『自分のあだ名が嫌だった』男が考える「小学校のあだ名禁止」問題

先月28日の読売新聞で、こんな記事が掲載された。

「あだ名」「呼び捨て」は禁止、小学校で「さん付け」指導が広がる
https://www.yomiuri.co.jp/national/20220528-OYT1T50150/

記事によると、『クラスメートを「あだ名」で呼んだり「呼び捨て」にしたりせずに、「さん付け」するように指導する小学校が増えている。身体的特徴を 揶揄やゆ するようなあだ名は、いじめにつながるケースがあるからだ。ただし、さん付けは円滑なコミュニケーションを阻むおそれも』あると指摘している。

記事を読んで思った感想は、「学校としての義務を放棄している」だ。まさに小学生の時につけられたあだ名がとても嫌だった自分が、この『あだ名問題』について個人的意見を述べようと思う。

1. 「あだ名」が嫌だった小学生時代

自分がその「あだ名」をつけられたのは小学5年生の頃だったか。私がクラスメイトからつけられたあだ名は、ズバリ、『サル』だった。理由は簡単。当時の私の顔が動物のサルに似ているからという、それだけの理由だ。これが非常に嫌だった。ライオンや虎ならともかく、誰だって猿をあだ名につけられて喜ぶ人はいないだろう。私は何度も止めてと言ったし、先生に言って学級会でも取り上げてもらったが、サル呼びはついに終わらなかった。

だが、この時はまだ気心知れた仲間同士の内輪の話で、それで本気で縁を切るようなことは無かった。だが、小学6年生の時はクラスメイトの問題児グループの子から「鼻くそゴリラ」とあだ名をつけられた時は絶句してしまった。問題児相手には「止めて」と強く出ることは出来なかったが、あまりこのあだ名で呼ばれる回数は少なかったのが不幸中の幸いだった。

結局、中学生以降は自分の下の名前か、それをもじった感じ（例えるなら『タケミッチ』みたいな感じ）で呼ばれるようになり、前述のような酷いあだ名で呼ばれることは無くなった。ここで問題なのは、あだ名には「別に呼ばれても問題が無いあだ名」と「呼んだら問題になるあだ名」があるということだ。それについて次の章に記していく。

2. 「問題のないあだ名」と「問題があるあだ名」

前述書いたように、あだ名には「別に呼んでも問題が無い」ものと「呼んだら問題がある」ものがある。問題がないあだ名とはまず何か。例えば自分の下の名前をもじったもの。カズヒロさんだったら「カズ」、タケシさんだったら「タケちゃん」みたいな感じ。これだったら、自分の名前を愛称として呼んでくれるから、むしろ呼ばれる側も悪い気はしない。

では「問題があるあだ名」とは何なのか。ずばり、『呼ばれた側の尊厳を傷つけるようなあだ名』だ。自分の例だったら、猿に似ているという理由だけで『サル』と呼ばれたり『ゴリラ』と呼ばれたり。また、背が低い人には　『チビ』、太っている人には『デブ』、痩せている人には『ガリ』など、身体的特徴を揶揄した呼び方もこれに当たる。

おそらく学校側は、この身体的特徴などを揶揄したあだ名だけをクローズアップして、「あだ名＝相手を馬鹿にすること」という方程式を勝手に作り上げてしまった結果、「問題ないあだ名」を無視して「あだ名禁止」という判断をしたのだろう。だが、そんな表面だけを取り繕ったような対策ではハッキリ言って意味が無い。

3. 学校側がまずやるべきこと

残念なことに、特に小学生などは物事の良し悪しを自分で判断する力が低い。だから、悪気なく相手を傷つけているパターンもある。私の「サル」というあだ名も、動物の猿に似ているからという安直な理由でつけられたものだ。

だから学校側はまず「相手の尊厳を傷つけるようなあだ名をつけてはいけない」ことをまず子供たちに教える必要がある。何て呼ばれたら相手が悲しむのか、それは何故なのかを一から教えない限り、このあだ名問題は解決しない。あだ名によっては、それが差別問題にも繋がることを子供の内に教えなければ、大人になっても同じ過ちを繰り返す、いや、大人になってもそのような「悪い」あだ名で他人を呼ぶようでは、その人の社会的信頼の損失にも繋がっていく。そうなる前に、小学生のうちから学校側は子供たちに善悪を教える義務があるのだ。それもしないで闇雲に「あだ名禁止」とされても、子供たちはあだ名の何が悪いのかが分からないまま大人になっていくだろう。そうなっては、意味が無いのだ。

4. 最後に

以上、「あだ名禁止問題」について自分の意見を書いて来た。最後に、もし学校側が「あだ名」の問題点について今後教えていかないのであれば、親御さんたちが代わりに子供たちにあだ名の何が問題かを教えてほしい。自分のように、あだ名で嫌な思いをした人を一人でも減らすために。