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45歳、中流家庭。それでも家を買う(3)先立つもの

(前回までのあらすじ)

母の家探しを経験し、高齢者は賃貸物件を借りづらいことに気づいた。賃貸暮らしの私は将来への不安を感じ、家を買うことに踏み切った。しかし、今住んでいる家に満足しているため家づくりの具体的イメージがわかない。せいぜい「今より良い家に」という程度の夢しかない。そんな私が次に考えたのが資金計画であった

いくらなら借りられるかではなく、いくらなら返せるか

家を買おうと考えて、おおざっぱなイメージを持った後、まずはじめに手をつけたのは資金計画だった。
理由は単純。勢いで住宅ローンを借りられる年齢ではないと思ったからだ。現在44歳、家を買ってローン執行となれば45歳になろう。そうすると、仮に35年ローンだとして返済終了時で80歳。これだけ年金不安が叫ばれているなかで、その時に月々10万円の支払いをするのは現実的ではない。退職金で一括返済、繰上げ返済の活用。わけ知り顔で色々言う人は多い。
しかし、所詮「計画なんて狂うもの」である。子供が私立に行けば、予定していた繰上げ返済なんて絵に描いた餅になる。今予測できる範囲で、できるだけ保守的に。「無理なく買える物件しか買わない。それが中古になる可能性もある。」と奥さんにあらかじめ断った。家を買うことで何かを我慢するのは違う。家を買って幸福になりこそすれ、家を買って金に困りたくはない。
まず、いくらなら無理なく返せるか。より詳しく言えば、いくらなら無理なく買える物件価格を考える試算を行った。そのために、現有戦力たる資産とキャッシュフローを洗い直す必要があった。

(大まかな家計状況。一部曖昧に書いている部分があります)
家族構成:夫婦共働き 私45歳、奥さん45歳
年収:二人あわせて1400〜1500万円レベル
貯蓄額:住宅資金として活用できる金額700万円
※子供2人の教育資金などは除外して考えられる(一定程度の金融資産+結構な額の学資保険を10歳満期で加入済み)
月々の家賃支払い:11万円弱
月々の貯蓄額:(秘匿。月々一定額は行なっている)
※賞与は、夫婦で少しずつ買い物をする。それ以外は大半を貯蓄している
※家賃の支払いをきついと思ったことはない。プラス2〜3万円で車庫と車の維持管理費用を追加したとしても問題ないと考えている。

このような家計状況のもと、物件価格を検討するにあたって、以下のような前提を設けた。

試算における大まかな前提

  1. どんな住宅ローンを選ぶかはとりあえず度外視する

  2. 無理なく返済&買える物件価格の目安を求めることに着目する

  3. 物件価格変動や資産価値なども度外視。終のすみかとして考える

試算のために用いたのは、単純なスーモのアプリである。返済期間や金額、さまざまなパラメータを直感的に設定できるため、おおざっぱなイメージを掴むのには重宝する。

得られた結果は以下のような内容であった。

金利1.7%全期間固定 25年 12.3万円 物件価格3500万円
金利1.7%全期間固定 30年 12万円  物件価格3880万円
金利1.7%全期間固定 35年 12万円  物件価格4290万円

https://suumo.jp/sp/apps/loansimulator/index.html

あくまで目安を掴むための簡易な計算だ。わかりやすく、保守的に考えるため全期間固定金利を適用したと考え、月々の返済金額を同程度に調整。返済期間を変えることで、いったいいくらの物件購入が妥当なラインかをさぐった。
45歳でローンをはじめて25年で70歳で3500万円、75歳完済で3880万円。頭金を入れることや、初期に繰上げ返済を活用することで、ギリギリのラインはこの程度だと考えた。
より具体的に話が進んだ場合、住宅資金として考慮した700万円は、頭金として使うのか、キープしておいて住宅ローン控除が終わった後に大きく繰上げ返済に当てるか。具体的な算段は別途考える必要がある。

果たして3500万円で買える家とは?

もっとも、予算のラインは決定したものの果たしてその金額で住宅が買えるのか?この点を不動産情報サイトなどで収集する必要があった。探し始めたのは2022年12月。東京を中心としたマンション価格高騰の波が、関西でも感じられるようになった時期である。
詳細は伏せるが、私が住むエリアは大阪府かの郊外だ。奥さんの実家に近く、子供たちへのサポートも期待できることから子供が小学校に進学する前に移り住んできた。土地柄が良いとは言い難いが、住みづらくはない。都心部まで電車で10分ちょっと。便利だ。
2022年当時、このエリアの物件相場は概ね次のような価格であった。

新築マンション:無し このエリアは戸建てがメイン
 
中古マンション:70㎡〜 3000万円弱から
※物件数が極端に少なく、参考になるような価格ではない
 
建売住宅:2800万円〜3200万円
※付近の建売は大体土地25〜30坪。3LDK 駐車スペース付き
 
建て替えが必要な一戸建て(土地30坪前後):1000〜3000万円
※実質的には土地代。町名により変動が大きい
 
土地:20〜30坪、町名や形状など個別性が強いので参考値が取りづらいものの1500万円弱で購入可能なものもある

首都圏近郊と異なり、大阪府下は市外になると一気に戸建て中心の世界になる。そもそもマンションが少ないのだ。首都圏は物件価格の上昇が顕著だが、関西は「郊外についていえば」購入を検討できるレンジにあった。大雑把な試算を通じて、購入に現実感を持てるようになってきた。「イケるやん」心の中で小さくガッツポーツ。具体的な家探しスタートである。


振り返ってみると、私が家を買ったのは色々な意味で「ギリギリのタイミング」だったと思う。私が購入を考えた時から、関西でも物件価格の上昇は止まらず、建築費用や建材、住宅設備の値上げも続いている。
土地は市況があるけれども、建築コストは確実に上がっていく。そうすると、「なんとなく土地と建物セット」という価格設定が一般的なマンションと戸建て(建売や建築条件付きが多いため、マンションとある程度同列に考えられる)では、土地だけを取り出した価格も曖昧になり、その結果「上昇基調の建築コストにならってなんとなく上げられる」(大手不動産会社社員)という悪循環。結果的に、物件価格は下がり難い状況になっていく。
実際、現時点での物件価格を検索すると、私の住むエリアでは、20〜30坪で土地価格だけで2000万円弱。建築費用で2000万円と、4000万円オーバーの値付けがゴロゴロしている。個々人で状況は異なろうが、家を買おうと考えていてローンを無理なく組めるのなら、決断は早い方がいいかもしれないというのが私の所感だ。

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