九六式艦上攻撃機-『特設空母安松丸物語』より #1
1.はじめに
1-1.特設空母安松丸物語
『宮崎駿の雑想ノート』の第9話『特設空母安松丸物語』に登場する九六式艦上攻撃機を1/48で制作しました。
九六式艦上攻撃機(きゅうろくしきかんじょうこうげきき)は、昭和9年に海軍航空技術廠が提出した案をもとに昭和11年に採用された日本海軍の最後の複葉固定脚の艦上攻撃機で、艦攻として初めて空冷星形9気筒のエンジン(中島製「光」二型:離昇馬力840hp)を搭載した乗員3名の機体で、海軍の略符号は「B4Y」、一般的には「九六艦攻」と略され、中島と三菱両社で約200機が生産されました。
すぐに九七式艦攻が出現したため活躍の期間は短いものでしたが、空中性能が良く優秀機と言われたこの機体を惜しんで宮崎駿は『特設空母安松丸物語』を書いたのだと思います。
1-2.キットについて
『特設空母安松丸物語』に登場する「安松丸」と「第31号哨戒艇」はすでに作成したので、物語のワンカットを再現したくなり、大きなスケールの九六艦攻を作ろうと思い立ちました。しかし残念ながらフジミの1/700 グレードアップパーツシリーズNo.71艦載機セットがあるのみで、他のスケールのキットは販売されていません。それでもネット上には何機か見かけたので、制作されたモデラ―がいらっしゃるようです。最初はソリッドモデルかプラ材のフルスクラッチでとも思ったのですが、何かベースになるものがあればそれを使ったほうが楽です。
そこで思いついたのが英国海軍のフェアリーソードフィッシュ(Fairey Swordfish)です。物語の中でも指摘があるように、ソードフィッシュと九六艦攻は機体が良く似ていると言われていますし、キットもいくつかあるはずです。
入手できたのは、タミヤの1/48 傑作機シリーズ(Scale Aircraft Series) のNo.79 フェアリーソードフィッシュ Mk.Ⅰ(クリアーエディション)とNo.99 フェアリーソードフィッシュ Mk.Ⅱです。主としてMk.Ⅱのキットをベースとし、一部Mk.Ⅰのパーツを使用しました。
1-3.九六艦攻とソードフィッシュの比較
九六艦攻とソードフィッシュを比較してみましょう。
九六艦攻はソードフィッシュと比べて、主翼が上下とも細長くなっています。九六艦攻の下翼は逆ガルで、ソードフィッシュの上翼はやや後退翼です。九六艦攻の垂直尾翼は狭く小ぶりで水平尾翼は細長くなっています。
胴体のシルエットは似ていますが、九六艦攻の方が全長が短くやや寸胴で細身です。
エンジンの型式は似ていますが、カウリングの大きさが異なり、九六艦攻にはイボイボがあります。また、プロペラの枚数が違います。
修正ポイントは多そうですが、ベースがあると全体のバランスがつかみやすいので、ソードフィッシュの機体を改造していくことにしましょう。
2.主な改造ポイント
2-1.主翼
九六艦攻とソードフィッシュはともに収納時には主翼を折りたたむことができました。このためタミヤのキットは主翼の展開時と収納時を選んで組み立てることができ、主翼は中央部でパーツが分かれています。上翼は中央部のパーツB11に右上部B13(+下部B9)と左上部B12(+下部B8)から成り立っています。B13とB9は(A)と(B)の点線部分で切断し、(A)の切断部分は端を削って翼の形に薄くしていき、(B)の切断部分は、プラ板の間に補強材を挟んで翼端(C)を延長しました。キットでは下翼も組み立てて支柱パーツのC9と接着するのですが、下翼の構造が九六艦攻と異なるので、支柱パーツは使用せず直接B11+B10と接着するのですが、そのままでは後退翼となるので、B7補強材に加えて新たな補強材を加えて、まっすぐになるように固定し、すき間を埋めて接着しました(D)。左側のB12とB8を同様に修正して接着し一枚の上翼としました。
ライトや支柱用の穴はすべて塞ぎ、翼面を滑らかにしたのち、補助翼用のスジボリを施しました。下翼パーツのC2+G20(C3+G21)も上翼と同様に細長く修正しました。
2-2.胴体
まず機首の固定機銃の部分が太いのでパーツA13の点線部分(A)を切り取ることにしました。また、乗員数は同数なのでコクピット部はそのまま使うとして、どこかで20mmほど寸詰める必要があるのですが、座席とエンジンの間がやや長いので、点線の間(B)を切り取りました。翼の支持柱用やラジエター取付用あるいは固定機銃の窪みなど胴体のモールドはことごとく埋めるか削り落とし、滑らかにしました。
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