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『よこしまな色合わせ』

『よこしまな色合わせ』 No.030

まさか本当にやるとは思わなかった
流石の俺もちょっとビビる
愛人は俺の為に自社の金をマジで横領した
本気で俺と一緒になりたかったら…
なんて冗談半分で言ったら、本当にやりやがった
バカな女ってのは、どうしようもないか…
しかし、何とかしてこの状況を切り抜けないとマズいことになるな
昔得意だったルービックキューブを何気に手に取る
こんな精神状態じゃ全く揃わないのもあたりまえか
悪態をつきながら部屋の壁に投げ捨てた
物音を聞きつけ、妻が怒鳴りながら部屋へ入ってくる
いつもの様にドジなふりをし、その場を収めた
唇を歪ませながら、吐き出すように溜息を残して去る
何時から俺たちはこんな状態になったのか、思い出すことも諦めた
妻からはいつもの様に俺を役立たず扱い
日に日に眉間にしわが寄り、眉は吊り上がる
メイクや髪型は相変わらずヤンキーの延長線上
いつまで俺はこんな扱いに耐えれば…
何とかこいつと別れてアイツと一緒になる方がマシか
こいつさえ居なくなれば…
昔から積み上げてきた悪知恵が働きだす
頭の中でバラバラの多面体が高速回転する
幾度も回転を重ねながら徐々に色が揃い始める
全ての面が揃い、最悪で最高のシナリオが現れた
妻の名を呼ぶと無言で丁寧に答えてくれる
今すぐ空中に突き落としてやりたい…
そんな衝動に駆られた
しかし全ては計画を成功させるため、今はグッと堪える
そして俺は満面の笑顔でこう誘った

“来月船旅にでも行かないか?”と…


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