静森あこに心臓をつねられた。【創作大賞感想】
わたしはこれを無料で読ませていただいて良いのですか?
胸の谷間の奥らへん、が、ぎゅっとなった。痛い。
きゅん、なんて生やさしいものではない。
心臓をつかまれた? 違う。そう、これはつねられている。
指の跡がつき、しばらくは消えそうにない。
どちらの掌編も、もう戻らないもの、手に入らないものへの思慕が綴られている。
文学の主題としては特に目新しいものというわけではない。
ただ、そのこちらに迫ってくる感じが、ちょっと類を見ない感じで凄まじい。
描かれているのは執着であり、ある意味では女の業のようなものかもしれない。
風の時代、と呼ばれる現在において良しとされている軽やかさとは一切無縁。
欲望という言葉で片付けるには、あまりにおどろおどろしい衝動、情動、情念、狂気が描かれ、いつしか物語の世界にずぶずぶと沈んで身動きが取れなくなる。
書き出しからして風格が漂う。
何それ、どういう状況? どんな心境なわけ?
その疑問を抱いたら最後、もう心臓は8割がた静森あこの手中に陥ちたも同然。逃げられない。
溜め息。あるいは、息を飲んだ人もいるかもしれない。
この瞬間、わたしは彼女の世界に取り込まれ、じわじわと心臓に指を突きつけられ、やがて2本の指でつねられるに至った。
あなたにも体感してほしい。
静森あこさんの力強い指先。つまんだら離さない、その絶対的な引力。
その指先はきっと、赤く彩られている。そんな気がする。
あこさん、わたしはあなたに出会えてよかったです。
このようなものを書ける人と、この広大な大海原でピンポイントで繋がれたこと、ほんとに奇跡だと思っています。感謝しています。
悩むこと、揺れてしまうこと、たくさんありますよね。
わたしも同じです。
お互い書きたいことやもの、表現したいフィールドは違うかもしれない。
でも、あこさんとなら、「分かるー!」って言い合いながら、ひとつひとつぶっ潰していける気がしています。
ファーストコンタクトからまだ日は浅いけれど、大好きです。出会ってくれてありがとう。
いつか、あこさんの著作の掲載誌か単行本かわからないけれど、それを持って、「サインください🩷」って会いに行く。
夢がひとつ増えました。