何もかも失った俺が、韓国アイドルになぜか好かれて、幸せになる話。
※これは妄想小説です。
自己満に過ぎません。
名前等はすべてフィクションです!!
名前等はすべてフィクションです!!
ではどうぞ。
何もかも失った男が、なぜか韓国アイドルに好かれて、幸せになる話
俺の名前は、岩田千明。
つい1年前、仕事を辞めて、今は1時間くらいのバイトと、親のすねかじりで命をつないでいる。
周りの人間に流されたくなくて、でもどうしたらいいかわからなくて、今まで生きてきた。
推し活にお金をつぎ込みたくてもお金がない、でも、その間にほかのファンは、サイン会でツーショットを撮ったり、直接話したりしている。
俺はそれを、唇をかんでみているしかなかった。
でも、お金がいきなりたまるわけもなく、ただお金が無くなっていくばかり。
焦りばかりが募る。
一体俺は、何をしているんだろう。
明日から、またバイトである。
ただその日暮らしで生きていればいい、そう思った。
翌日、俺はバイトへ向かう電車に揺られ、スマホを何の気なしに眺めている。
俺がやっているバイトは、多国籍学校のスクールバス添乗員というやつで、生徒たちと一緒にバスに乗り、一緒に帰る、ただそれだけだ。
ただその1時間でもお金がもらえるのだから、辞めずに続けている。
英語も、このバイトのおかげで勉強を始めた。
少しずつだが、話せるようにはなっている、と思いたい。
そんなことを考えながら、バイト先の学校にたどり着く。
学校へ着くと、いつも通りに子供たちと話して、席に座り、後はバスが運んでくれるのを待つ。
子供たちをすべて降ろし、自分は電車に乗るため駅へ向かう。
駅へ向かうと、下の方の大きな広場で、あるアイドルグループがライブをやっていた。
いわゆるライブトラックとかいうやつで、そのアイドルグループは、どうやら韓国のグループらしかった。
日本デビューは、一年前していたらしいが、ライブトラックで日本全国を巡るらしい。
韓国のアイドルグループは大手の事務所なのに、どうしてまたこんなことをするのだろう。
そう考えていたら、自然と足がライブトラックの方へ向かっていた。
聞き覚えのあるサビが終わり、MCに入る。
日本人メンバーが確か二人くらいいたはずだから、日本人メンバーがMCをするのかなぁなどと考えながら、眺めていると、日本人メンバーの「カズハ」がMCを始めた。
「広島の皆さんこんにちは!!私達は、韓国からやってきました。
広島は、うちのメンバーのチェウォンさんの提案でツアーを組んでいただいたんですが、まさか「本場のお好み焼き」が食べられるとは思ってなかったので、とても嬉しかったです!!」
カズハが言い終わると、すかさず他のメンバーからツッコミが入る。
「カズハオンニは食べることしか頭にない…笑」
「いつもそうよね、カズハって笑」
そう言われたカズハが、「違う違う」と顔を真っ赤にして否定する。
会場にひとしきり笑いが起こる。
俺は、その中でもひときわ目を引いたメンバーがいた。
ボブカットで、童顔の子。
名前は確か、…。
気になった俺は、スマホを取り出し、検索をかける。
そして、そのメンバーの名前が「キム・チェウォン」であることを思い出したのである。
そして、二曲目が始まり、終わる。
MCが始まり、「サクラ」がMCを始めた。
「はい、二曲目が終わりました。さっき、広島に来たのはチェウォンの提案って言ったと思うんですけど、詳しく説明しますね!!
チェウォン、行ける?」
と、「チェウォン」にMCを変わる。
「チェウォン」は、少し緊張した様子でMCを始めた。
「はい、えーっと、今回、ヒロシマに来よう、思ったのは、私のInstagramに来たコメントがきっかけでした。
その人は、韓国語でコメントをくださり、ヒロシマに是非一度、とおっしゃっていました。
来てみると、とても良いところで、美味しいお好み焼きを食べることができました。
私は、その方にお会いして、直接感謝を伝えたいと思ったんです」
そう言って、少しはにかみながら笑った。
それを見ていた俺は、そのコメントしたやつ運がいいなぁ、多分このあとツーショとれるし、多分このあとメンバーと話せるぞー、と思いながら、SNSを開いていた。
すると、チェウォンの投稿が目に入り、その後自分のアカウントから、「一度広島へ」とコメントしていたのが目に入り、このコメント俺だったのかと、思い出した。
俺が忘れっぽいから、このコメントをしたことをすっかり忘れていたのだ。
それを思い出して頭を抱えた俺を、チェウォンがガッツリ眺めていたことを、俺は知る由もなかった。
ライブが終わり、ほとんどの観客は会場を去っていた。
残っていたのは俺だけ。
そう、あの後、帰ろうとしたら俺だけ止められて、帰れなかったのだ。
まあ、アカウントの持ち主は俺で、投稿したのも俺だから、帰れないのは当たり前か…などと考えつつ、暇をつぶすためにSNSを開く。
撤収作業が終わったらしく、俺もスタッフらしき人間に呼ばれ、やっと会場を離れることができた。
控室に行くように言われ、スタッフに連れられ、控室へ行く。
すると、「チェウォン」が待っていて
「あ、Rain Makerさん。対面だと、初めましてですね。キム・チェウォンです。」
キラキラの笑顔であいさつされたもんだから、リアクションに困ってしまい
「あ、ど、ども」としか言えなかった俺を、だれか殴ってほしい。
しかし、あははと笑う「チェウォン」の顔は、動画サイトや音楽番組などで目にする「チェウォン」そのものだった。
「しかし、1ファンでしかない、俺のコメントなんか見ていただいて、ありがとうございます」
俺が英語でそういうと、「チェウォン」さんは
「全然、日本語でいいですよお」と笑った。
「でも、ファンの皆さんのコメントは一通り目を通すようにはしているんです。事務所のルールで、個別に返事っていうのはできないんですけど…。
でも、日本、東京とか大阪は行ったことはあるけど、ヒロシマって行ったことないなと思って、そんなところに行けるとも思っていなくて。
せっかくコメントをいただいたんだから、日本に行く機会があったら、事務所に提案してみようって思ったんですよ。
だから、コメントくださって感謝してます。ありがとうございます」
こんなに自分のコメントしたことがいいように働くとは思っていなかったから、リアクションが全く追いついていなかった。
そして、まぶしすぎる「チェウォン」さんを直視することができなかった。
そして、リアクションが追い付かなくて固まってる俺を見かねたのか、「チェウォン」さんが、
「よろしかったら、何かサインでもしましょうか?」
と声をかけてくれたのが救いだった。
その声がなければ、俺は今頃逃げ帰るか、頭がおかしくなっていただろう。
「あ、あ、えっと、メモ帳っていうか、バイトで使ってる紙切れしかないんですけど、こ、これでもいいですか?」
俺が差し出したのは、バイトで使っている生徒たちの座席表。
それを見た「チェウォン」さんは、
「全然いいですよお。」
と、紙の裏にサインをしてくれた。
「はい、終わりましたよ。どうぞ!!」
まぶしすぎる笑顔で、差し出されたその紙には、サインとともに、小さなメッセージが書き込まれていた。
それに気づいたのは、家に帰って一息ついてからだった。
部屋に帰ってから、サインをしてもらった紙を取り出し、自慢をしようと、スマホを取り出し、メッセージに気付いた。
「もしよかったら、連絡先交換しませんか?電話番号書いておきますね。」
小さな文字で書かれたメッセージと、その下に11桁の番号。
…間違いない。これは完全に電話番号だ。
しかし、今の時代、ラインだろ。あ、それは日本だけか…。
韓国は、えーっと、カカオトーク?だっけ。
お、これだこれだとアプリを見つけ、インストールする。
試しに、電話番号を打ち込んでみることにする。
すると、「チェウォン」さんのものと思われるアカウントが表示された。
「김채원」と書かれていて、ほかのメンバーと写った写真がプロフィール画像になっていた。
「これで詐欺だったら、おもろいな…。」
俺はそうつぶやくと、考えに考えて、このように打ち込んだ。
「広島においでいただきありがとうございました。
また、ライブとか行けたらいいなと思います。
ありがとうございました。」
すると、すぐ既読が付く…わけもなく。
スマホを眺めては、通知が来ていないことを確認し、諦める、という日が2日ほど続いたある日、カカオトークを開くと、既読がついていた。
お、既読が付いた、と喜んでいたら、返事がすぐさまやってきた。
「連絡ありがとうございます。電話番号追加してくれたんですね。
今度、少しオフがあるので、また日本に行きたいなと思っているのですが、時間とかあったりしますか?」
…ん?これは、「誘い」か?
あるいは、事務所に呼ばれて、怒られたりすんのかな…。
そんな気持ちを表に出さないようにしながら、
「ほぼ働いてないようなものなので、いつでも時間ありますよ。」
と返事をした。
すると、今度はすぐに既読がついて
「よかった!!一度Rain Makerさんとゆっくりお話してみたかったんですよ。ご飯でもいきましょうよ。」
うん、いきなり過ぎないか?
これはいくらなんでも出来すぎてるぞ……。
そう思ったけど、誘いを無下に断るわけにもいかず、また悩みに悩んで、送った返事はこうだ。
「そうですね。時間と場所さえ教えていただければどこでもいけますよ。多分広島市内限定ですが……。」
すると、また既読がつかなくなった。
既読がついて、返事が来たのは二日後だ。
「お返事ありがとうございます。広島市内ですか。じゃあ、6月の最初の土曜日か日曜日でどうですか?
多分空港は、広島空港だと思います。
ヒロシマのことたくさん教えてください。
Rain Makerさんのお話もたくさん聞きたいです。」
そう言われた。
「でも、事務所とか大丈夫なんですか?」
と一応聞いたら、
「実はそんなに、厳しくなくて。今までは、私がアイドル活動に集中したくてオフはほとんど宿舎にいて、練習とかしてたんですけど、もういいかなって」
と返事が来た。
どうやら、大丈夫らしい。
―6月。
梅雨入りし、ジメジメとした季節が始まった。
でも、そんな外の景色とは裏腹に、俺の気持ちは高鳴っていた。
なにせ今日は、「チェウォン」さんが広島に来る日だからだ。
俺は、あまり外に出ない。
だから、広島空港まで車で行くのは気が引けた。
そのため、広島空港までは電車とバスで行くことにした。
「チェウォン」さんが、空港につくのは、夕方らしい。
俺は、広島でブラブラするのは性に合わないから、ギリギリに出ることにした。
電車とバスを乗り継いで、広島空港につくと、ちょうど「チェウォン」さんの乗る飛行機が到着していた。
お忍びだから、報道陣はいない。
「チェウォン」さんいわく、そのほうがゆったりできるし、ゆったり岩村さんと時間を過ごせる、のだそうだ。
そうそう、もうわかってると思うが、「Rain Maker」というのは俺のハンドルネームだ。
「チェウォン」さんの投稿にコメントしたときは、このハンドルネームだったから、彼女にはそう認知されたのだと思う。
帽子を目深に被り、黒いマスクとメガネの「チェウォン」さんがゲートから出てくる。
最初は、キョロキョロとあたりを見回していたが、俺を見つけると、ターっと小走りでやってきた。
「お、お疲れ様っす。」
コミュ障を発揮して、たどたどしく話しかけてしまった。
「チェウォン」さんは、「あはは」と笑いながら、
「緊張しなくていいですよぉ」と、俺の肩に手をおいた。
……そういうことをサラッとできるあたり、全く心臓に悪い。
「あ、えっと、どうします?
なんか、食べます?
あ、でも飛行機で食べてますよね。
じゃあ、えーっと……」
慌てた様子の俺を見て、またあははと笑う。
「めっちゃ緊張してる!!」
「緊張しなくていいってば」
そう言われてもなぁ。
緊張しないほうがおかしいだろ。
「LE SSERAFIM」の「CHAEWON」が、俺と話しながら歩いてる状況だぞ。
「じゃあ、オコノミヤキ食べたいです」
俺の緊張をそっちのけで、「チェウォン」さんはあっけらかんとそう言った。
「でもこのあたりのお好み焼き屋は、個人経営で、えーっと多分すごい注目されちゃいますけど、チェーン系のほうがいいのでは?」
俺がそう言うと、「チェウォン」さんは
「いいんです。Rain Makerさんとだったら注目されても」
と言ったが、俺は「いやだめでしょ」と心のなかでツッコんでいた。
「オコノミヤキ、早くたべましょー」
「チェウォン」さんが、俺の袖を引っ張る。
「知らないすよ?写真撮られても」
俺は、そう言って、個人経営のザ・お好み焼き屋みたいなお店に入る。
店に入ると、「いらっしゃい!」と威勢の良い声が響く。
「チェウォン」さんは、俺の後ろに隠れるようにしてついてきた。
「やっぱり、注目されたくないんじゃないですか」
俺が小声でそう言うと、
「念のためです!あとこうしたほうが、くっつけますから」
………なんかさっきから、付き合いたてのカップルみたいなこと言ってないか?
「いやいや、カップルじゃないんですから」
俺がそう言うと、「チェウォン」さんの表情が少し曇ったように見えたが、その時の俺は気づいてなかった。
「兄ちゃん、べっぴんさん連れてんねぇ!!たんと食べな!!」
お好み焼き屋の女将に焼いてもらったお好み焼きを食べながら、「チェウォン」さんはひたすらに、「おいしい!!」を連発していたし、俺は俺で、どこかにいそうなカメラマンを探して気が気じゃなかった。
お酒も、途中から「チェウォン」さんが飲み始め、俺もそれに合わせる形で飲み始めたら、俺が早々に出来上がってしまった。
「いやぁあのねぇ、俺はねぇ、ルセラのファンで、チェウォンさんにリアコなわけですよ」
覚えていないが、聞いた話だとこんなことを言っていたらしい。
「チェウォン」さんの目の前で、そんなこと言ってしまうなんて
「りあこ?って何ですか?」
と「チェウォン」さんに聞かれ、
「ガチで恋してるってことですよ。ファンの域を超えて、付き合いたい願望があるってことです」
酔っていた俺は、ついにお酒の力で、「チェウォン」さんに言ってしまったのである。
「チェウォン」さんは、
「岩田さん、酔ってますね。帰りますか?」
と言って、俺の袖を引っ張った。
この感じ、「チェウォン」さんもいい感じに酔っている。
帰り道、千鳥足で歩きながら、俺はこういった。
「チェウォンさん、店で言ったこと聞いてましたよね?
俺の気持ちは、伝わってますか?
伝わって無ければ、何度でも言いますが、伝わってたら返事を、聞かせてほしい…」
すると、「チェウォン」さんは、少し顔を伏せてからこういった。
「岩田さんの気持ちは、伝わりました。
というか、私が連絡先をお教えした時点で、私の気持ちも伝わってると思ってましたが、伝わってなかったようなので、言い直す必要がありましたね。」
そういうと、俺の前に立ち、息を整える。
「―私も、岩田さんが好きです。ファンとしてではなく、一人の人間として」
一気に酔いが醒めた。
「チェウォン」さんは、「やっと言えました。」と言った。
俺は俺で、まさかと思っていたが、告白されるとは思っていなかったため、非常に驚いた。
「いいんですか?ほかのメンバーにばれますよ?」
俺が照れ隠しでそういうと、「チェウォン」さんは
「いいんです。メンバーには私が事前に言ってましたから。」
そういうと、スマホの画面を見せてきた。
そこには、「LE SSERAFIM」のグループ通話画面が表示されていた。
「おめでとうございます。チェウォ二、頑張ったね。」
まず聞こえてきたのは「サクラ」の声。
「ついに、チェウォンオンニも、彼氏持ちですか…。感慨深いなあ」
次に聞こえてきたのは、「カズハ」
「岩田さん、チェウォンオンニ泣かせたら、私が許しませんよ、チェチェズは永遠ですからね。」
これは、「ウンチェ」か。
「もう、ウンチェったら。」
「チェウォン」さんが呆れるように笑った。
「あれ?ユンジナは?」
「チェウォン」さんが、そう問いかけると、
「いやあ、やっといい報告が聞けましたよ。岩田さん、うちのチェウォンオンニを、よろしくお願いします。」
「ちょっと、ユンジナ。TAMSぶちまけてる!!」
「サクラ」さんの声が聞こえてきて、途端にガチャガチャとし始める。
「動画とか見てましたけど、プライベートでもあんま変わんないっすね。」
俺が笑いながらそう言うと、画面から
「ええ、これが"LE SSERAFIM"ですから。チェウォンオンニがなんかしたら、いつでも連絡してくださいねえ。」
「カズハ」さんと「サクラ」さんの声がした。
「いや、でも、連絡先が…」
言いかけた瞬間に、ぶちッと通話が切れた。
「連絡先、交換してないんすけど。」
「ほんとですよ、ズハもおっちょこちょいっていうか、そんな感じですから…」
そういいながら歩いていると、もう朝日のオレンジ色が見えた。
「でも、韓国と日本じゃあ、遠距離どころの話じゃないっすよね。俺がそっち行くってのも、何かねえ、って感じですし。」
俺がそう言うと、「チェウォン」さんが
「じゃあ、韓国に来ましょうよ。私達、と言っても、ウンチェとかはまだなんですけど、私ももう23になりますし、宿舎を出る予定なんです。
だから、私の家に来ませんか?」
まさかのお誘い!!
千明、うれしい!!!
俺は、「行きます!!」と即答した。
やっと、実家生活から抜け出せる。
「で、私のマネージャーとして働いてもらうので、仕事の心配もありません。安心して?」
「あ、わかりました。何から何まで申し訳ないっす。」
俺が頭を下げると
「いいの。私がやりたくてやってることだから。じゃ、このオフ終わったら韓国へ行きましょう。」
「了解。荷造り頑張るっす。」
さて、長々と書いてきたが、これにてこの記録は終わりだ。
1ファンでしかなかった俺が、アイドルと付き合ったなんて。
そして、これからさらに困難に直面するだろう。
でも、「チェウォン」さんや「サクラ」さんたちのサポートがあれば、乗り越えられる気がする。
俺は、キャリーバッグとぱんぱんに膨らんだリュックサックを抱えて、搭乗口へ向かった。
「蒔いた種は、必ず実を結ぶ」(締めくくりにかえて)