コロナ禍に対する経済支援~各国の対応

はじめに

9都道府県で発令されている緊急事態宣言が、来月20日まで延長されることが決まった。これに対し、国民からはさまざまな不満が噴出している。

そんな不満のなかには、「経済支援の不足」を指摘するものもある。
たしかに、時短営業などに協力した事業者に対する支援はあれど、一般人に対するものは、昨年の一律給付金以外になかったと思う(2021年5月30日現在、困窮世帯向けの支援金給付案が検討されている様子ではあるが)。

こうした日本政府の対応は、世界的に見てどうなのか。なんとなくダメダメなイメージをもっているが、実際のところよく知らない。というわけで、世界各国の経済支援策について調べてみることにした。世界との比較によって、日本の現在地がはっきりすればよいのだが……。

BBCニュースの記事
はじめにこの記事を参照してみる。


政策パッケージの対GDP比

はじめに、コロナ禍への対応として、政府の打ち出した「政策パッケージ」の、GDPに対する割合を試算した結果が以下の引用だ。

最も積極的な対応のひとつが日本政府が打ち出した、同国の国内総生産(GDP)の約2割にあたる108兆円規模の政策パッケージだ(日本を上回っているのは、欧州連合の基金からの利益を受けるマルタのみ)。
他国と比べると、アメリカはGDPの約14%、オーストラリアは同11%、カナダは同8.4%、イギリスは同5%、コロンビアは同1.5%、ガンビアは同0.6%にあたる救済支出を打ち出している。

数字だけみると、日本の対応は世界でもかなり上位らしい。ただし、「政策パッケージ」が何なのかこの記事からは分からない点に注意する必要がある。富裕層に対し経済的支援をしても意味がない(とまでは言えないかもしれないが、よりよい社会を築く助けになるとは思えない)。コロナ禍が生活を直撃した貧困世帯を支援するべきだろう。
そういった「効果的な支援」が行われているか、上記のデータからは判断できない。

しかし、中央銀行の対応など支出以外の手段を考慮すると、この順位は変わってくる。
例えば、欧州の主要国では、ロックダウンによる打撃を受けた事業者に対し、新たな融資を保証すると政府は約束している。これには、銀行の融資を維持し、破綻を回避する意味合いがある。
米中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)も同様の目的で融資計画に踏み込んでいる。
こういった対応を考慮すると、フランスが最上位となり、イギリスは47位から5位に浮上する。

このような記述もあるが、日本のことは書かれていない。

ダイレクト・ペイメント

次は、国民一人一人に直接支給された現金の額の比較だ。日本でいうところの一律給付金に当たる。

年収9万9000ドル(約1050万円)以下のすべての米市民(全世帯の約9割と推定)は、成人1人あたり最大1200ドル(約12万7000円)が支給される。
韓国では、所得が低い方から70%の世帯に対し、100万ウォン(約8万7000円)の小切手を送付している。
香港は今年2月、成人1人あたり1万香港ドル(約13万7000円)を支給すると発表した。
日本では、住民基本台帳に記載されている全ての人を対象に、1人あたり10万円が、シンガポールでは600シンガポールドル(約4万5000円)が支給される。

外国では、「成人一人当たり」といった条件があるのに対し、日本は「住民基本台帳に記載されている全ての人」とかなり幅広い。給付額も(物価の違いはあるだろうが)各国に比べそう大きく劣るわけではないらしい。
※とはいえ、一律給付金は世帯主に対してしか支給されないという点が問題になっていたのだが……。

金額そのものより、気になるのは次の記述だ。

対照的に多くの欧州諸国では、増加するニーズに対応するため、1回限りの給付金ではなく、比較的強力な既存のセーフティーネット(安全網)プログラムに頼っている。例えば、イギリスの「ユニバーサル・クレジット」制度(低所得者向け給付制度)がこれにあたる。
「経済学者が何を自動安定装置(オートマティック・スタビライザー)と捉えるかの違いだ」と、IMFのマウロ氏は指摘する。
「米国内では自由裁量的対応が非常に大きい。しかし比較する際には、社会的セーフティーネットがより小さいため、米国では実際により多くのことを行う必要があることを考慮しなければならない」

日本では常々、「自己責任論」が非常に強いと言われている。貧困に陥ったのは自分の責任だ、というような……。そうした風潮が、セーフティーネットの不在を招いているのは間違いないだろう。対して、欧州各国には既存のセーフティネットがある=コロナ禍以前から備えがあった。
こういった点は、コロナ禍における日本社会の混迷・分断・荒廃に大きな影響を与えているように思う。

賃金助成金

最後に、外国では、企業に対し従業員の雇用を維持するために、総賃金に対し一定比率で補助を行っている場合もあるようだ。おそらく、日本でこれに相当するのは「雇用調整助成金」というものだろうか

これは、「労働者に休業手当を支払う場合、その一部を負担するもの」とのこと。金額は、一人一日最大で15000円。ひと月20営業日とするとおおよそ最大30万円となる。

では、世界各国はどうか。

ほかの一般的な戦略は、ロックダウン措置の影響を受けている企業への賃金補助だ。企業が従業員の雇用を維持することで、規制解除後に経済がより早く回復することが期待されている。
オランダは、最も手厚い計画を進めている国の1つだ。政府は、対象となる企業の賃金コストを最大90%補助すると約束している。
一方フランスでは、総賃金の84%を補助している。また、最低賃金で働く人については、賃金を最大100%補助するという。
イギリスでは少なくとも3カ月間、一時帰休になった労働者の賃金の80%を、1人あたり月に最大2500ポンド(約32万9000円)までを、カナダでは賃金の75%を最大3カ月間補助するという。【中略】
こうしたプログラムがまだ普及していなかったアメリカでは、直接的な対応はあまり講じられておらず、事業貸し付けに6500億ドル(約69兆1500億円)以上が投じられている。この貸し付けは、企業側が従業員数を維持し、2カ月以内にその大半を賃金の支払いにあてれば返済する必要はない。

横並びで比較するのは難しいが、感覚的には日本と世界でそこまで大きな差はないようにみえる。むろん、あくまで感覚なので、実際に給付される額がどの程度なのかは分からない。

まとめ

データが全然たりないし、そのデータの中身も深く理解していないのでまともな結論は出せないが、経済的な支援という点では、日本は世界と比べてそこまで劣っているわけではないように思える。

にもかかわらず、コロナ禍で日本社会はとんでもなく荒廃したような印象がある。なぜか。

この点について考えるには、そもそも、日本のコロナ禍対応とその問題点を調べる必要がある(この記事を書き始める前に気付くべきだった)。というわけで、次回の記事の話題は決まった。こうご期待。

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