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スーパーボウル広告の現在地:2024年と2025年のTVコマーシャルの特徴を比べてみる

スーパーボウル広告の現在地:2024年と2025年のTVコマーシャルの特徴を比べてみる

はじめに

スーパーボウルのTVコマーシャルは、毎年膨大な予算が投入され、視聴者に強烈な印象を与えるための工夫が随所に施されています。本稿では、2024年までに見られた伝統的な広告の特徴と、2025年に新たに現れたトレンド―生成AIの活用、安全運転志向、女性や社会的メッセージの扱いの変化―を比較し、両者の違いや共通点を検証します。これにより、今後の広告戦略にどのような変化が求められるのか、広告業界の「現在地」を探ります。


1. 2024年までのスーパーボウル広告の特徴

ユーモアとセレブリティの重用
- 笑いを狙った構成:  
  調査によれば、視聴者の約70%がシリアスな広告よりも面白い広告を好むとされ、2024年のCMの多くは笑いを狙った内容となっています。  
- 有名人の起用:  
  2010年代初頭では数割に留まっていたセレブリティ起用率が、2024年には60%以上にまで上昇。有名人を複数世代で共演させる手法(例:マーサ・スチュワートとチャーリーXCXが共演したUber EatsのCMなど)が、話題性を高めています。

ノスタルジーの活用
- 懐かしさで共感を誘う:  
  2010年代半ばに約28%だったノスタルジー要素を含むCMは、2023年には45%以上に増加。Instacartの広告で昔懐かしいブランドマスコットが登場したり、映画『恋人たちの予感』の名シーンがオマージュされるなど、過去のポップカルチャーへの郷愁が幅広い世代の共感を呼びました。

感動路線や社会的メッセージ
- 心温まるストーリー:  
  Budweiserの「子犬の愛(Puppy Love)」や、Googleの「Loretta」のように、感動的なストーリーや社会貢献を訴える広告も展開。  
- 受け手との温度差:  
  一方で、調査によると社会貢献的な広告を望む視聴者は19%にとどまり、シリアスな内容はさらに低評価となっているため、ほとんどのブランドは安全策としてユーモアや名作映画の引用に依存してきました。

アイコン的キャラクターとマルチメディア展開
- 動物キャラクター:  
  Budweiserのクライズデール馬や子犬シリーズなど、可愛い動物キャラクターは視聴者に高評価を得ています。  
- 事前プロモーション:  
  ティーザー広告の公開やSNSを通じたプロモーション、ウェブ限定のロングカット映像など、オンエア前後も含む総合的なキャンペーン戦略が確立され、投資対効果の最大化が図られました。

以上のように、2024年までのスーパーボウル広告は「笑い」「スター」「懐かしさ」を軸に、視聴者の感情に訴える定番パターンが主流となっていました。


2. 2025年のスーパーボウル広告の特徴

2025年は、伝統的な要素を維持しながらも新たな潮流が浮かび上がりました。

「安全運転」志向の徹底
- 無難で楽しめる路線:  
  広告主は、政治的・社会的物議を避けるため、コメディやノスタルジーに依拠した「安全策」を徹底。結果、視聴者を笑わせることに特化したCMが多数放映され、セレブリティによる同じ型のギャグが乱発される状況となりました。

広告費の高騰と激しい競争
- 投資規模の拡大:  
  2025年は30秒あたり過去最高の800万ドル(約8億円)に達し、80本前後の全国放映が実現。巨額の投資が背景にあるものの、競争の激化と定番パターンへの陥りやすさが、全体的なクリエイティブ効果の低下につながっています。

新技術・トレンドの反映
- 生成AIの導入:  
  生成AIを活用したプロダクト紹介や、CM自体にAI技法を用いたメタ演出が見られ、「AIスーパーボウル」とも称されるほど最新技術が前面に出ています。  
- 医薬・ヘルスケア分野の進出:  
  GLP-1受容体作動薬や、認知症・がんといった健康テーマに踏み込むCMが登場し、従来のソフトドリンクや自動車といった定番業種以外の出稿が増加、広告主の多様化が進んでいます。

女性・社会性テーマの変化
- メッセージ性の強化:  
  Dove、Google、Nikeなどが、女性の健康や権利、ジェンダー平等を前面に打ち出すCMを展開。特にNikeは27年ぶりにスーパーボウルに復帰し、女子アスリートの躍動を描くことで、ブランドの社会的意義を強調し、話題となりました。

このように、2025年は従来の要素に加え、新技術と社会的メッセージが融合し、より多角的かつ革新的なアプローチが試みられた年と言えます。

まとめ

2024年のスーパーボウル広告は、「笑い」と「スター」、「懐かしさ」を中心とした定番パターンで視聴者の心を捉えてきました。一方、2025年はその定番路線を踏襲しつつも、生成AIの活用や炎上を避ける表現の安全運転志向、女性・社会テーマといった新たな要素が加わり、従来のエンターテイメント広告から一歩進んだ、ブランドの本質や時代のトレンドを強く反映する形に進化しています。今後、広告主はこれらの要素のバランスをいかに取るかが、差別化とブランド価値向上の鍵となるでしょう。

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参考出典

- SHARETHROUGH.COM  
  [https://www.sharethrough.com](https://www.sharethrough.com)

- NEWS.DARDEN.VIRGINIA.EDU  
  [https://news.darden.virginia.edu](https://news.darden.virginia.edu)

- REDDIT.COM  
  [https://www.reddit.com](https://www.reddit.com)

- MARKETINGDIVE.COM  
  [https://www.marketingdive.com](https://www.marketingdive.com)

- SEARCHENGINELAND.COM  
  [https://searchengineland.com](https://searchengineland.com)

- FORBES.COM  
  [https://www.forbes.com](https://www.forbes.com)

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