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「性暴力は許さない」ために、被害者を利用しないこと。

こんな夜更けにバナナかよ? いいえ、バナナフィッシュです。

昨日放送された第10話に関連する話題なのですけど、創作物における「性被害と、その報復」について思うところができたので、書いてみることにしました。

『BANANA FISH』に限った話ではなく、創作物全般での話ですので、バナナフィッシュ読んでない人も、安心して続きにおすすみくださいませ。

アニメで放送していない部分のネタバレもしてないから、原作未読の方も安心してね!


「性暴力はよくない」って姿勢があるだけでも、まずは素晴らしいです。

たとえば、レイプは作品を盛り上げる潤滑剤だと思われている節がある。という作品もあります。

セクハラは、それをするキャラクターへの親しみをアップさせる要素だと思われている節がある。という作品もあります。

そもそも、性暴力が「性暴力であると認識すらされていないのでは?」と思われる作品も少なくないです。

だからね、性暴力はよくない、という姿勢があるだけでも、まずはありがたいです。ありがたいって、つい思っちゃったりするんです。

あったりまえのことなのに「ありがたい」とか言っちゃうくらい、けっこうひどいものが多い。というのが現状です。


でも、被害者は「性暴力は許さない」を示すためにいるんじゃないよね。

※2次元、創作物の話です。

「妻がレイプされた。夫が怒り、加害者に復讐する。加害者は夫の手によってて手酷い報復を受けることになる」みたいな、こういう物語の危険性について、思うことがしばしばあります。

レイプされた妻本人が報復し、加害者をこころゆくまでとっちめる、みたいなことを、なぜさせてくれないのか。
これじゃあ「妻を傷付けられた夫と加害者の物語」であって、被害者は脇役。
被害者自身が主役にはなれないの? みたいな。

「妻を傷付けられた夫と加害者の物語」を維持するために、被害者が置いていかれる。
「性暴力を許さない」キャラクターのために、被害を受けたキャラクター自身は脇に置いておかれる。

「性暴力を許さない」を作品が言うために、被害者キャラクターが疎外されてしまっている、みたいのを見かけると、
とても苦しいんです。

そういうことって、現実でもけっこうある。

置いていかれるのは、被害者とか、マイノリティとか。
周縁化されがちな属性にある、とされている人たち。実際にされている人たち。

「本人を置き去りにしたまま周囲が話を進めていく」って、ちょっとひどいよねって思ったりします。


じゃあどうすればいいのか、というと

そんな答えはありません。
そりゃそうですよ。現実だってそうだし、表現・創作の世界でだって、「報復は被害者がする以外のものは認めない!」なんて窮屈は、こっちだって願い下げだし。

それがどういった性質のものになるのかなんて
「報復」するキャラクターの性格とか性質にもよるし、なによりこういうのって「構造」がものを言うから、
たとえば、報復したのが被害者の伴侶だったら全部だめ、というわけでも、もちろんないんです。

ただ、一瞬だけでいいから深呼吸して、見られたらいいなって思うのです。

「性暴力はよくない」が、ちゃんとメッセージされているかどうか。
「性暴力はよくない」のために、被害者や被害そのものが置き去りにされてはいないかどうか。

全ては、設定と構造の組み方次第。

……気にならない人は、気にならないと思う。
たとえば
「性暴力被害者」とひとことで言ってしまったとしても、
本人以外による報復に「スッキリしたー!」と思う人もいれば、「つらい……」と思う人もいる。

現実でやられたら「死ね!」て思うけど、創作物なら好物です。という人もいるでしょう。
それは人それぞれで、十人十色で、千差万別。
誰も間違ってないし、それでいいんです。

ただ、その構造と、それを自分はどう受け止め認識しているか、
そのことに対して自覚的でありたい・あってほしい、
とは思います。

そうでないと、
創作物を楽しむだけじゃなく、現実の被害や被害者に直面したとき、
誰かをひどく傷付けてしまうことにもなりかねない
から。
(自分が当事者であるか否かは、必ずしも関係ないよ!)


ここはひとつ、そんな感じでよろしくお願いします。


なおこの話題、きっかけは『BANANA FISH』でした。

もう私、どんだけ好きなんだよって話ですよね。
いま私の生活はBFを中心にまわっています。1週間って、木曜のど深夜に始まるんだよ。

『BANANA FISH』はね、すごいですよ。
性と性暴力、売春と搾取、などなど
あまたの作品で雑にごっちゃにされがちないろいろが、ちゃんと区別されています。
性的な暴力について、これでもかというくらい設定も状況も盛られているんだけど
雑にしない誠実さがある。

だから安心してみられるのです。

今回、この記事を書こうと思ったのは
主人公の仲間の妻に性暴力をはたらいたクソ野郎が、主人公に銃で頭吹っ飛ばされるシーンがありましてね。
その主人公の仲間、以前クソ野郎にたいして、「頭に鉛玉食らわしてやる」みたいなこと言ってるシーンがあるんですよ。
つまり
「主人公は、主人公の仲間(の妻)のために報復をしたんだ!」という喝采が
ファンの中で起きていた(る)んですね。一方で、それに対して疑問視する声もあったり。

私は上述してきたようなことを考えているので、主人公がもし「代理で報復」しているんだったら「うーーーん」ってなっちゃうんですけど、
今回のは「別に報復ではなく、主人公が*********っていう状態だってことを表現するのに、このクソ野郎の頭が吹っ飛ばされたわけだな。ざまぁみやがれだな〜」くらいに思っておりましたので
特にひっかかりはないです。

し、「報復をしたんだ!」という感想にも、水を差す気はさらさらないです。
だって実際、この作品のそのへんへの徹底ぶりって、かなりのものがあるんですよ。

暴力の性行為は、絶対に暴力としてしか描かれないし
主人公はわざわざ原作を大きく逸脱する形で、自身の「報復」をしっかりしている。(今回のは「自身の報復」ではないから、一緒にできるものではないと思ってもいますが)
それを視聴者に、ものすごくしっかり見せている。

性的な暴力が軽んじられる国で、
なぜか被害者が責められたり不遇を押し付けられたりする社会で、
こんなにもはっきりと・明確にNOをつきつけ、
加害キャラクターにしっかりと「落とし前」をつけさせてくれる作品って、そうそうない。

被害者が、その被害による「傷」とかをどうにかしようとしまいと、できようとできまいと関係なく、
というかそれはそれとして、
加害者にはふさわしい末路が用意されている。

作品として、それが明確に描かれている。

だから、私は「違う」と思ったけど、あれば本当に報復だったのかもしれないし、
報復だったのだとしても、
わざわざ、同じ近くの場所にいたはずの「被害者の夫」ではなく、一人分遠く離れたところにいるキャラクターにそれをさせたこと、
つまり、
『「おれの女に手ぇ出しやがって!」物語』になるのを意図的に避けたのは、
やっぱりすごいことだと思います。

……これね、アニメオリジナルのシーンなんですよ。
圧倒的に尺が足りない、と言う中で、あえて原作から増やして尺とって、こういうシーンを入れるという。

そのへんのバランスがまた、素晴らしいアニメなんです。

アマゾンプライムで、第1話からみられるよ!

原作からの20年来のファンなので、アニメ化めっちゃビビっていたのですが
毎週最高です。
この作品がアニメ化される時代に自分がいられたこと、視聴できていることを
とても嬉しく、しあわせなことだと思います。

さぁ、みんなも見ようぜ!


おわり。

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