成功には失敗が「必須」である。【失敗の科学】
誰もが「失敗」せず「成功」をしたい。それでも「失敗」は誰でもしてしまう。どうすれば「成功」できるのだろうか。
本書は、数多くの業界での「失敗」を例に挙げ、どうすれば「失敗」から学べるのか、ということを様々な観点から解き明かす。
失敗とは何か
この本では、飛行機業界と医療業界が対比関係となるものとして紹介されている。
よく言われることだが、「飛行機」は安全性という点でとても成功している。飛行機事故はよくニュースなどを騒がせているが、その印象とは裏腹に、そのほかの乗り物と比べて極めて安全性が高い。
その要因の一つとして、「失敗」に関する情報が適切に業界全体に共有されることである、と本書は説く。ある飛行機事故が発生した場合、それがどんな些末なものであったとしても適切に共有・評価されることにより、より安全にするためにはどうすればよいかを皆で考えることができる。このような活動の積み重ねにより、今日、我々はとても安心して飛行機に乗ることができるのである。
逆に、アメリカだけを見ても年間多くの人が「医療ミス」により亡くなっている。しかも、失敗の内容は共有されるどころか、隠される方向になる。失敗は反省されることなく、闇に葬られる。そのために似たようなミスが頻発することとなってしまう。
ミスをミスと認める事は、特に能力が高いと思われる(と自覚している)人ほど難しい。しかしミスをミスと認めなければ、またそれが適切に共有されなければ、同じようなミスを何度も繰り返すことになってしまう。この本では繰り返し、いろんな例を提示されながら、それが示されている。
失敗を失敗として認める。そこから教訓を得る。そのために、飛行機業界では以下のことを重要視している。
失敗を個人の責任としないこと
あらゆる事故を分析し、その内容を共有すること
それでも「失敗したくない」場合にはどうするか
ポストトーテムという考え方がある。直訳すると「検死」だが、例えばあるプロジェクトで何か問題が発生した。その対応が終わった後にその時何が起きたか、どういう対応をすべきだったかをメンバーで話し合う行為を指す。
この本では、さらにそれを発展させて、「プレモーテム」を推奨する。つまり何か問題が発生する前に起こりそうな問題をあらかじめ考え、それに対する対策を皆で考えておくということである。そうすることにより誰かを非難するという行為がなくなり、心理的負荷なくフラットにあらゆる対策を考えておける。
ミスを恐れるならば、ミスが発生する前に対策を検討すると言うのが1つの有効な考え方であると著者は主張する。