45歳、中流家庭。それでも家を買う(1)
「申し訳ないですが、お母さんに貸せるお部屋はありません」
押しても引いてもダメです。無表情を決め込む不動産屋の顔にはそう書いてある。こういう表情をする人は、経験上何を言ってもダメだ。73歳の母親が単独で家を借りようとしているのだ。厳しいことはある程度予想していた。不動産屋は、おそらく、私のような相談を何度も経験してきたのだろう。
そして、その度に断ってきた。行き着いた先が、すべてを跳ね返す無表情なのだ。
「わかりました」とだけ言い残して、店を後にしようとした。
「お力になり