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『お気に入りの本棚』

『お気に入りの本棚』 No.025

月に2度の陶芸教室に通い始めた
3度目の今日もやっぱり気になってしまう
向かいにいるちょっと不思議な雰囲気の女性
いつもイグアナの絵がプリントされたTシャツ
真剣さと楽しさが伝わる眼差し
斬新なデザインを創り出す指先
ちらちらと見入ってしまう…

教室が終わり、駅まで歩く
外れた自転車のチェーンと戦う彼女
声をかけ、ペダルを何度か回して元に戻す
お礼がしたいとカフェに誘われた
軽い話題から、何気なくTシャツの話をふってみる
好きなものを見つけると、それを粘土で作り、本棚に飾る
パソコンでイラストを描き、プリントしたTシャツを着るのが楽しいのだと
瞳を輝かせながら、歴代のお気に入りを見せてくれた
イグアナの前はヘチマ、タツノオトシゴ、ビール瓶、スパナ等々
つかみどころのない空気は、こういう所から醸し出されていたのだろう…

4回目の教室の日、彼女は遅れて入ってきた
席に着くとパーカーのファスナーをゆっくりと下ろす
笑顔を作り、何気なく前を開く
そこには自転車のチェーンを直す男のイラストがあった…
手に変なチカラが入り、かたどっていた器が不自然に歪む
“お気に入りの本棚”でイグアナの次に並んだのは…


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