『ダンス・ダンス・ダンス』
『ダンス・ダンス・ダンス』 No.070
男は飛行機と舟を乗り継ぎ、遂にその地に降り立った
プエルトリコの東に在る名も無き無人島
ここまで運んでくれた船乗りと通訳者に別れを告げた
胸のポケットから手書きの地図を取り出す
アメリカのある歴史学者から貰った金色のコンパスを見た
暑さと高揚が混じり合う
密林に吸い込まれるよう歩を進めた…
暫く進むうちに、男は妙な感覚に陥った
木々のざわめきや葉の色、土の匂いなどを鮮明に感じだした気がする
ふと立ち止まり、辺りを見渡す
熱帯特有の鳥たちの鳴き声に混じり、何かが這いずる音がする
感覚を研ぎ澄ませ、音の発信源を探った
その先には、無数の根が異様なまでに広がった巨木が佇む
男の視点は、在る一か所に注がれた
根の一部が何かざわざわと動いているように見える
一瞬のたじろぎから湧き出す好奇心へ
ゆっくりと近づくにつれ、動いていたのは根ではないことが分かった
それは獣の死体に群がる、おびただしい蟲のカーニバル
ウジにも似たその生物は全体が艶やかで、不思議と異様さを感じさせなかった
生物学者として非常に惹かれるものがある
男は鞄からピンセットと小瓶を取り出し、一匹つまんで封印した
カラダをくねらすその姿は、どこか無邪気であり、エネルギッシュ
まだまだ踊りたりないようだ…
少しくぼんだ岩場で火を焚いた
アレを採取した小瓶を再び眺める
それはずっとくねくねと、うねり続ける
何故か規則的に踊り続けるその姿に魅了され、徐々に意識が遠のいていった…
密林の上空には、UFOにも似た光が現れ、倒れた男に数本の影が…
皆さまからのお心遣い、ありがたく頂戴します。 そんなあなたは、今日もひときわ素敵です☆