いろとりどりの真歌論(まかろん) #4 藤原道長
この世をば我が世とぞ思う望月の欠けたることもなしと思えば
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短歌にも、そりゃあ上手い下手がある。まず第一の段階が、ちゃんと57577の枠に収まるということだろう。字余り字足らずに甘えずに。――でも、その先は難しい。やらないほうがいいことを全部やって達者に詠みこなす人もいれば、悪い点がないのにほめどころがないことも。どちらにせよ詠む人にとって一番大事なのは「どういう短歌がいい短歌か」という短歌観を自分なりに持つことだろう。傑作を一つ作って終わり、ではない。
では、以下の和歌(短歌)はいい歌か。この歌は一般的に、権力者がその権力の絶頂期にはしゃいで詠んだ下手な歌だと思われている。――し、私も長らくそう思ってきた。
最近は違う。「この世」は「この夜」でもあり、夜の覇者は月。それも望月(満月)だ。あくまで、月は「この夜」の支配者だ。とすると、昼間のことまでには言い及んでいないともとれる。夜の支配は達成できたが、さて昼間は。そして望月とはこれから欠けていくもの。己の権の範囲をきちんと把握している。トップに立って終わり、ではない。そんな冷静さが垣間見える。
そんな権力者の如才なさを、わたしは楽しめるようになったらしい。
☆字余り……ジアマリ。この歌は字余りのようだが、この時代(平安)ごろまでは「あいうえお」から始まる言葉が含まれた字余りは字余り扱いされない暗黙ルールがあったっぽい。
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