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【BTS】楽曲作成の裏側とデモ版の魅力


初めて出会った世界:Demo Ver.

BTSで初めて出会ったことはたくさんあるのですが、楽曲関連ですごく面白いと思ったのは、アルバム「Proof」に収録されている「Demo Ver.」の存在でした。

最初は単なるボツ曲かと思っていたのですが、調べてみたらK-POPやBTSの楽曲制作スタイルが大きく影響しており、改めて驚いたことを覚えています。
今回は「Demo Ver.」について、まとめてみたいと思います。レッツゴ!

デモ版って何?

主な楽曲作成の流れ

自分が理解した範囲で書きますと、楽曲作成は以下のような流れで行われることが多いようです。

【楽曲作成の流れの例】
1. アルバム全体のテーマや方向性を決める
2. 楽曲制作を開始する
 ・音楽PDや作曲家がビートやコード進行を作成
3. デモ版を作成する
 ・仮歌を乗せ、基本構成(Verse、Chorus、Bridgeなど)を作る
  →この状態で提供される外部制作曲もある
 ・歌詞やメロディーを、メンバーや作詞家が加える
  →ナムさんがよくガイド入れたと言ってるのはこの辺の作業だろうか
 ・ラップラインがラップパートのリリックやフローを作る
4. 楽曲の選定
 ・複数の作曲家や音楽PDから提供されたデモが競合する
 ・メンバーや制作チーム、所属事務所により、最適なものが選定される
5. 最終仕上げ
 ・レコーディング、アレンジ、ミキシングを経て完成版が制作される

3で複数のデモ版が生まれており、4でコンペ状態になる

バンタンは「BE」でアルバム制作過程を見せてくれたり、アルバムレビューで裏話を聞かせてくれたりしており、その内容を総合するとこんな感じじゃないかと思います。

BTSの場合、メンバーがほとんどの楽曲制作に超関与しており、落ちた or 採用されたという流れを全員が経験しているようです。
著作権登録数的に打率高そうなナムさんも、「グクが書いたやつの方が自分のより良かった」みたいな話をしていることがあり、曲の作成や選考の過程を通じて、音楽仲間として互いを評価しあっている様子が窺えます。

ソロやミクテ用に作っていた曲がアルバムに採用された、たまたま歌ってみたフレーズが気に入られ採用された、といったケースもあり、流れは多様です。
Proofのインタビューではジミンちゃんが『Friends』ができた過程を語ってくれているので、もし未読の方がおられたら是非どうぞ!

デモ版という新しい世界

自分が経験してきた世界では、楽曲を作る過程は、消費者からはあまり見えませんでした。

寄ってたかって楽曲を作り、いいとこどりで完成させるようなスタイルも、初めて見ました。
ミキシングや編曲以外で他人が手を出すというと、死後に遺稿が見つかって誰かが完成させたとか、そういうケースくらいしか知らなかったので、この合理性には驚きました。

実際にDemo版を聞くと、ベースは収録版と同じなんだけど乗ってる音やラップが違うとか、途中からガラッと別の曲になってるとか、パターンが色々あって、柔軟な楽曲制作が行われている模様。面白いですね!

しかも、Demo版と言っても歌詞も音も入ってるし、完成度が高いです。
著作権情報を見ていると、例えばジン君や音楽PDのADORAさんは「Epiphany (Jin Demo Ver.)」だけ参加してて採用版は登録なし、といったケースもあり、このコンペがまだ経験の浅いメンバーや音楽PDにとって修行の場になってる様子が読み取れます。一石二鳥……!

「Proof」は玉手箱やな……!(Aが作詞、Cが作曲、A/Cは作詞作曲)

では、実際のDemo Ver.を見てみましょう。まだテテセンイルを引きずっているので、『Spring Day (V Demo Ver.)』でGO!

テテとナムさんの『Spring Day』

テテのデモ版の場合、初出はここっぽいです。
2022/6/10リリースの「Proof」に収録されるまで、5年3ヶ月近くかかってます。よく残ってましたね……!

「GUIDE11」とあるということは、11回目のガイドリトライだったのでしょうか。
クレジットによるとコーラスはグクなので、上の動画の最後にちらっと出てくる手は彼じゃないかと言われてました。世界のメインボーカルを仮入れに使えるBTSの贅沢さに悶絶します……!( ゚Д゚)ウラヤマ!

ちなみに、この作成過程については、Weverse Magazineで詳しく語られていました。

「Spring Day」を聴いてみると、今のVさんのスタイルとちがうようで似ています。最近表現した音楽よりもっとポップス的で雰囲気も明るいですが、それでいてVさんの曲から感じられる切なさが一緒に存在しています。
V:その曲においては、そういうメロディしか出てきませんでした。なぜなら、「Spring Day」というテーマが与えられた時、僕が考えた春の日は、冷たく寂しい感情を乗り越えた後、再び空が晴れてきたような?何だかまた僕たちに良い日がやってきそうな感じだったんです。それで、僕が考えたメロディよりもっと明るかったらいいなと思ったら、そういうふうにでき上がりました。
その時からグループの曲を作る時は、トラックに忠実な解釈をしたわけでもありますね。
V:はい。でも、僕はそう思ったんですが、RMさんが書いたメロディは、僕が考えたもののその前のテーマだったんです。空が晴れる前。それとも、まだ冬の日のイメージ。そんなムードだったので、僕が考えていたのとは完全に逆で、「あれ? こんなふうにも春の日って捉えられるんだ」と思いました。僕が考えた「春の日」からRMさんはもう一歩踏み出して考えていたんです。僕に衝撃を与えた曲でしたね(笑)。

BTS『Proof』発表インタビュー(V「自由な僕を収められたらと思います」より

歌詞比較@ナムさんの『Spring Day』

前半は採用版もデモ版も同じなので、雪国列車や舞う雪片に思いを託し、届かないところにいる誰かを恋しさのあまり恨みそうにすらなる勢いで求めています。

サビからの展開が違うのですが、採用版の方はまだ冬が深く春は遠い印象です。確かに、「空が晴れる前。それとも、まだ冬の日のイメージ」という感じ。

雪の花が散っていく
また少しずつ遠ざかっていく
会いたい
会いたい
どれだけ待てばいいの
あとどれだけの夜を明かせば
君に会えるのだろう
出会えるのだろう
凍える冬の終わりを過ぎて
再び春が訪れるまで
花が咲くまで
そこにもう少し留まっていて
留まっていて

採用版(ナムさん版)のサビ和訳

四季は巡るもの。「春の日」は必ずそこにある、固い蕾もいつかは咲き誇る。
でもそれはまだ遠い先のこと。焦がれる思いで冬空を見上げるような切なさが、ナムさん版の歌詞からは伝わってきます。

歌詞比較@テテの『Spring Day』

テテの歌詞は「思い出」「記憶」がモチーフになっており、恋しさや懐かしさの感情を愛しく思う彼らしいなと思いました。
ナムさんにとって「春の日」が今はまだ手が届かない憧憬であるなら、テテにとっての「春の日」はもっと近くにあるようです。

あの春の日を覚えていて
過ぎ去っても忘れないで、oh baby
もっと素敵な夢を思い出して
諦めないで、oh baby, baby
I'm fallin' you, ooh-ooh-ooh-ooh
I'm fallin' you, ooh-ooh-ooh-ooh
I'm fallin' you, ooh-ooh-ooh-ooh
多分、永遠に
Baby, for your love
Baby, for your love

テテ版のサビ和訳

正直、初めて曲を聴いた時は度肝を抜かれました。

テテ版は、サビで一気に距離を詰め、いきなりグイと聴衆を引き寄せて膝の上に座らせ「好きだよ、忘れないで」と囁きかけてくる感がありますね!
遠ざかる背中を見送っていたのに、気が付いたら「君と僕の世界」へ連れ込まれているという大どんでん返し。えっちょっと待って、私たちそんな関係だった!?( ゚Д゚)ウソ!

すみません、あまりの落差に興奮しました!
いや、テテに「oh baby」って言われて冷静でいられるのは死体だけですよ。あっまだ興奮が(/ω\)

テテのダイレクトな懐への飛び込み方には、以前書いた記事を思い出しました。ボーカルラインの歌詞は、基本視点が「君と僕」だなあと思います。距離が近い。

また歌詞の方向性で言うと、HIPHOP色が強いラップラインは憤りを歌うが、別ジャンルへ行くことが多いボーカルラインは基本歌わない、という違いがはっきりしています。
それが影響するのか、前者の歌詞には「社会と僕たち」へのフォーカスが紛れ込むのですが、後者は「君と僕」視点が非常に強い、という傾向も感じられます。

「BTS楽曲のルーツとソロ曲に見る個性」より

その他Demo Ver.紹介

この2曲、完成版と全く違うのに、ベースやフレーズは完成版と同じなので、聞いててビックリします。

『DNA』の口笛は、ホビがOn the Streetで吹いたらこうなっちゃうんだ!って感心しましたし、ジン君の『Epiphany』はすっかり引き込まれてたら最後の「O-o-o-oh」で我に返って、おまえ……おまえじゃないか!って驚愕しました。何を言っているのか。

BTS - DNA (J-hope Demo Version)

ARMYたちが「こんな作業をしていたの?」と思えるぐらいのものを探していたところ、「DNA」があったんです。僕も「何だろう?」と思いながら聴いてみたんですが、わあ〜(笑)、自分が「DNA」をこんなふうに作業していたんだなと思いました。

僕たちの作業環境自体が、各自作業したものの中から良いものを使うやり方なので、まず曲全体を作ってみたんです。僕にできるスタイルで「DNA」を作ってみたんですが、気に入らなくて、しばらく僕のハードディスクに入ったままでした。今回また取り出して聴くことになったんですが、自分だけのスタイルがあって、本当にありのままの姿を見せているような感じがしました。

BTS『Proof』発表インタビュー(J-HOPE「自分自身でまた答えを見つけるでしょうから」)より

Epiphany (Jin Demo Ver)

音楽制作の作業をする時もそうですし、何かをする時、計画的にするよりは、いつも気持ちが乗った時にするような気がします。
「Epiphany (Jin Demo Ver.)」も、気持ちが乗った時に作った曲でしょうか。
そうです。あの時も僕の「気持ちが乗った時」が進行中で、約1週間をかけたバージョンなんですが、思ったより難しかったです。ビート自体がメロディを書くのがすごく難しくて。作曲をしていて、サビを一番最初に書いたんですが、『Proof』に最終的に収録されたバージョンも聴いてみたら悪くなかったです(笑)。

BTS『Proof』発表インタビュー(JIN「僕はARMYの幸せのおかげで生きている人」)より

その他デモ版はこちらの再生リストからどうぞ。
『Young Forever RM Demo Version』は色んな意味でビックリしました!

まとめ

普段、間接的にしか知ることのできない作曲行程を、時々覗かせてくれるバンタン。

私は音楽も、その楽屋裏も大好きなので、デモ版から見える各人の多様性や個性をとても楽しんでいます。
彼らが積極的に楽曲制作に関与し、それぞれ異なる解釈や感情表現によって収録版とは違う世界を作ろうとしていたことが推察され、非常に興味深いですね!

できればまた「Demo Ver.」を収録してくれないかなあと期待しておきます。まだまだお宝が眠っていそう( *´艸`)


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音色
コーヒー一杯奢ってください( *´艸`)