『見えない足かせ』

『見えない足かせ』　No.035

世界を放浪する旅人
とても羨ましかった
出会った時のあなたを思い出す
シワだらけのシャツに擦り切れた下駄
でも不思議と貧しさは感じない
寧ろ豊かさに満ち溢れていた
私の家系に受け継がれる遺産
コルセットで締め上げられる偽りの生活
一人で出掛けたくてもかなわない
ずっと何かに囲まれて生きる
さり気なく息苦しい
世界にはあなたみたいに自由がある
私は生きてるって言える？
あなたと過ごした数時間
何物にも縛られない輝きのトキ
このまま手を繋いでいたかった
そのまま心を開いていたかった
あなたは生まれた国に戻っていく
残された私にまた視線がまとわりつく
少しだけあなたを通して世界が見えた
一人では決して見えなかった空
ずっと先にあなたがいる
あなたの価値は自由の連鎖
私の鎖を解き放つ
あなたに学んだ持たない幸せ
私が拒んだ見えない足かせ
ここから本当の世界が始まる
私は、今、飛び立つ…