ファームサンクチュアリーでボランティア <ワークパーティー>
今日はアメリカの動物保護団体のひとつ、ファームサンクチュアリーについてお話しようと思います。私のサンクチュアリー像と共に、ここでボランティアをした経験をおしまいに載せています。また先月アカデミー賞を受賞したホアキン・フェニックスが、受賞のスピーチの中でも動物達の運命について触れていましたが、彼がファクトリーファームからファームサンクチュアリーへ、牛の親と子をレスキューした一部始終の動画をアップしました。
1.ファームサンクチュアリーってどんなところ?
Farm Sanctuary とはアメリカの数か所にある非営利の動物保護団体(NPO)で、ファームアニマル - 牛、羊、豚、ヤギ、ロバ、あひる、にわとり、その他 のレスキューと教育活動をしています。
2.犬やネコのレスキューはわかるけど、家畜のレスキューってどういうこと?
ファームサンクチュアリーにいる動物たちは、以下のような様々な運命によりここへ辿り着きました。
- スローターハウスから逃げて来た牛などの動物・・・牛も豚も移動中などにスキを見て逃げるのです、殺されるのがわかるのです。
- 倒産した農場主が動物達をそのままにして逃げてしまった場合・・・何も知らない動物たちは、ある日突然水やごはんがなくなって、餓死を待つだけになります。運よく見つけられ、通報された場合だけ保護されます。
- ハリケーンや洪水などの天災で、動物たちの避難所が必要な場合や、何らかの理由でレスキューが必要な通報があった場合、全米どこへでも出向き、動物達を運搬しサンクチュアリーで引き取るか、一時避難所を提供します。
3.その後、それらの動物たちはどうなるの?
ここへ連れて来られた動物達は、それまで少なからず悲しい状況にいたことが多いのですが、一度来てしまえばその後の半生は楽園です。文字通りパラダイスです(実際に見て来ました)。もう2度と軟禁や、暴力や、飢えや、苦痛や、母親から引き裂かれるなどの心配はありません。動物が動物らしい自然な姿で一生いられるのです。ここで働いている人たちは、レスキューされた動物たちのためなら何でもする人達で、動物たちは完全に守られています。そんな場所、地球上にあるの?というような所です。
4.どんな人がそれを始めたの?
数年前に私はここの創設者であるジーン・バウワーという人の本を読み、深い感銘を受けました。残念ながらこれは日本では売られていないようです。
その頃既に私はベジタリアンではありましたが、この本は私を完全なヴィーガンへと変えました。彼は若い頃から、自らスローターハウスや家畜のオークションのフロアーへ足を運び、そこで動物たちがいかにコモディティとしてオークションで扱われて売られているかを、フィルムに撮り続けました。またファクトリーファーム(工場化した農場)からオークション、そしてスローターハウスで殺戮される経路についても説き歩いている人です。
病気の動物も平気で売られ(そうです、人間はそれを買って食べています)、助かりそうにない動物は外に放り出され、そのまま死を待つ運命です。産まれたばかりの動物も含まれます。そのような非人道的な扱いをフィルムに残し、オークションの経営側からは何年にも渡り妨害を受けながらも、カメラを決して離さず、ファームサンクチュアリーを起こして、もう商品にはならないため見放された動物達の保護を始めました。全て自費とご両親からの援助だけでです。
5.活動はどうやって運営されているの?
現在サンクチュアリーはたくさんのセレブや一般人からの寄付により運営されています。メンバーになると自分たちが寄付したお金がどのように使われているか、定期的に詳細を知らされます。たいていの動物保護団体は寄付による運営ですが、ここのように知名度があると、寄付は有名人からによるものも少なくありません。
パブリックフィギュアであり、テレビやニュース番組、トークショーなどにも頻繁に登場し、またあちこちで講演も続けているバウワー氏は、その穏やかな物腰から、ただのスポークスマン役に見えないこともないですが、実際にはとても地味で苦しい闘いを積んできています。今でこそ、広報・メディア活動が中心でYouTubeもたくさんありますが、人に罵られながら、自らの手で何頭もの死ぬところだった動物を助けてきています。
以前UCバークレー校で講演があった際に出向きましたが、とても話が上手で面白く、あっという間に時間が経ちました。
Talks At GoogleやTEDx Talksなどでの講演もYouTubeで見ることができます。
Gene Baurで検索してみてくださいね。
6.動物の権利や保護活動をどうやって、人にわかってもらうか。
彼らの活動は動物達の権利を唱え、動物がどのような悲惨な状態で飼育され、殺戮されているかを、多くの人に知ってもらうことを目的としています。彼は著書の中でも記していますが、このような運動をする時、人を非難して頭から反対してもあまり効果がないと言っています。私も長い間同志として同じ線上のことを訴えるPETAという団体をサポートしてきて、個人的にもそういう想いが強いため、無関心でいる人には批判しがちでした。しかしながら、それでは石を動かすことはできないと次第にわかり始めました。私としてはハラワタをえぐられるようなものをたくさん見聞きしてきているので、「なんで共感してくれないの!」となるのですが、主観から感情的に訴えることは相手に届かないことが多いのでした。なぜなら相手の人は私と同じところにいないし、同じものを見聞きしてもいないし、また単にそこまで興味がないからです。批判すると人は聞く耳を持たなくなってしまいますが、相手と同じ目線で話をすれば、大抵の人は少なくともこちら側の言い分は聞いてくれます。その上で個人の意見が違っても仕方ありません。
ファームサンクチュアリーのサイトはとてもエデュケーショナルで、ここには書ききれないことが学べます。またフェイスブックでは、動物たちがかわいく、楽しそうで幸せそうな画像や映像ばかりが載せられています。私は以前は、こんなキレイな部分ばかり見せていても、実情は伝わらないのではと思っていた時期もありましたが、今はどんな形もありだと思っています。
ただかわいく幸せそうにしている動物達の姿を見るだけでも癒されるので、癒しが必要な際はぜひ訪れてみてください。ポリティカルにどちらかのサイドにつかないといけないわけではありません。
7.セレブの影響力
NPO非営利団体の活動で、有名人起用の効果は決して軽視できません。これらのセレブは恐らく報酬はもらっていないでしょう。むしろケタ違いな寄付をしているのではと思います。
アメリカではとても人気のコメディアンで、夜のトークショーのホストでもあったジョン・スチュアートは、近年リタイアして奥さんと一緒にファームサンクチュアリーの新しいブランチを始めました。
また先月アカデミー賞を受賞した俳優のホアキン・フェニックスも、動物保護運動家として有名ですが、受賞スピーチの中でもファクトリーファームで虐げられている動物について触れていました。このような影響力のある人が、あのような動員数のある場で人が訝し気になり得るトピックを持ち出すことは勇気のいることだと思います。
下のビデオでファクトリーファームの農場主と交渉して、一頭の母親牛とその子供をサンクチュアリーへ救出するまでの一部始終をフィルムに収めています。8分ほどのYouTubeです。フェニックスと並んで farm sanctuary のTシャツを着ている背の高い人が、ジーン・バウワー氏です。CCから日本語訳が見れます。
8.ファーム・サンクチュアリーで働くという夢
私はずいぶん長い間、ここで働くことを夢見ていました。そして何年も考えた後、実際に仕事にアプライしてみました。ところが私は大型農機具の扱いの経験がなかったため採用には至りませんでした。私は動物保護団体にはおそらく20回くらい仕事のアプライをしています。(同じ団体に過去に断られても再度アプライしたこともあります。)が、アメリカでは募集しているポジションの細部に渡るまでの経験がないと採用されないことが多く、言い換えれば熱意があるだけではだめなのです。たとえばあるポジションでは、私のエクセルのスキルが中級以上ではなかったため、とか、理系の学位がないとダメとか。驚かれるかもしれませんが、多くの動物保護団体は大卒のみならずマスター(MBA)の学位がないとダメだったりします。
そんなわけで未だに熱意はあるものの、動物保護を仕事にするには至っていません。採用にはならなくても寄付のお願いはしょっちゅう来るのですが。。
9.一日ボランティア < ワークパーティ>
仕事が採用にならなかった時、このワークパーティを勧められました。ファームで働くことがどういうものか、一日経験してみるといい、ということでした。
仕事にはならないボランティアは、動物保護団体で今までいろいろやってきました。ファームサンクチュアリーでのボランティア、ワークパーティとよばれるものは、月に一度、約半日でその時々で必要なプロジェクトをみんなで進める、というような形です。ランチはそれぞれが持ち寄って、参加者みんなとシェアをするポットラックというスタイルです。ただしファームにいる動物達はたいていファクトリーファーム(売られるために飼育される工場化された農場)から来ているため、彼らの運命に敬意を払って、フードはヴィーガンに限られます。
お料理が苦手な人や遠方から来ている人(サンクチュアリーは僻地にあるためほとんどが遠方組です。)は、出来合いのものを持ち込んでもいいし、その辺は自由です。
私はこういう時大抵日本の炊き込みご飯風のものを持っていきます。他の人と重なることが少ないし、簡単にヴィーガン、ヘルシー、大量に作れて、見た目もきれいなので大抵喜ばれます(またはそう言ってもらえます)。
この日のプロジェクトは主に、ヒツジたちのいる大きな納屋の大掃除をすることでした。敷いてあるワラと干し草(違いを見分けるのが難しい!)を完全に一掃する作業で、結構過酷な肉体労働でした。マスクなしでは到底無理な程のほこりとちりです。これを4-5時間ほどやりながら、ここで働くというユメは砕けていきました。他のオフィスの仕事でなく、動物のケアがやりたいのであれば、こういう地味な肉体労働が日々の仕事です。私が採用にならず、ボランティアを勧められた理由がよく分かった日となりました。それにしても、”ワークパーティ”とはよく言ったもので、なんとなくランチとパーティがメインに聞こえますが、実際はかなりハードな労働で、ファームでの仕事を美化して考えていた私のようなものには、いろいろ学べる機会となりました。以下、この日のいくつかの写真をアップします。
命からがらで救出される場合もあるため、傷ついた姿のコも中にはいます。
仕事が終わると、サンクチュアリーの人が場内を一周案内してくれます。
全て周るのに約1時間かかりました。
高校生のカップルも参加していました。ランチでは様々なディスカッションをします。皆、思い思いの理由があってボランティアをしに来ています。
ここへ来るとみんなこんな表情になってしまうんですよね。。
物怖じしない子ヤギの大歓迎を受けて♥
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