生きがい、人生の目的;いにしえの神学
「生きがい」の本質をお話します
以前もコメントにも書きましたが、『夜と霧』のV.フランクルが、purpose in life testを提唱しました。アウシュビッツ収容所経験で、「人生の目的」を持つ人は苦悩にも耐えて生き抜くことができた事実を下に、精神分析医としてその重要性を示しました。茂木先生の今回のお話もその路線にあると思います。
近接目的と究極目的との理解についても、古代・中世の最近接因causa proximaと最高遠因causa maxima remotaとの理解を以前に記した通りです。茂木先生のお話に沿った、現実の一例を挙げてみます。高校生の進路指導での話ですが、東大合格に目的を定めてそれしか見えていないと合格した途端、目的を失って本来の社会貢献への研鑽ができない。それに対して大学のネームバリューを気にせず、将来の社会貢献の為の問題意識を持つように中高迄を過ごした者は、大学院や学会で伸びる。結果、博士課程は東大ということも、よくある。問題意識は、家族の病死で医学を志すであるとか、弱者の立場に共感して福祉をめざすとか、宇宙の原理にとことん向かって理学研究をするとか、様々な動機でもつようになりますが、それこそ最近接因から近接目的を定め、それを拡張すると、最高因と究極目的ultimus finisを垣間見るようになる。その流れがビッグ・ヒストリーであり、その流れに乗っているという実感が、「生きがい」であり「人生の目的」にあるということだと思います。
そのビッグ・ヒストリーですが、それを池上先生と茂木先生は示そうとされているのではないでしょうか?人間の社会様態が集合集積知を形成してきている様態を示しており、そのコミュニケーション・ネットワークにAIも相互エージェントとして加えられてきた。こうしてグローバルブレインと呼ばれる情報プールと情報処理能力を有する普遍的(単一)知性体が想定される。想像では、このグローバルブレインを旧皮質にして、地球衛星軌道上に量子コンピュータ‐のネットワークを構築し新皮質にする。太陽が白色矮星化しても、その新皮質が太陽系を離れて宇宙に飛び出し、宇宙全土の情報を集合集積する。やがて、宇宙自体の自己認識を完成させ、ノエシス・ノエセオス(思惟の思惟)に戻り、新しい宇宙のエネルギーの情報化が始まる・・・・・。こんなところでしょうか?いにしえの神学ですが・・。