あんかけ焼きそばと酢がらし

先日、家族と近くのスーパーの中にある中華料理店に行った。

中華料理店で普通に食事をする時は、僕はチャーハンかあんかけ焼きそばを注文することが多い。その日はあんかけ焼きそばを食べることにした。
いただきます、と普段通り酢をかけ、からしをかけ、食していると、弟がうんちくを披露するようにこう言った。「あんかけ焼きそばに酢がらしかけるのって長野県民だけらしいよ。」

食していたやきそばが美味かったので箸は止められなかったが、僕は心底驚いた。あんかけ焼きそばにからしと酢をかけない？？そんなの、僕から言わせれば納豆にたれとからしを入れないようなものだ。もっと言えばブロッコリーにドレッシングをかけないようなものだ。いやそれはさすがに言い過ぎか。でも、それほど酢がらしはあんかけ焼きそばを何百倍も美味くする常識だと言いたいのである。

思い返してみれば、神奈川県にある中華料理店に部員と行った時、あんかけ焼きそばに酢をかけている人がいた記憶がない。「長野県民だけ」かどうかは怪しいと思うが、酢がらしをかける地域が珍しいということは確かなのかもしれない。

実際どうなのだろうと思い、Googleの検索欄に「あんかけ焼きそば 酢がらし」と打って検索しようとした。すると、「酢がらし」の「酢」と打ち終わったところで「あんかけ焼きそば　酢　なぜ」という候補がでてきた。
「なぜ」？？何だそれは。美味いからに決まっているだろうが。君は納豆にたれもからしもかけないのか？ブロッコリーにドレッシングをかけないのか？そういうことだよ、分かったか。

一時は安倍政権に憤慨する共産党員みたいに怒り狂ったが、何とか落ち着いて「あんかけ焼きそば　酢がらし」と検索することに成功した。すると、検索結果のてっぺんにこんな題名の記事がヒットしていた。「からしに酢？！個性的な上田市のご当地グルメ「あんかけ焼きそば」」

なんだ、「？！」って。何がそんなに驚きなんだ、言ってみろ、おい。義務教育で習ったろ、あんかけ焼きそばに酢がらしかけることくらいは。謝れ、酢がらしに。謝れ。

僕は半ば呆れ、検索するのをやめた。政府のコロナ対策に怒る前に、地球温暖化を憂う前に、まずはこのあんかけ焼きそばに酢がらし使わない人多すぎ問題をどうにかしなくちゃいかんだろう。聞いたところによれば、日本は2013年以降から世界幸福度ランキングの順位が低下し続けているらしいではないか。そりゃそうだろう、不思議じゃないだろ。あんかけ焼きそばに酢がらしかけてないんだから。
気分が落ち込んでいる方は、どうか一度小さなお皿にからしと酢を入れてよくかきまぜて、あんかけ焼きそばにかけてみてください。ほんの一時だとしても、必ず焼きそばが幸せを与えてくれることを保証します。