【呻吟】ーーとまともな中学生
『明るい』と言うと、またニュアンスが違う気もする。
クラスメイトや私と関わる人全般には、私は夢を描ける子で、夢を叶える知性を兼ね備えているように思われていたことだろう。成績優秀で、リーダーシップを取る。クラスの人は皆私を慕い、友達がたくさんいる。
全ての人の彼女の印象はこうだった。絵に描いたかのような優等生っぷりだ。
そんな中、ーーだけは、私をそんな目では見ていなかった。
『優等生もどき』私のことをそう揶揄した。
その頃の私は、人前でいる時は自分の夢は必ず叶えられると信じられていた。独りになると無謀だとか、できっこないと不安だけが蝕む。
誰でもやろうとう思えばできる、大人の保護下の範囲内でしか動かなかったし、友達ともいえない、いつも一緒にいるだけの微妙な知り合いばかりが身の回りには多かった。
ただ、それだけ。
今思い返せば、ーーはクラス全員の闇、不安を疑っていたようにも感じられる。ーー自身も、そんな自己矛盾や複雑な自己解離性、そして葛藤を抱えており、同じ苦しみを誰かと分かち合いたかったのではないか。
中学生ながらにして、思春期や中二病程度の言葉じゃ片づけられないほどの悩みなんだと思い込んでいたのだろう。
そんなくだらない時期を、わたしは『どっちでもよい』と考えるようになって終えた。そう、終わらせたのだ。
「優等生もどきはさ、俺のこと、友達だと思ってる?」よく話すようになってから、そんなことを聞かれた。
「人によって親友とも、幼馴染とも呼べる存在なんじゃないの。一応は、話したことがほとんどなかったにしても、こうして小・中一緒なワケで、今はこうして喋ってるんだし」
「じゃあさ、俺たちのカンケイを君が定義してよ」少し焦るように話す。いつも通りの、整った真顔だった。
「イヤよ。私、文系に進むつもりだから、定義したくない」
「文系って言って、定義してんのに」正気か?と訝しげに私の脳天へと目をやる。仕方がないので、
「私はそもそも、最低条件として、相手が私のことを友達だと口にしていないと、どれだけ仲がいい人でも知り合い止まりでしか接せないの。幼馴染だって、その時の歳によって定義が変わってくるでしょ。・・・・・・中学生以下で知り合って、10年以上中のいい子を幼馴染と、私はそう考えるわ」
「ふーん。オマエ、ゼッタイ親友いねーだろ」
当たり前でしょ。いつの間にか口走っていた。
「その調子だと、友達何人いるの?」と言ったかと思えば、やっぱ今のナシで。
「俺、お前の友達になりたい」
そう。私はいつも、キラキラした青春というモノを欲しているの。
「青春を教えてくれるのなら、いいわよ」
「青春?この学校の中でも有数の、1000人の主人公が羨む中学生活を謳歌しているものとばかり思っていたが」とからかってくる。
見る角度次第よ。
リア充だのムードメーカーだの、他人の気も知らずに。側から見れば、これ以上なく私は、今を楽しく生きているのだろう。しかし私にとっては、青春をやっかんで、それこそ一生懸命に、されど不器用に努力し続ける、漫画の主人公の方がよっぽど青春の権化に感じられる。
「そりゃオマエ、俺に言わせりゃアツさとか逆境の苦難を望む、幸せなヤツじゃねぇか」幸福に充てられた、悲劇のヒロインかよ。
ムッとした。真実は苦手だ。「アンタだって、同じようなモンでしょ」
「俺ぁ、クラスのはみ出しモンだからな」続けて、「俺は自分のことが嫌いだ」と独り言をこぼす。
この男は、自分と相手がどんなふうに見えているのだろう。
私の何を知っているというのか。
「私が自分大好きな、不平不満オバケだって、そう言いたいらしいわね」
「そう。であり、そうでない部分もある」ーー曰く、私と彼は二つの相反する事象、感情を伴って内包しているようだ。自己矛盾に悩むから、そんなマセたガキばかりが増えて、若者の精神病患者と自殺者が後を絶たないのだ、と。
バカバカしい。サイコパス診断で引っかかるのは、サイコパスに憧れのあるヤツばっかりよ。精神病だって同じ。
「マトモな中学生のする会話じゃないわね。」
暗闇が刺し込み、私たちは、放課後の夕日に飲み込まれた。
小説書いてて驚いたのが、構成立てたら無意識に筆が進んでいくんだけど、意識してない作品の、「え、ここ!?」みたいなものが出てきてて。存外あまり気に留めてなかったものからも、どこか無意識で影響を受けて吐き出してるんだなぁと。
今まで観てきた作品を色々と思い出すきっかけにもなると言うね。
書いてみたら、意外と影響を受けた本とか思い出すかもです。『呻吟』の応援、よろしくお願いします。