2021年のラノベ業界を四つの観点で考察してみる。
前回のnote
前回は「たいあっぷ」が目指すビジョンについて書きました。
今回は、そのビジョン実現のため、業界の現状について書いていこうと思います。
これを読めば「ライトノベル」というものがどんな業界で、どういう構造なのか理解ができると思います。
少し、説明が多くなる回です。
何卒、ご容赦ください。
業界の現状
「たいあっぷ」は俗にいうライトノベル(以下ラノベ)を誰もが制作できるサービスです。
ですので、まずラノベ業界についての整理から始めてみようと思います。
現在のラノベ業界は大きく分けて、以下、4つの観点から説明が可能です。
投稿サイト
世の中で出版されている作品の多くは無料の投稿サイトで連載していた作品です。
例えば、主要な大手投稿サイトからの出版作品は2020年時点で1566作品。
これは5年前に比べて2倍近い数字になっています。
その流れからか、たいあっぷも含め多くの投稿サイトが増えています。
収益性や掲載作品のジャンル傾倒化などの問題はあります。
しかし、今の出版業界においては「投稿サイト」の存在はなくてはならないものなのは間違いないでしょう。
特にライトノベルについては、現在ほとんど投稿サイト出身の作品になります。
出版販売
パソコンやスマホが登場し、世の中の多くが変わっていきました。
しかし、ラノベには昔から大きな変化はありません。
コミックを中心に電子書籍の流れが来る中、未だラノベは紙の本が主体で、販売されている作品の実に75%以上が紙の本です。
変化した点としては、「価格」と「続刊発売率」の2点になります。
5年前、600円以下で販売されていたラノベは、大手出版レーベルを除き、現在は1,000円を超えてます。
これは「ラノベ全体の売上が下落したこと」「ラノベの購買年齢が上昇したこと」の2つが原因です。
ただ、後者については議論が分かれています。
「購買年齢が上昇した」から「価格が上がった」のか。
「価格が上がった」から「購買年齢が減少した」のか。
卵が先か鶏が先か、という話ですね。
ちなみに僕は後者だと思ってますが、ここですると話がとても長くなります。
ですので、ここは以上で割愛し、また別の機会に触れるとしましょう。
収益性
ラノベの収益の多くは作品の購買による印税収入になります。
一般的な小説家と同様の収益構造ですね。
しかし、これは「たいあっぷ」のnote。
なので、イラストレーターの収益についても触れていこうと思います。
前述の通り、小説家の収益のほとんどは印税による収益です。
確かに、投稿サイトの中では広告収益や投げ銭などによる収益源を得ることのできるサービスがあります。
ただ現状、印税収益に並ぶほど一般的にはなっていません。
つまり、YouTubeなどと同様、サイトなどに掲載しているだけでは収益を得ることは難しいのが現状です。
また、作品の続刊継続率も低下しています。
「3巻を出版できる小説家は全体の3割以下」と言われた10年前。
それに比べ、現在は2割を切っているという話を聞いたことがあります。
後述するコミカライズに大きくかかわってくる話ですが、ラノベ単体で食べていくのはとても難しい時代です。
ところ変わってイラストレーターの話です。
イラストレーターの収益メカニズムはとてもシンプルです。
出版社が依頼し、イラストレーターが執筆する。報酬として金額を貰う。
以上です。
相場はまちまちなので割愛しますが、大きな特徴としては印税制ではないことがあります。
どれだけ販売されても、どれだけ売れたとしても、得れる収益は変わりません。
ただ、裏返せば「それほど売れなくても、安定した収益を得ることができる」ことでもあります。
また、収益性は十分にないとしても、イラストレーターとして名前を売る手段としては非常に有用です。
ラノベの表紙の執筆から有名になった人の例は枚挙にいとまがありません。
しかし、実際、構造的な問題が多いことが現実です。
作品の権利が出版社に帰属する現在の構造上、コミカライズやアニメの収益がイラストレーターに入ってくることはありません。
また、納期違反や逃亡のリスクを避けるため、出版社は一部のイラストレーターのみに仕事を集中させます。
人脈やつながりがなければ、参入すること自体、とても難しい業界といえます。
加え、近年より単価の安い海外(中国や韓国)のイラストレーターに仕事を発注するケースも増えています。
「ラノベの挿絵」という椅子取りゲームは苛烈を極めているわけです。
メディアミックス
長くなってしまいました。ここまでくればあと少しです。
大枠のラノベ業界について理解ができると思います。
最後、メディアミックスについてです。
メディアミックスとは、小説などの作品を、映画やアニメ、マンガなどの様々なメディアにて展開することを指します。
ラノベにおいてメディアミックスの存在は切っても切り離せない存在です。
現在、多くのラノベはメディアミックスを前提とした販売戦略をとっています。
その中で面白い言説があったので参考にします。
「投稿サイトの作品は、コミカライズの原作供給地であり、コミックの販売市場である」
いわば、150年前のインドとイギリスのような隷属の関係性を表す、いい風刺だと僕は思います。
それほどまでにラノベにとって、メディアミックスは一般的です。
断言できますが、出版社はラノベ自体を売ることはほとんど考えていません。
あくまでも付随するメディアミックスで収益を上げる方向に舵を切ってます。
実際、原作の続刊が打ち切りの判断になるかどうかの判断は、コミカライズの売り上げ次第といわれるほどです。
理由は、ラノベ自体の市場規模にあります。
ラノベの市場規模は、単価の上昇に従って年々下落し、150億円もない小さな島です。
ただ、コミックにするといきなり、6000億円
アニメに至っては2兆円を軽く超え、大きな市場に変わります。
その原材料である「原作」
これを毎年半分以上供給している市場が、ラノベ業界。
つまり、2兆円の源泉となる原料供給地。
かつ、売り上げに寄与するユーザーが多く集まる販売市場。
そんな豊かなインドの土壌が「ラノベ業界」なのです。
最後に
今回は、業界全体についての話のため、説明が多くなってしまいました。
次回は、この「出版業界の現状」を踏まえた話をします。
つまり「たいあっぷ」が、どのようにこの業界をどう変えたいかについて、お話しできればと思います。
最後まで見て頂きありがとうございました。
また、次回お会いしましょう。
たいあっぷDiv所属
二井 駿
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