【和訳】著名人の事件報道におけるメディアの行動:SUGAの電動スクーター飲酒運転事件の事例研究【本文】
メディアの報道がSUGAに関するオンライン上の議論をどのように形作ったか
SUGAの件に関する報道を追い、メディアの影響について分析した記事が、海外ARMYsから発信されました。
非常に面白い記事だったので、和訳してご紹介します。快諾してくださったポスト元のARMY(@etherealindigoさん)に感謝します!
興味を持たれた方は、是非原文とデータをご覧ください。正直、読むのが辛い記事もあったでしょうに、ここまでまとめ上げられた皆さんの愛と献身には胸を打たれずにいられません。ありがとうございました。
元ツイートとデータ
この記事は、以下のPDFを和訳したものです。
以下は研究データを可視化したダッシュボードです。補足記事を作成しています。
訳者による内容要約
和訳についての注意書き
申し訳ないですが、素人仕事なので品質保証はしかねます💦
引用する時は、この記事へのリンクを貼っていただければと思います。
読みづらさ回避のため、適宜改行を追加しています。
わかりにくい言葉には「訳者補足」を足しています。一部用語は、訳出に際して日本語に置き換えました。
記事へのリンクを、このページの下部につけています。
著名人の事件報道におけるメディアの行動:SUGAの電動スクーター飲酒運転事件の事例研究
注: この研究はBig Hit Music、BTS、ARMYの見解や立場を代表するものではありません
要約
本論文は、BTSのメンバーであるSUGAの電動スクーター飲酒運転事件をめぐるメディアの行動を検証し、報道量、論調、誤報、様々なメディア機関の役割を分析します。
メディアの傾向を総合的に分析して得られた情報を活用し、本論文は報道と世論の反応の変化を探ります。
誤報、憶測に基づく報道、地理的な報道分布に関する主要な指標を通じて、メディア報道が著名人を巡る文化と人々の考え方に、どのような影響を与えるかを理解しようとするものです。
はじめに
メディアは社会の最も重要な柱の一つです。人々、政府、法律の間の溝を埋める役割を果たしています。
メディアの役割には、正しい情報の提供、誤った信念の払拭、不正確または時代遅れの情報の修正が含まれ、世界の政治を変える力を持つ世論の形成を助けます。
適切に使用されれば、メディアのみで国や時には個人の未来を形作ることができます。この力と責任が悪用されると、個人の人格や時にはその人自身が消されてしまう可能性にも繋がります。
本論文では、韓国メディアが示したこの責任に焦点を当てたいと思います。BTSメンバーSUGAの飲酒運転事件は、メディアの報道が問題をエスカレートさせ、結論の出ていない、あるいは虚偽の情報をめぐってメディアの熱狂を生み出す一方で、より重要な問題が過小報道されたり無視されたりする様子を示す典型的な例です。
データの前提
本論文は、公開されている情報サイト(Google News)から集めたデータを使っています。
これらの情報はすべて、一般公開されているダッシュボード [1] にまとめられています。データは日付範囲フィルターを使用したキーワードの組み合わせ検索によって収集されています。記事内容の詳細な分析は、入手可能な大量の記事からランダムに選んだサンプルを使って行われています。
メディアの行動分析
BTSのSUGAに関する事件は広く注目を集め、韓国メディアと国際メディアの様々な報道機関から271,525以上の記事が発表されました。
当初、SUGAが高速で飲酒運転(DUI)事件に関与したという主張に焦点が当てられ、彼の行動、法的結果、BTSメンバーとしての評判への影響について様々な憶測が飛び交いました。
実際には、彼はかなり遅い速度でPM車両を運転しており、終始安定していました。事故自体を軽視するわけではありませんが、確かにSUGAは間違いを犯し、飲酒後にPM車両に乗るべきではありませんでした。彼は謝罪し、自分の過ちから学びました。
私たちは、彼が自分の行動を静かに反省する中で、寛容さを示すべきだと考えています。ファンダムとして、私たちは彼が自分の過ちを認めたことを支持し、二度と繰り返さないと信じています。
しかし、膨大な報道量が事件の重要性を誇張しました。
ストーリーが次第に作られ、歪められ、変えられていき、一部のメディアがそれを支配しました。大多数の記事が憶測的な性質を持ち、それがその後のすべての記事によってコピーされ、再利用されたことで、大量の情報が生み出されました。
このような場合、一般の人々は何が正しく何が間違っているのかについて全く分からなくなります。
メディアはこの事件で信頼性を失いましたが、問題は既に起こった被害についてです。一般の人々が知っている誤情報についてはどうでしょうか。
最後に、ディープフェイクや未成年者が関与する、より深刻な犯罪が、国内メディアが報じる前に国際メディアに達するほど強い抗議があったにもかかわらず、一般に報じられなかったのに、誰がこの人物に強制された公開裁判の責任を取るのでしょうか。
メディアの行動タイムライン
メディア機関はまず事件を報道し始め、次に憶測を加え始め、それが否定されると編集し続けました。
最終的に彼らは自ら正義の執行者の役割を担い、露骨に脅迫を公表し、アイドルに行動を求めるようになり、自らの道徳的立場を失いました。
発表された記事の膨大な量
初めの20日間は毎日5000以上の記事が発表され、メディアが最も忙しかった日にはほぼ30000に達しました。一部のメディア機関や記者は毎日100以上の記事を発表し、そのうちのいくつかは80%近くが同一で、わずかな情報だけが変更されていました。注目すべき点は、この期間に発表された韓国の記事数が、BTSのグラミー受賞に関する記事数を上回っていることです。
これは実際、メディアが事実を報道するよりも情報を扇情的に伝えることを望んでいたことを浮き彫りにしています。
これらの記事の大多数(97.2%)は韓国メディアによって発表され、局所的ではあるものの、この出来事への集中的な注目を反映しています。
報道のピークとなった日付(8月10日、14日、25日)は、SUGAの所属事務所からの公式声明や、事件の争われた事実の公表など、重要な展開と一致しています。
このメディアの熱狂は、パリ・マッチ [2] などの国際メディアから批判を受けており、韓国メディアの不釣り合いで扇情的な報道を非難しています。
これらの批評家たちは、衝撃的な写真や公開謝罪を捕らえることへの執着が、より重要な問題から注意をそらし、世論、ファン、ジャーナリストの間の緊張を高めていると強調しています。
メディア機関とタブロイド紙の積極的な活動
JTBC、텐아시아(TenAsia)、동아일보(東亜日報)、연합뉴스(聯合ニュース)、엑스포츠뉴스(Xsportニュース)、톱스타뉴스(トップスターニュース)などの主要メディア機関が報道を主導し、それぞれが数十の記事を発表しました。これらのメディア機関が最も活発で、世論を形成し、確認された主張と憶測的な主張の両方を頻繁に報道しました。
さらに、ほとんどの韓国メディア機関は、単一の誤った情報源に依存し、それが様々な出版物に広がりました。どのメディア機関も独自の調査を行わず、代わりに利用可能な情報源から情報を集め、最初に公開し、扇情的な見出しで注目を集めようとしたようです。これは、メディア機関が最初のスクープや注目の見出しを競い合う、セレブリティ報道の競争的な性質を浮き彫りにしています。
Pinkvilla、Koreaboo、Pannchoaなどの積極的なタブロイド紙も、憶測的で誇張された報道の顕著な貢献者でした。これらの媒体は、読者を引き付ける必要性に駆られて、しばしば未確認の主張や誤解を招く見出しを公開し、誤情報を増幅させ、世間の認識を否定的な方向に形成しました。
キーワードの出現
キーワード分析では、韓国メディアと国際メディアの間に明確な対比が見られました。
韓国の報道機関は「슈가(訳注:シュガ)」や「Min Yoongi」などの用語を頻繁に使用し、より個人的で憶測的な調子を採用していたのに対し、国際的な報道機関は比較的中立的な立場を維持していました。
これは、セレブリティ報道の性質を形成する上で文化的文脈が果たす役割を浮き彫りにしています。
さらに、キーワード検索により、多くの憶測が記事のタイトルに積極的に追加されていたことが明らかになり、記事を開かない人々にも同じ誤情報が伝わっていたことがわかりました。
全記事の約97%が韓国のメディア機関からのものであり、彼らが誤情報の主要な発信源であったことを示しています。
全体的な記事の論調と大量の憶測
記事の感情分析によると、63.6%の記事が憶測的な性質を持ち、34.7%が中立的で、確認された事実に基づいたものはごくわずかでした。このパターンは、メディアが事実に基づく報道よりも憶測を優先する傾向を示しており、セレブリティのスキャンダル報道を支配する扇情主義に寄与しています。
誤情報の拡散は広範囲に及び、SUGAの車両の種類、血中アルコール濃度(BAC)、そして彼の所属事務所が虚偽の発表をしたとする未確認の情報が、事件後の最初の1週間でピークに達しました。
8月10日に放送された偽の監視カメラ映像がこの誤情報の急増に寄与し、8月15日に訂正が行われるまで減少しませんでした。不正確な情報の急速な流布は、混乱と誤解を助長するメディアの役割を示しています。
正しい情報を配信せず
メディアには、スクーターが誤って分類されて販売されている実態を報道し、将来的にこのような問題の発生を防ぐ機会が多くありました。
また、一般の人々やファンによって容易に特定された販売者に対しても、何の措置も取られませんでした。
注目すべき出来事
事例1 - アンチの行動をファンの行動として報道し続ける
他のグループのアンチやBTSグループのアンチを含む人々が集まり、SUGAにBTSを離れるよう求めるキャンペーンを開始し、BIGHITとSUGAに対する運動を始めました。このグループは、SUGAの謝罪を受け入れた支持者と比較すると少数派でした。
キャンペーン開始から数日後、これらの人々が実際にはグループのアンチや他のグループのファンであることが明らかになり、特に全体を仕組んだリーダーは別のグループの熱心なファンでした [3] 。
この一連の出来事は、最初から現在に至るまで、メディアやタブロイド紙によってBTSのファンが行っていることとして報道されており、これはメディアによる誤った報道でした。ARMYは繰り返し、7人全員を支持するという声明を出していますが、支持に関する報道は、アンチよる抗議に関する報道と比較して少数にとどまっています。
アンチの行動とメディアの責任の欠如は非常に深刻で、このアンチグループの一員である教師たちが教えている学校の子供たちに、この事件に関する宿題が出されるほどでした。彼らは、メディアが積極的に広めている誤情報をさらに拡散しました [4] 。
事例2 都市交通局長
PMを路上から撤去する議論の最中、都市交通局長にSUGAが使用していたとされる車両と全く同じ車両の画像が示されました [5] 。彼はその車両を分類することができず、これはルールやその変更についての理解にズレがあることを、明確に示しています。
同じ議論の中で、尹議員は「市民も、各移動手段の異なる運行規定を認識していない」と指摘し、「これはソウル市が十分な教育と広報を行ってこなかった証拠だ」と述べました。
この事件が起きた時、虚偽の主張や監視カメラ映像を流すことに忙しかったメディア機関にとって、これは規則や規制に関する啓発のためにブロードキャストの一部を割いたり、出版物の紙面を提供する絶好の機会でした。しかし、メディアはこの機会を大きく逃しました。
事例3 継続的なメディアのハラスメント
この論争は、倫理的なジャーナリズムと扇情的な報道との間にある大きな隔たりを、はっきりと浮かび上がらせました。SUGAに警察署の外で写真撮影に応じるよう圧力をかけたメディアの行動は、こを象徴しています [6] 。
韓国のジャーナリストたちは、SUGAが応じなければ彼の罪を示すことになるとほのめかし、世間の認識と法的責任を混同させました。
これらのジャーナリストが用いた攻撃的な戦術は、一部の人々によって脅迫に等しいと見なされており、責任あるジャーナリズムの基準を守れなかったことを示しています。
事実に基づいた報道に焦点を当てる代わりに、メディア機関はこの事件を扇情的に報じました。メディアは、PMやその他の類似の動力付き車両の異なる運用規制について、意味のある議論を行い、一般の人々を教育する機会を逃しました。
この問題の報道は、メディアが偏見に基づく憶測的なストーリーを増幅させることを選び、公衆の認識を育む役割を無視したことも浮き彫りにしました。
結論
結論として、BTSのSUGA事件の分析は、メディア機関が結論の出ていない情報を増幅することで論争を作り出すという、懸念すべきパターンを明らかにしています。
膨大な量の記事、偽の映像の使用、憶測的な性質の報道が、適切な事実的根拠を欠いた過大なメディアハントを生み出しました。同時に、ディープフェイク技術や、アイドル業界自体のさらに深刻な事例などの重要な問題が、韓国メディアによって無視されました。
この不釣り合いな焦点は、実質的なジャーナリズムよりもクリックベイトを優先するメディアの姿勢を示しており、微妙な問題を報道する際にはより責任ある、バランスの取れたアプローチが必要であることを印象付けています。
このような状況におけるメディアの役割は、特に偽の情報や憶測的な内容が確認された事実よりも優先される場合、世間の認識に長期的な影響を与える可能性があります。
この事例は、メディアがいかに情報を提供すると同時に誤解を招く可能性があるかということ、そしてそれがしばしばより深刻な社会問題を犠牲にして行われることの、重要な例となっています。
韓国に深く根付いた美しい文化は、すべての人を平等に扱っています。
社会的地位によって特別扱いされるべきではありませんが、有名だからといって不当な扱いを受けてもよいのでしょうか? これは、あからさまな偽善ではないでしょうか?
情報源
[1] Data Dashboard and Visualization for reference in this paper(本論文で参照されるデータダッシュボードとビジュアライゼーション)
[2] Paris Match Article regarding the event and media(イベントとメディアに関するパリ・マッチの記事)
[3] Fans from different groups pretending to be ARMY and starting unrest(ARMYを装って不安を引き起こした他グループのファン)
[4] How deep the roots of mis-info from media and anti fan has reached(メディアとアンチファンによる誤情報の根深さ)
[5] Head of Urban Transportation Office is unable to classify the vehicle type(都市交通局長が車両タイプを分類できなかったこと)
[6] BTS' Suga faces media harassment: South Korean journalists threatened Min Yoongi for photo outside police station; ARMY reacts strongly(BTSのSUGAがメディアのハラスメントに直面: 韓国のジャーナリストが警察署外での写真を要求し、ARMYが強く反発)
用語集
BTS - 21世紀のビルボード「最も偉大なポップスター」に名を連ねる、世界的に有名な韓国のポップグループ。
Suga - BTSのメンバーであるミン・ユンギ。韓国でも有数のラッパー、作詞家、プロデューサー。
ARMY - BTSのファンダム/ファングループの名称。
ランダムサンプリング - 大量のデータ/情報から小さな情報片を無作為に選択してさらなる研究を行うデータサンプリング手法。
パリ・マッチ(Paris Match) - ヨーロッパのメディア機関。
BAC - 血中アルコール濃度。血液サンプルから測定される。「BrAC」は呼気テストによって測定される。
アンチ - 特定のアイドル/グループ/セレブリティに対して悪意や中傷を広める人々の集団。
貢献者
この論文は、以下の個人の貴重な貢献なしには成し得ませんでした。彼らの洞察と献身が本研究の発展に寄与しました。
@onandonand0n, @etherealindigo, @AshBora7, @jinhit_employe,
@luna_thecalico, @outrowings613, @kausarSam, @MatterZones
and @firstlove_ent
注: この論文で表現されている見解は、必ずしも貢献者組織の意見を反映するものではありません。