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15年後の子どもたちに学びの選択肢を残す
学校教育を取り巻く環境
中学3年生人口は、15年で36%減
現在(2024年)の中学3年生が生まれた2009年。この年の出生数は1,070,036人。対して2024年の予想出生数は約685,000人。これから15年で36%の減となる。高校にとってはこの子達が受験生・新入生となる。
単純に考えると、これから15年で3分の1の学校を閉校・合併し、教員の数を3分の2へ減らしていかなくてはならないということだ。
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私が暮らす福岡市では2009年の出生数が14,177人。その後2015年14,797人まで若干増加する。そこから減少に転じ、2023年11,733人。8年間で約20%減となる。
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急激な人口減少により、すでに大きな変革を迫られている他都市に比べて、福岡は例外的にまだその影響を感じない。しかし、間違いなくその日はやってくる。これから10年しないうちに実感する時がくるはずだ。
これからの教育に必要なのは「学びの多様性」
少なくとも今のような教育環境は維持できなくなる可能性が高い。最も大切なことは子どもたちに学びの選択肢を残すことだ。理想的には各学校が上手にダウンサイズを行い、中・小規模の学校が複数生き残ることが望ましい。(そもそも福岡の学校には教育の特色が少ない、という問題は別の時に考えるとして)
私立で考えると、福岡には比較的大規模な学校が多い。それぞれの中でコース分けされているが、主には偏差値の上下で分けているだけで学び自体に大きな差はない。(近隣で特色ある教育を行っているのは、福岡女子商業・立花高校・東明館くらいではないだろうか)いずれにせよ、学びの横幅は足りていない。この状態からダウンサイズし、かつ特色を出していくというのは地域の理解、経営のことなども考えると、極めて難しいことである。
それでも人口が減少し、国内の経済規模が縮小していく社会においては、イノベーションで勝負していくしかない。これまでのような型にはめ込む大量生産型の教育では対応できないのは明白だ。
これからやるべきこと
1.学校を超えて地域社会全体で教育をカバーしていく
まずやるべきなのは、これからの社会デザインを考えていくこと。VUCAと言われる先の読めない時代。だからこそ「これからこのような社会を作っていきたい」という主体的な意識が必要だ。そのビジョンを共有し、そこへ向かうために、学校という枠を超えて関係者皆で教育を考えていく良いタイミングなのではないだろうか。
校長などトップが集まり、地域社会にはどのような教育・学びの多様性が必要なのかを考える場があって欲しい。地域内で学校間の役割分担を進め「共存」を促す取り組みを考えていく必要があるのではないか。
現実的には「ラストマン・スタンディング」になる可能性が高い
上記を目指していきたいがハードルは高い。現実的には、体力・資本力が少なく、人気の薄い学校から崩れていく。結果、少数の強い学校に生徒が集中する、ラストマン・スタンディングとなる可能性が高い。
その過程では大きな混乱が起きるだろうし、少数の学校しか残らないとなると教育は唯一的となってしまう。いずれも避けたい未来だ。
2.学校内に多様な学びのコースを作る
私の勤務校は、ありがたいことに人気が高く、資本力もある。おそらく一番最後まで残る学校である可能性が高い(今の所)。縁あって奉職している身としてどうするべきか。
本校内に多様な学びのコースを作る提案を行いたいと思う。私はただの一教員である。地域社会全体へアプローチできるような力はない。せめて校内に多様性を持たせたい。
現在は、高い学力で進学を目指す進学校で、偏差値によりわずかにコースが分かれているのみ。同質性の高すぎる集団からはイノベーションは起こらないし、学習効果にも疑問符が付く。 特色のあるコースを作り、毛色の異なる生徒を受け入れることは、学校全体としても得るものがあるはずだ。
ただ、これもなかなか難しい。
どちらかといえばガチガチの管理型教育で、学力を上げることにより進学実績を伸ばしてきた本校。これまでやってきた教育にプライドもあるだろう。特色ある教育を行う学校のことを「(ペーパー)学力で勝負できないからやっているんだろう」と言われたこともある。学校が安定していることもあり、外へ目を向ける先生方もまだ多くはない。
この状況で私の案を検討してもらえるかというと、文化的にも厳しいと言わざるを得ない。
3.「学校外コミュニティ」の文化を作る
では、今の自分にできることは何なのか?学校という組織も大きすぎて変革が難しい。であるならば、まずはその外側に、学校・属性・年齢のワクを越えたコミュニティを作ることから始めようと考えた。
このコミュニティで、学校では得られない学びを提供する。私が始めることにより、これをロールモデルとして、様々な分野のコミュニティが立ち上がる。生徒たちはそこへアクセスすることにより、多様な学びの選択肢を得る。こういった未来を創造していきたい。
こういった想いで始めたのがENTRE CAMPであり、YOUTH STARTUP CLUB FUKUOKAである。
2024年夏に企画したENTRE CAMPは、各学校の先生方に宣伝して頂いたものの、参加者を十分集めることができなかった。プレイベントのみの開催となり厳しい現実を思い知らされる結果となった。
福岡の高校生にとって、学校外コミュニティは一般的ではない。また部活動も充実しているので、学校外へ出ていく文化がないことが分かった。
ここからが勝負だ!
ここを開拓していき、5年後には福岡に複数のコミュニティが動いている状態を目指す。そのロールモデルとして、私の主題であるアントレプレナーシップ教育、オーナーシップ教育のコミュニティを根付かせてみせる!
これが私が学外で活動をする理由。福岡は特別に重要だと思っている。まだしばらく人口を保ち、経済的にも元気な都市は残念ながら他にはほとんどない。
福岡から優秀な人材、イノベーションを起こせる人材を輩出できなければ日本の衰退は早まる。少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、そう考えている。だからこそ旧来型の教育を行うだけではなく、学びに横幅を持つ学校・地域でになって欲しい。
まだ危機感を抱いていない福岡の学校・先生方に、すぐにでも動き出して欲しい!子どもが減り始め、落ち始めてからでは戦略の選択肢はほとんどなくなる。改革は勝っている時に始めるべきなのだ。