【連載小説】俺様人生 vol.19「復職訓練」
アスカが休職してからやがて3ヶ月となる。
職場復帰訓練という名のもと、通勤が始まる。
これは復帰をかけたテストとも言える。
二週間、休まず、早退・遅刻せずに勤務することができたら復帰となる。
遅刻に関しては、よほどひどくない限りはある程度許されるようだが……
俺は朝から無理やりアスカを起こす。
が、なかなか起きてくれない。
必死に起こし続けて出発ギリギリの時間に起き上がる。
アスカは元々すっぴんで勤務していたから、だれからもその点に関しては言われない。
薬のせいか、若干反応が悪いが大丈夫だろう。
俺はフリーな時間で動いていたから、朝からアスカを送っていくことができた。
とりあえず出勤時間には嘔吐しなかったので、ホッとしてアスカを置いて家に帰る。
頑張れ、アスカ!
俺は帰りながらアスカの勤務先の公民館を何度となく振り返った。
なんだかんだで一週間はぶじに通勤できた。
土日で俺が撮影でいない日もちゃんと行けたらしい。
俺はご褒美に、アスカの大好きなス○バでフラペチーノを頼んであげた。
こんな小さなことでも喜べるようになったのは、借金が終わったおかげでもあった。
そういう意味ではすごく勉強になったと思う。
来週もまた頑張ろうね、というと、うん!とアスカは元気よく返事をした。
が、次の週、朝からどうしても起きない日があった。
無理やり起こしてつれていくも、遅刻。
しかもその日に早退をしてしまったのだ。
アスカいわく、とても気分が悪くなり、トイレから出られなかったという。
なのに、迎えに来たときにはピンピンしていた。
仮病じゃないの?と疑うほどに、だ。
次の日は起きたけど、気分が悪くなるからどうしても行きたくないと言う。
ここが踏ん張りどころでしょ?と言うが、アスカの心はもう折れていた。
復帰訓練の結果は、まだあと3ヶ月休職をすること、だった。
アスカに、どうして行けないんだと聞くと、行っても仕事が与えられない、と泣いた。
職場のほうも戸惑っているのだろう、仕事を軽度のものしか与えてもらえないらしい。
元来バリバリ働くタイプのアスカは、することがなく一時間とか二時間とかを過ごすことができないタイプだ。
唯一バリバリ仕事ができて充実していたのは、この職場にくる前の前の職場だったらしい。
子育てをしながら弁当も作り、仕事も自分が中心になって回るほどやりがいがあったらしい。
そこから次の職場へいって、毎日八時間することがない苦痛により、またパチンコ依存がはじまったらしいのだ。
要するに、頼られることが好きなのだ。
好き嫌いなんて仕事では言ってられないけど、アスカにはそれが大事だったらしい。
悔しい思いをして、また3ヶ月を過ごさねばならなかった。
当のアスカは、休職延長に安心したらしく、のんびり献立などを考えていた。
アスカは仕事をしないほうがいいのかもしれないな。と俺はそう思った。
俺の仕事のほうは、順調だ。
カメラさばきにもずいぶん慣れたし、持ったまま動いても手振れしなくなっていった。
カメラを持つ右手右肩に筋肉がついていく。
ダーツをするときにも便利なんだけどね。
ソフトの扱いにも慣れて、今は結婚式の生い立ちビデオも作成している。
生い立ちを作るのはイライラもするけど、楽しい。
いろいろなエフェクトを使いこなして、数枚の写真から五分近いスライドショーを作っていく。
最も作品を作っている、と感じる瞬間だ。
センスもいいと上司から褒められる。
ただ、この上司、一癖あるんだよな。
値段も安いし……どこかに移籍したいな……と考えていたら、同業の赤星さんという方から、お声がかかった。
なんと、今の倍もしくは三倍値段を出してくれるという。
とりあえず今の会社のシフトが入っていない日に撮影のお手伝いへ行った。
赤星さんのほうが厳しそうだが、その分鍛えてもらえそうだ。
当面は二足のわらじでいくことにした。
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