 or ぶりぶりざえもん or 俺の三択だろ
次点でスパイダーマン(サム・ライミ版)のヒロインだろ

あと全国の教育関係の皆様におかれましては利広だけは女子中学生に近づけないよう平にお願い致します
以降の人生で糸目キャラにしか恋できなくなってしまいます(別に利広は糸目キャラじゃないけど)

珠晶とかいう十二国記で最高のアチアチ激アツ最高女

王の不在が27年続き国土が荒れ、街では一般の人々が妖魔に襲われ地獄のような生活を送る一方、お金持ちの商家の娘である珠晶はそれなりに平穏に暮らしていた……というのが冒頭から語られる今巻の主人公・珠晶のバックボーンです

そんな生活のなかで珠晶が感じていたのは自分や自分の家族だけが弱者から搾取しながら安穏と生活することへの負い目、『自分だけが不当に救われている』という劣等感だったのではないでしょか

このへんめちゃめちゃ太宰の初期作品っぽい
太宰治も富豪の家に生まれ、家族よりも下男下女に慣れ親しみながらも、彼らより良い生活をする自分に対して負い目があったそうです

この感覚、現代社会を生きる我々にも非常に身近な感覚なんじゃないかな〜と個人的には思います

世界には貧しい国があってそこで飢えて死にかけてる子供がいるけど、じゃあその子達のために貯金全部募金するか?って言われたら俺はしてないですしガンプラとかも普通に買う

でも俺がガンプラ買わずに募金してたら世界にいる子供の命って結構助かったりもすんじゃね?生活のなかの少しの贅沢分だけ、俺はどこかにいるはずの子供を切り捨ててね?
じゃあ俺って相当悪いやつだな…なんてことをふと思う

珠晶が哀れなのは、そんな俺でさえ感じるうっすらとした罪悪感を常に目の前で見せられ続けていることです

学校に通えば貧乏な家の子の悲惨な現状を見る、家に帰れば親が養っている哀れな奴隷に囲まれて、いつも自分の罪が目の前にぶら下がっている

その罪とは『自分だけがなんの努力もせずに幸せでいる』という罪です
そんな幸運を当たり前に享受して、罪悪感なんて覚えない自分の父親を軽蔑してるけど、だからって珠晶の贅沢な暮らしが弱者からの搾取で成立しているという事実は動かない

それってやっぱり地獄です
しかも、本当に地獄を見ている人がバタバタ死んでいる以上、泣き言さえ許されない地獄

せめて官吏になって世の中のために働こうと勉強していたのも、珠晶なりに必死に考えた罪との向き合い方なのでしょう

思えば万里で祥瓊に対して『嫌い』と言ったのは、まさにこの罪を孕む幸福を祥瓊が当たり前のものとして享受していたからなのだと思います
或いは、違う生き方をしていたら自分もこんな風だったかもしれないという『もしもの自分』を祥瓊に見たからなのかもしれません

だから、『王になる』という珠晶の旅立ちは世界を救う為、国を救う為、みたいなカッコいいものじゃなく罪を償うため
『当たり前に生きている』という罪への贖罪の旅であるように俺には見えます

「君は王になったら、贅沢三昧できるね。たくさんの下官が君の足許に身体を投げ出して礼拝する」
「ばかみたい。あたし、いままでだってそりゃあ贅沢してきたわよ。立派な家だってあるし、利発で可愛いお嬢さんだって、大切に大切にされてきたんだから」
「なのに荒廃が許せないんだね。──なぜ?」 
珠晶は呆れた顔をした。
「そんなの、あたしばっかり大丈夫なんじゃ、寝覚めが悪いからに決まってるじゃない」

図南の翼 著・小野不由美 出版・新潮社 
p373珠晶の台詞より

荒廃が許せない、荒廃しているのになにもしない大人が許せない、そんな大人に守られているだけの自分も許せない
だから旅に出て王になる

そんな珠晶が俺にはひたすら眩しく見えます
自分は世界のどこかにいる子供のために貯金全部を募金箱に入れるような人間にはなれないからこそ、王になると決意して旅をする珠晶がひたすらカッコいい

だから、珠晶は不当に救われていることに負い目を感じてるけれどなにもできないでいることに悩む、現代の誰もにとってのヒーローなんだと思います

英雄気質な性格や行動力もありますが、この共感値の高さこそが珠晶の人気の秘訣なんじゃないかな?と個人的には思ってます
そりゃ人気出る。俺も超好き

もちろん、そんな罪の意識さえ言ってしまえば甘やかされて育ったが故の理想論みたいなもので、黄海という人には立ち入れない厳しい場所で珠晶はその覚悟を試されます

強者生存の黄海で生きる頑丘との対立は、すなわち他人を犠牲にすることを嫌う珠晶と、他人を犠牲にしなければ結局は生きられないという究極の事実との対決です

そして、そんな事実さえ飲み込んで旅を終わらせた珠晶は正しく王の資質を持つ者
天の意思に選ばれるのが王の資質なのではなく、王の資質を持つからこそ天の意思に選ばれた

十二国記は『王の資質とはなにか?』という繰り返される問いに、正義や仁道とはなにかというテーマを仮託している作品なのかもしれません

そして、珠晶が旅の末に王へと至るそのカタルシスたるや……

激アツ過ぎて冬、終了────

冬には鍋??あ、それもう古いっす
冬には図南の翼、これ一本っす

図南が熱すぎて実は北極とかもうなくなってるらしいですよ??

ここまでダイナミックな嘘になってきたらオタクの誇張も終わりだろ

十二国記民、新規の肉に味が落ちないよう品質管理してない?(ハイパーネタバレ注意)

それで、今巻を読んでてめちゃくちゃデカい声でたびっくりシーンについて触れたくて触れたくてしょうがないんですけど、一応ここから先はネタバレ注意です(1998年発売の小説のネタバレ注意ってなに?)

こ、更夜〜〜〜〜〜〜!!!!!
おっま!!!おい!!!元気だったんかておい!!!!
更夜やないかい!!!!おいて!!!元気だったんかて!!!!
てかお前一巻限りの使い捨てキャラじゃなかったんかい!!!!!!

いえね、東の海神大好き民のワタクシとしましては彼の再登場にびっくりするやら嬉しいやらで色んなエモーショナルが口からまろび出て普通に大声出た
深夜1時とかに。俺はいい加減にしろ。すみません……

↑こちらが更夜に触れている過去記事なんですけど、ふと思いました

そういや、これだけ十二国記民の皆さんからお声掛けしてもらってるのに1ミリもネタバレ食らってねえ……

いや、この時代にあえて率先してネタバレする人もいないけど、それでもなにかしらの形で匂わせするのが人間……てかオタクってもんじゃ??

女性V tuberのFFとかテイルズの実況とかの超重要なシーンで流れるコメントといえば

「来るぞ…」
「ざわ…」
「ここ伏線だから覚えといて」

ってこんな匂わせまみれ
やめろよ!!!!冷めるだろうが!!!!

けど俺はネタバレどころか匂わせすら一切されてない
いやそもそも1998年の小説のネタバレisなに??
そしてふと己の過去記事を読むと、

そして、いつかは更夜もこの国へ迎え入れられる日が来るのでしょうか
それとも、あれから500年近くが経過した現在では、更夜も彼らの輪の中に加わることができたでしょうか
続刊で更夜の活躍があるなら早く見たい

書いちゃってますわコレ
こーーーーれ書いちゃってます
1998年から十二国記既読勢は知ってんのに、更夜がまた出るって
そんなんも知らずに呑気に書いとりますわこいつ

更夜が登場した瞬間、ビビり散らかすと同時に出る「う〜〜〜〜〜〜わ既読勢に愉悦されてたアレ〜〜〜〜〜〜!!!!!」って俺の絶叫、録音して皆さんにお聞かせしたかった

「いや、言えよもう〜〜〜〜〜〜〜!!!なに黙ってんだよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」ってとこまでフル詠唱で叫んでた

いや言われても困るけど!!!!
けど98年から既読勢が知ってた事実を知らぬまま「更夜出るのかな、出てくれたらいいな……」みたいなこと2024年も暮れに言ってた俺の感想をどういう気持ちで観測してたの!?!?

十二国記既読勢、新規勢の味を落とさない為に匂わせもせずに品質管理してる説が俺の中で爆誕
俺には酪農家に育てられる牛の気持ちがわかる

SNSやっててここまで昔の小説に驚けるの、すごいことのように思います

本当に本当に平に感謝申し上げます
ありがとうございます
おかげで十二国記が最高楽しいです

まとめ:図南の翼が熱すぎて冬服捨てたから今日から半袖で過ごします

シリーズ全体で見ても万里と並んで図南はめちゃくちゃ人気そうだな〜と思ってたんですが、それも納得の傑作だったと思います

傑作書いたと思ったら間髪入れずに傑作を書くな不由美!!!!

万里と比べて話の筋がシンプルなのもあって、原稿の出来という面だけで見るとシリーズの中でも図南の出来はズバ抜けてるんじゃ……?というのが初読の感想でございます
(話の筋が複雑化すると執筆難度上がって出来に影響するので)

引き続き続刊を読んでいきたいんですが、正直もう一度くらい図南を再読したい気持ちもかなりある……

俺は珠晶と頑丘と利広の三人組が好き過ぎるから……
キャラバランス的に途中からハルヒ(珠晶)とキョン(頑丘)と利広(小泉)の三人旅にしか見えなくなったから……

続刊を読み進めるにしても、ここから短編を挟むべきか、魔性の子→黄昏の岸 と進むべきか非常〜〜〜〜〜に悩ましいところですが、今日のところはこのへんで!!!!

ではでは!

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