見出し画像

『銀色の欲望』

『銀色の欲望』 No.005

暗闇に蠢く肉体の陰影は部屋の隅に揺らめく一本のロウソク
男は自らの願望をかなえるべく女の心を虜にした
狂おしいほどに燃え上がる炎で相手を焼き尽くしてしまわないか
凍てつくほど無感情な女が時おり魅せる官能的な吐息が憎らしい
シャンパンを口に含み、相手の喉奥へと流し込む
芳醇な香りと刺激が二人を一層たぶらかす
世間から見れば自分たちはどう見られているかなど、どうでも良かった
男はただ本能に従うのみ
女もただ本能に従うのみ
互いに望むことは互いに求めあうこと
永い間、混沌とした世界を一人旅していた二人にとっては涸れることのないオアシス
いつか訪れる無限の渇きに怯え、目の前にある欲望に支配される空虚なシナリオ
男はそこから抜け出したかった
女はもちろん気づいていない
男はシルクのガウンの帯を拾い、女の後ろから優しく目隠しをした
窓の外を見ると黎明の空がこの光景を反射している
男はゆっくりとベッドの脇に隠しておいた黒く細長い入れ物を取り出す
中に潜ませていた鋭利な光を放つ銀色の”ソレ”を女の首元にそっと感じさせた…


ここから先は

1,467字 / 1ファイル
この記事のみ ¥ 100

皆さまからのお心遣い、ありがたく頂戴します。 そんなあなたは、今日もひときわ素敵です☆