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『After the rain』

『After the rain』 No.004

しっとりと重く緩やかに降り続く雨の中
小高い丘の上にある緑の道を物憂げに歩く
男はレインコートを着込み、黒い大きめの傘をさしている
心は迷いながらも足取りは着実に進む
雨粒の向こうに目的のベンチが見えてきた
近くまで来るとベンチの片側の木が割れ、今にも壊れそうだった
誰かの関心を失えばこうなるのか…
男の心にジワリと染み込む
今さら後悔してももう遅い
君を失ってはじめて気づく愚かな自分
眼下に見下ろす湖を降りしきる雨が煙に巻く
男はそっと目を閉じ、雨と地球の協演に耳と心を傾けた
傘をさす手の震えを止められない
内側から溢れる雫が哀しみの音を響かせた
強く握りしめたこぶしをゆっくりと解きほぐす
今にも崩れそうな砂の城は何とか持ちこたえた
君と来た最初で最後の場所
もう一度来ようね、と言った君
ここにいるのは愚かな一人の男だけ
あの時の湖にかかる虹の美しさに魅せられた
あの時の湖に映る笑顔の美しさに魅せられた

男はじっと待つ
雨がやみ、あの虹をもう一度見るために…
男はずっと想う
心の闇を照らす、あの煌めきに報いるために…


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