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癖になる味:まずくて高価格なロングセラー商品から「固有の体験」の重要性を学んでいます。第一三共ヘルスケア クリーンデンタルのお話。味覚と視覚が効いている統合マーケティングでブランド化しています。
「心地の良い体験」がブランドづくり(企業と顧客の価値の共創)にとって大事ということをまとめてきました。
これもある種の言葉のチカラによるものだと思いますが、「心地良い」ということでついつい「甘い記憶」的なものに支配されていたことに気付かされた記事です。
心地良い体験はValueですので「固有」ものである必要があります。
実はクリーンデンタルについては僕が愛用している商品です。
ヘッダーの写真は自分で撮りました。
最初に種明かしをするのは商品に思い入れ(バイアス)があるので、適切にまとめられているかどうか、気になったためです。
それを前提にお読みください。
9月20日のYahooニュースです
第一三共へスケアのクリーンデンタルについて取り上げています。
ロングセラー商品ですが、2022年度は前年比112%で好調です。
1985年に同社から登場した歯周病予防歯磨き『クリーンデンタル』は、ほとんどの人が最初は“まずい”と表現するであろう、インパクトの強い個性的な味で知られる。さらに、価格は1本(100g)1408円(税込・編集部調べ)。現代のヒット商品の方程式“安くてうまい”の真逆をいく歯磨き粉、それが『クリーンデンタル』だ。
ところが、同商品の現在の売り上げ規模は約50億円。2022年度は売上前年比112%(※1)を記録するなど、売れ行きは好調。その背景にあるのは、愛用率の高さだ。実に購入層の2人に1人がリピーター(※2)という。
こちらが商品サイトです
特別なキャンペーンは行っていません。
役所広司さんを起用したクリーンデンタルプレミアムの告知を中心したTVC Mを中心とした広告展開が行われています。
*以下のリンクはちゃんと役所さんのTVCMページにつながります。お試しください。
豊富なライアンアップですが、赤いパッケージの「トータルケア」が名実ともにライアンナップの中心です。
まずい味(歯磨き粉として期待しているものと異なる味)
「今でも初めてお使いいただいた方から『何ですか、この味は?』『こんな不味いもの、口に入れられない』というお言葉をいただくこともあります(笑)」
まずくて高価格”でも売上増、発売38年のロングセラー歯磨き粉 「クセになる味」にリピーター
「塩」味が強く、独特です。
僕は妻に勧められてトータルケアを使うようになりました。
確かに初めて使った時「???」となったのですが、まずいというよりも期待していると異なる味でした。
何とも言えない清涼感があります。
商品と体験の結びつきの観点ではこの違いの答えを探したくなるという動機が働くのかも知れません。
歯を磨きを進めると、歯の表面がツルツルした印象が出てきたり、歯茎に効いている感じがありました。効果効能を実感できるのが早かったです。
口をすすいだ後のスッキリした感じですが、これも一般的な歯磨き粉と異なります。
この一連の味覚を中心とした「クリーンデンタル体験」が新鮮で結果的にクセになって、継続使用しています。
リピーターが多い
その背景にあるのは、愛用率の高さだ。実に購入層の2人に1人がリピーター(※2)という。 「味について厳しいお言葉をいただく一方で、最初は違和感があっても、『使い始めて3日くらいで慣れて、1週間でハマりました』というお声も非常に多いですね。リピーターの方からは使い続けたことで『歯の表面がツルツルになった』『磨いた後の爽快感は格別』などコメントもたくさんいただきます」(第一三共ヘルスケア「クリーンデンタル」ブランドマネージャー・松田一成さん/以下同)
味に意味がある(Reason To Believe/Buy)
■昔も今も“まずい”のなぜ? 独特の味は「重曹」と「塩」だった
「個性的な味ですが、決して味を二の次にしたワケではなく、発売前から研究を重ねた結果、辿り着いたものです」 『クリーンデンタル』には、重曹(炭酸水素ナトリウム)と塩(塩化ナトリウム)をはじめ、約10種もの薬用成分が配合されている。(※重曹は添加物として) 「重曹は今では掃除の万能アイテムとして知られますが、当社でも38年前、その汚れをよく落とす性質に目をつけて歯磨き粉に配合しました。ただし重曹を入れると、もう美味しい味の歯磨き粉は作れません(笑)。重曹自体、変な味がしますから。しかも約10種の薬用成分の中には苦いものもあります。そこで、“美味しい歯磨き”を目指すのではなく、せめて慣れてもらう味にしようと研究を重ねて、今のクリーンデンタルが誕生しました」 “汚れをしっかり落とすこと”にこだわった結果、重曹は絶対に外せなかった。そして重曹を入れるからには、”美味しい味”を諦めて、「1週間で慣れる味」「慣れたらハマる、癖になる味」を目指したという。ある種潔い選択と言えるかもしれない。
詳しい開発ストーリーはこちら
*ちゃんと開発ストーリーにリンクしています!
「潔い選択」
記事にあるライターさんの言葉です。
鋭い分析です。
プロダクトの価値は「汚れをしっかり落とす」ということ、それを際立たせるために「落とすこと・落ちたこと」を実感できる味(それを裏付ける成分を知覚できる味)を設定したのは非常に合理的です。
あえてand選択(しっかり落とす+美味しい)ではなく、「しっかり落とすための味」を優先的に選択したことでよりValueが明快になりす。
そして味覚を決定したことでターゲット顧客(価値の共創者)がはっきりしてきます。
歯周周りや口内環境で特別なモノやコトを求めている人がターゲットです。
白さ、口臭など美容的な要素よりもより先進的な予防ケアに課題を設定している人たちです。
万人のためのものではないということです。
後述しますが、万人のための商品ではないことは価格にも反映されています。
まさにクリーンデンタルの使用感同様Value周りは「スッキリ」です
味の意味づけはターゲット(Valueの共創者)の選択でした。
もしかしたらクリーンデンタル愛用者の「味覚のクラスター」で別の商品・サービスとのブランドエコシステムが作れるかも知れないと想いは膨らみますが、これは広告代理店の浅知恵なので今回はお話しません。
情報のタッチポイント、その入り口は?
商品とお客さんとの最初の接点を「歯周病」を出発点にしています。
僕は歯医者さんで定期的な歯周病検診をするようになってから歯磨き粉を気にするようになりました。
歯磨き粉自体はドラッグストアの店頭で買うものだと思いますので、広告には反応しませんでした。
妻からの推奨(その妻も友達に勧められました)がきっかけです。
推奨を引き出すことにも「味」と「使用感」が機能しています。
まさにストーリーがあるプロダクトということになります。
社会的な背景を味方に
マーケティングを展開する上で非常に重要な要素です。
社会と向き合うことはマーケティングやプロモーションには欠かせません。
本件に限らず「コロナによるパンデミック」前後での社会と行動の変化をしっかり捉えておきたいですね。
コロナでの意識変化と行動制限
「もともとのオーラルケア意識の高まりに加え、コロナ以降は、『口の中をより清潔に保ちたい』という人々が増えました。これらが市場に顕著に表れていると思います。トレンドとしては、『歯周病予防』『むし歯予防』『口臭防止』など、あらゆる効能を併せ持ったオールインワン処方の歯磨き粉の需要が増えています」
記事では意識の変化について言及していますが、コロナ環境で歯医者さんに行けないこともありました。
歯周病を気にする人ははの定期点検を欠かさない人が多いように思います。
*ちゃんと調べてみたいですね。
歯医者に通えないという行動制限が「予防意識」を後押ししたかも知れません(サンプルが自分だけですが…)。
家族構成の変化
これもかなり大事なポイントです。
は今後いろいろな商品・サービスで目立ってくるでしょう。
さらに、昔は家族でひとつの歯磨き粉を使うことが多かったが、近年は一人ひとりがフレーバーの好みや効能によって使い分けるようになり、結果的に購入個数が増えていると話す。
我が家においては「子供用(幼児向け)歯磨き粉」を用意する必要があったことから、逆説的な言い方になりますが、大人たちの選択肢が増えました。
個・個人をマーケティングとしておかける動きは行動・購買データの充実などで加速します。
テレビでさえも世帯から個人視聴率重視に動きます。
健康意識と社会制度的な背景を梃子にさらに前進を
歯周病対策をビジネスの課題に設定しています。
「2025年以降には『国民皆歯科検診』で国民全員が歯科検診を受ける流れになると思います。そういった歯科検診を受けてくださった方に対して、歯周病とはどんな病気なのかを啓発動画や冊子などで伝え、多くの皆様に興味を持っていただきたい。製品だけでなく、そういったサービスや情報も提供することを目指しています。歯周病対策は、まず歯周病を知ることから始まります。まずは歯周病を知ってもらい、何歳からでもいいので、歯周病対策に目を向けてほしいと思います」
まずくて高価格”でも売上増、発売38年のロングセラー歯磨き粉 「クセになる味」にリピーター
歯周病対策を課題に抽出
第一三共ヘルスケアでは、今後の展望として、歯周病の正しい情報を提供し、遠い将来の危機でなく、今まさに必要なケアとして、まだ取り組んでいない生活者にも歯周病対策に目を向けてもらえるよう啓蒙活動を行っていきたいとしている。
HPでも歯周病情報については書かれていますが、割と一般的な印象でもあります。
第一三共ヘルスケアのValueは?
ValueをさがすためにHPを拝見しました。
Core Valueについての記載がありますが、僕が考えるマーケティングとしてのValue(顧客と共創する固有の価値)は「私たちの宣言」にありました。
私たちの宣言
独創的な発想でセルフケア推進の先駆者になります
科学的に根拠のある品質を大切にし続けます
製品と情報の届け方を生活者の視点で追求します
将来世代の環境を守り 生命にやさしい社会の実現に貢献します
多様な働き方を尊重し 活力ある会社を築き上げます
「独創的な発想でセルフケア推進の先駆者になります」「科学的に根拠のある品質を大切にし続けます」と「製品と情報の届け方を生活者の視点で追求します」はValueそのものです。
上述した「課題設定(歯周病対策)」が掛け算となって社内外の共創者とのインタラクション・チームワークが続きます。
プロモーションはどうあるべきか?
上述のように現在はプレミアムカテゴリーについて役所さんを使った広告展開をしているのみのようです。
マーケティングミックシス上はプロモーションがあまり必要がないということかも知れませんが、流通(Place)については慎重に対応しているのではないかと推察しています。
買う側(顧客)としてはドラッグストアを中心とした店頭で手に入れるだけですが、店頭に並べるまでの競技の意味でのプロモーション(流通対策)として広告投下をしているはずです。
流通を刺激することは顧客とのリーセンシーにつながります。
流通対策は現在、有名タレントと投下GRPによって棚を維持する作戦を持ってプロモーションにしています。
タレント選びは大事なポイントです。
ターゲット顧客との兼ね合いもありますので、Relevancey(自分との関連性)を切らないタレント選定を行っていますね。
ミドルファネル重視です。
さすがのアプローチです。
パッケージの重要性
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