流れていくタイムラインのなかで、自分のセーブポイントがどこにもなかった。“SNSアカウントをまとめる”サービスが、支持を集める理由
プロフィールサイト「lit.link」、コミュニティSNS「WeClip」の開発・運営をするTieUps株式会社。
「lit.link」は複数のSNSアカウントをまとめるといった使われ方がメインだが、“SNSをまとめる”という機能に、どのようなユーザー側のメリットがあるのだろうか……?
TieUps株式会社代表取締役の小原史啓(おはら・ふみひろ)は、「フロー型が強い従来のSNS社会において、唯一と言える“セーブポイント”をつくれた」ことが成功の要因だと語る。
Z世代を中心に支持されている「リンクインバイオ」というサービスの本質に迫った。
SNSでつながっていても、すべての発信を見られない。「セーブポイント」という発想
――「lit.link」というサービスを着想されたときのことを教えてください。
海外を中心に、プロフィールサイトはいくつかあったんですが、「これは女子中高生が使えるものじゃないな」っていう感覚があったんです。
――女子中高生?
新しいサービスを立ち上げる時に、上流は絶対に女性優位のほうがいいと言われていて。
たとえば当時のプロフィールサイトは、「PCでつくってスマホで見る」ことを考えてつくられているという印象を受けたんです。
僕は、「全部スマホでやりたい」と思ったんですね。しかも、「アプリを入れたくない」と。
――あっ……、たしかにlit.linkはアプリじゃないですね。ブラウザ上で完結してプロフィールをつくれる。
なんというか、“ギャル的な感覚”なのかなと思うんです(笑)。「なんでわざわざ面倒くさいアプリを落とさなきゃいけないの?」という。ただ、それはユーザー感覚としてすごく正しいと思うんですよね。“アプリを落としてほしい”って、結局サービス側の思惑でしかないじゃないですか。
「面倒くさいことはやりたくない」感覚でモノづくりをすれば、日本での勝機は十分にあるぞ、と思ったんですね。
――lit.linkは複数のSNSをまとめる「リンクインバイオ」というカテゴリのサービスに分類されるかと思うのですが、世代によっては“それにどんな価値が?”という人も多いかもしれません。ユーザーにとっては、何が一番の価値なのでしょうか?
これは、ゲームで言う「セーブポイント」だなと思っています。今までの活動を記録しておくポイントですね。
今って、SNS上での自分の活動を、自分自身でも何したか覚えていないという状態が当たり前になっていると思うんです。
“フロー”が速すぎるというか。SNSでつながっている人でも、発信している内容をすべて見られているということはほとんどないですよね。
――たしかに、ちゃんとつながっていると思っている人でも、書いていた内容を見落としているということはよくありますね。
「じつはnote書いてたんだ」みたいな。つまり、記録ができていない。フロー状態で流れて行ってしまうものを、ストックしておく場所が実はどこにもなかったんです。
その記録のまとまりをつくることが価値になると考えたんですね。
しかも、ひとつではなく複数のSNSを横断した“自分を記録しておく”場所って、ないと思いませんか?
――そうですね。仕事関係者に向けての発信と、インスタのストーリーに投稿するものは誰でも異なっていると思います。
仕事に関することはFacebookで発信しているけど、趣味のカフェやラーメンに関することはInstagramに書いている……。そのまとまりが“自分”だと思うんです。
現実で会って、深く知っていれば「色んな一面がある人だな」とわかるけれど、SNSを見ていてもその人の全体像をつかめる場所がない。複数のSNSを横断して発信することが当然な時代だからこそ、「すべてをつないでいる“ハブ”」が必要だと考えたんですね。
この世界の「フォロワー数」は増え続ける。潜在的ファンを巻き込む「FRM」という発想で事業を拡大したい
lit.linkを始める前に、約100本も事業のタネとなる企画を書いたんです。創業メンバーの工藤継太と、渋谷の「フリーマンカフェ」に何時間もいて……(笑)。
そのなかから、実際に事業計画書まで書いたのが6つ。売上予測とか仕様とかまで詰めて書いても、夜中に「これは無理だ」ってヘコむことの繰り返し。
そのときに、うまくいかないと思う事業の共通項があったんです。「影響力がある人がいないと成立しないこと」です。
当時からクリエイターエコノミー領域の事業がしたいと考えてはいたのですが、結局ある程度コストを抑えて事業を立ち上げようと思ったときに、今の時代、絶対にソーシャル上での影響力を効かせることを考えなきゃいけないんです。
逆にいえば、強い影響力を持っている人がいればうまくいきやすい。これはまぎれもない事実だと思います。
影響力のある方が集まるには、どうしたらいいのか……?という点で発想を改め、そこで注目したのが「プロフィールサイト」という存在だったんです。
今の時代に影響力を持っている人がどういう人か?という要素を分解していくと、「検索かソーシャル」に行きつくと思います。
そのなかでも、ソーシャルで影響力がある人の力というのは、半永久的に増え続けるんです。
――なるほど。世界中の「フォロワー数」の総計は増え続ける。
そうです。フォロワー数の総計は増え続けるし、かつそれは一つのプラットフォームに留まるものではなく、複数のプラットフォームを横断して増え続けるものである。
この大きな流れを、事業としてとらえることはできないか?と考えて行きついたのが「lit.link」なんです。
――lit.linkの事業の今後の展望を、うかがえる範囲で教えていただきたいのですが……。
「CRM」という言葉があると思うのですが(「Customer Relationship Management」のこと。「顧客関係管理」と訳される)、エンターテインメントやインフルエンサーなど、様々な業界で“ファンとのリレーション”が重要視されています。
我々はその領域で、lit.linkを基盤にした、ファンを大事に扱っていくマネジメント、いわば「FRM」(「Fan Relationship Management」)のビジネスを展開していければと構想しています。
――これまでの「ファン向け施策」とは異なると?
CRMは“すでにニーズが顕在化しているファン”に届けるもの……という側面が強い。
ファンに届けるか、もしくはSNSなどの発信で、「誰か顧客になってくれる人がいればいい」というぐらいの感覚で、漁師さんが“投網”を投げるように行っている。
――それでは効率が悪いということですか?
そうですね。“投網”ではマネジメントができないと考えていて。ファンのまわりには、おそらく潜在的なファン予備軍が潜んでいる。
ただ、現状ではコンバージョンしてもらうための施策が「0か5か10」。たとえば「10」がコンバージョンだとしたら、その中間に「5」としてLPを作成し、それを見たら“はい、購入してください!”という「10」まで行かせるしかない。
そこに、「4」でもいいし「6」でもいいというグラデーションが必要なんじゃないかと思うんです。
現在のlit.linkは、影響力を持つユーザーさんがたくさん使ってくださっているし、その周りには“ファン予備軍”ともいえる人々の関係性が構築されている。
そのデータベースをもとに、「FRM」という発想で、様々な事業を展開していく……というのが、今日お話しできる今後の展望ということになるかと思います。
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TieUps株式会社:https://tieups.com/
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小原史啓 lit.link:https://lit.link/ohara
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