【小説】バージンロード vol.2「裏切り」
次の週末は、ソウと映画に行くことにした。
なにしろ暇だし、彼氏候補はこっちに戻ってこないし、ソウの家はちょうど彼氏候補のアパートとの中間距離だから行きやすかったのもある。
一応、ワンピースで決めて、メイクもたっぷり、つけまもバサバサにつけていく。
それでも何も気づかないソウ。
そんなソウに軽く不満を感じながら映画館へついた。
「ジュースとか買ってくるからね」
と言ってソウはいなくなった。
私は当然私の分も買ってくると思いきや、自分の分だけだった。
私は急いで自分の分を買いに走った。
映画はSFで、ありきたりなヒーローものだったが、私の緩い涙腺を刺激するには充分過ぎた。
私が泣くのを落ち着けると、近くのカフェへ移動した。
ソウはコーヒーが好きらしく、カフェ巡りをしていると言った。
私もカフェは大好きなので、しばしその話に熱中した。
そのあと、ショッピングモールを見て歩いた。
ソウは雑貨屋が好きらしく、男の子には珍しく手にとって眺めたりしていた。
そんな中で、エスプレッソマシンを発見した。
お値段も、大学生には高いが、お手頃価格だった。
私は迷わずそれを買うと、次に別のお店でエスプレッソを購入する。
「今日使ってみよう」
と言う私にソウはうん、と大きくうなづいた。
アパートに帰ってやったのは、まず片付けだ。
エスプレッソマシンを置く場所を確保するためだ。
確保したら、動作テスト。
うまくいったので、早速淹れてもらう。
チャットをしながら受けとる。
『いいなー』
『のみたーい』
チャットでの声に、更にカメラをコーヒーに向ける私。
楽しい。
今日も彼氏候補は焼きもちを焼かない。
もしかして私にはもう興味ないとかかな?
少し不安になる。
その次の週末もソウのところに遊びに来た。
大学生でお金がないので、そうそう遊びには行けないか、ベッドの上で勝手に本を読んだり、自由に過ごした。
この頃から、彼氏候補の挙動がおかしくなっていた。チャットの表チャットでは話すのに、個別では話してくれなくなっていた。
特に焼きもちを焼いていた様子もないのに……
その理由はすぐにわかった。
チャット仲間が教えてくれたのだ。
『彼、結婚するらしいよ』
私はショックだった。
ショック過ぎて涙も出なかった。
次の週末にソウのところへ行くと、事情を話した。
ソウは
「つらかったね」
と頭を撫でてくれた。
私の涙腺が一気に開く。
私は泣いた。泣いて泣いて、涙が出なくなるまで泣いた。
その間、ソウはずっと側にいて頭を撫でてくれたり、背中をさすってくれたりした。
やがて、私は泣き止むと、顔を上げた。
「こんなやつ、信じた私がバカだったよね」
「バカじゃないさぁ。ただ、タイミングが合わなかっただけだよ。」
そう言って慰められ、
「今度からも遊びに来てもいい?」
と聞いた。
「もちろん。僕が部活でいないときは、この合鍵で入ってね。」
と、鍵を渡された。
「合鍵なんて、とんでもない!いいよ、いらないよ!」
と鍵を渡すが、受け取ってくれない。
仕方なく、キーホルダーに鍵をつける。
内心は嬉しかった。
ソウの優しさが伝わってきた。
ソウは大学で演劇部に所属している。
そのため、帰りが遅いことが多々あった。
そんなときは私はパチンコで時間を潰していた。
台所は狭く、作りづらいため、ご飯はほとんどコンビニで食べた。