【連載小説】俺様人生 vol.12「ハニタン」
「レンくん、はい、どうぞ!」
「あ……ありがとう!!」
アスカからチョコを貰った。
そう、今日はバレンタイン。
恋人たちの聖なる日だ。
俺は今まで親以外からチョコを貰ったことなんてないので、とても嬉しい。
貰うなんて思っていなかったから、少しも期待してなかったし、その日だということも忘れていた。
「開けていいかな?」
「どうぞ♪」
俺は無類のチョコ好きだ。
金はなくてもチョコを買うくらい好きだ。
でも、いつも安物のチョコばかりで、最近は買うことも少なくなっていた。
そんなときに、こんなチョコをもらうとは!
しかも生チョコ!!
俺は喜んで食べ始めた。
でも……
「ハニタンにはあげたの?」
「うん、これのビターな方をあげたよ!」
悪意のないアスカ。
これさえなければさいッこーなのに。
一度ハニタンとやらの顔を拝んでみたいもんだ。
ここ最近はハニタンちにも行かず、俺の家に入り浸りのアスカ。
でも、気づくとハニタンちに寄って帰ってくる。
ハニタンちはアスカんちから80キロくらい北にあり、俺と同じ、大学生の独り暮らしだ。
ライバルと思ったことはないが、たまに邪魔だな、と思う。
まだ付き合い始めたばかりだから、よくわからなかったけど、ハニタンとアスカの関係は恋人同士というよりは、親友といった関係に近いなと思う。
ただ、エッチはそれなりにしてるかもしれない。
俺とは最初の一回以降関係がないんだけど、こっちによく来てくれるってことは、喜んでいいのかな?
ハニタンちから帰ってくるときも、ずっとメールしてくる。
下手すればハニタンちにいるときもずっとメールしている。
これって特別扱い?と思うと、それだけで嬉しくなる。
男ってのは、単純な生き物なんです、はい。
そもそも、アスカのどこに惚れたの?と聞かれると、
「全部ですッ」
と答えたくなるくらいベタ惚れの俺。
俺だって片思いとかしてたころは、こんなにデレ助になるとは思ってなかったよ!
いつもクールで、無表情な俺がアスカに振り回されることになるだなんて、誰にも予想はできなかったと思う。
最近は無表情さもずいぶんやわらいできたらしく、アスカもそれを喜んでいる。
アスカが怖がるから、無表情じゃなくて、できるだけ笑顔に、と心がけてきた。
ほんの数ヶ月だけど、ずいぶん俺は変わったと言えるだろう。
アスカは毎朝、寝ぼけて
「レンくんがいない」
と泣き出す。
そのたびに俺は、不安でたくさんのアスカの心を救ってあげたいと思うと同時に、アスカにそれだけ信頼されているということに、誇りを持った。
だから、まさか、俺がハニタンに会うなんて、思いもしなかったのだ。
アスカが今日はカラオケに行こう、とメールしてきた。
俺はハイハイと二つ返事で答えて、アスカを待った。
アスカが到着して、俺は階下に降りる。
すると、アスカの横に誰かが座っている。
それをハニタンだと認識するのに、そう時間はかからなかった。
「なんでハニタンが一緒なの?」
俺は少し怒って言う。
「二人にも仲良くしてほしいなと思って。」
バカかこいつは。
「ハニタンがいるなら俺は行かないから、じゃあね」
と帰りかけた時、ドアが開いた。
「こんにちはー」
ハニタンが言う。
さすがに無視できない俺。
「こんちはっ」
それだけ会釈すると、俺は帰った。
アスカは家まで来たが、俺が本気で行かないと言っていることがわかると、ハニタンとカラオケに行ったようだった。
だいたい、なんであの男も平気でノコノコついてくるんだ?バカじゃないのか?
ハニタンは身長はとても低く、アスカと変わらないように見えた。
そこそこイケメンに片足突っ込んだような顔立ちをしていたが、純朴そうな人ではあった。
だが、普通の感覚なら二股相手を紹介したりするか?
おかしいんじゃねぇの?
俺の怒りはさまよって、ストーブにいった。
ストーブをボコボコに蹴って、少しすっきりするとふて寝した。
アスカが帰って来た。
何事もなかったように、帰って来た。
ストーブをつけようとして、異変に気づいたようだった。
「レンくん、ストーブがつかない……」
「知るか、そんなもん」
俺の怒りを知るとアスカはおとなしくしゃがんでいた。
「レンくん、お風呂は……?」
「もうした、俺は寝るッ」
アスカはおとなしく風呂に入りにいった。
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