いろとりどりの真歌論(まかろん) #6 崇徳院

いかでいかで歎きを積みし報いとて逢い見てのちに人をわびしむ


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 男性アイドルのファン、なんてものをやっていると色々面白いファン文化を垣間見る。ファンはアイドルを恋愛対象として見ている、というのが必ずしもそうでないということやら。

 恋愛はエンタメである。エンタメである以上、単純に面白いかどうかが問われる。面白いかどうか、で言えば、恋の成就はつまらない。結婚に至ったところで、日常とはそもそもさほど面白いものではないから。アイドルのファンも、ときどきファン同士でアイドル相手にあの手この手で失恋してみせる妄想が爆発してTwitterなどが賑わう。和歌も失恋を詠んだものは多い。

 とはいえ、この歌は恋の「冷め」を書いた歌の中でも飛び抜けて醒めている。会いたいと思いすぎて、いざ会ってみるとそこまで会いたがるような相手でもなかった、と。「好きだったけど、嫌いになった」以前の話であり、コンテンツ化するにはやや生々しい。なぜこんな冷ややかなニュアンスを帯びているかって、 「い」かで「い」かでなげ「き」をつみ「し」むく「い」とてあ「い」「み」ての「ち」に「ひ」とをわ「び」「し」む ……と、母音「い」音が異様に多い。現代日本語でも5母音中「い」は2番目に出現回数が少ない。かなり意図的に多用することで、冷たい響きが演出されている。


☆母音……ボインまたはボオン。「a(あ)」「i(い)」「u(う)」「e(え)」「o(お)」の音。kstnhmyrwの後ろについて日本語音を作る。

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