AI研究・開発に抵触する思考法とは?
広島AI声明〜半年経って出てきた声明でAIに対する指針が示された? - YouTube
松田先生、誤解を生じさせてしまって、すみません。先生の仰るキリスト教についての一般的理解は全く正しいと思います。よく例に出される象徴は、システィナ礼拝堂の天井画『アダムの創造』ですが、神の指とアダムの指との接触で「生命の息(エネルゲイア)」が吹き込まれる方向の解釈です。松田先生の『ザ・クリエーター』解釈の根本が、まさにその方向の解釈の対立であるというのは、全く正しいと思います。
私が西垣先生の『AI原論』に対して以来しつこく主張しているのは、一般的なキリスト教理解自体が、遡源すると正しいとは言えないということです。
『旧約』では、遊牧部族から民族統一するために先祖崇拝の各族長の神から、唯一神ヤーウェ(名前に特定部族のバイアスがかからない「在る者」)を据えました。
『新約』では、「神」と呼ぶより「アッバ(幼児語の父)」と呼び、社会的差別や争いを超克するため遺恨をすべて赦し平和と一致を築き、(ベーシックインカムに通じる)労働対価でなく生活保障の1日1デナリオンを主張しました。
「宗教」としての主張は以上が中心のはずです。これにより元々の人類の「神概念」即ち共同体内発生の「族長」「君主」「王」である「神」と対立し、他の民族・国の神との争いとなったり、政治的反乱者とみなされ十字架に架けられたりしたわけです。
こうした有史以後の宗教の源流に、歴史の流れの中で混交し結びついたものが、有史以前から自然発生で出てきた自然に対する思弁です。人間を含めた自然現象の原理、力、エネルギー、それを何万年も人類は環境の内に観て考察してきています。先の「宗教」よりもずっと古く根源的なものです。それは別に、東洋・西洋の区別があるものとは言えません。それ以前から人類の精神の深層に発生してきています。
メソポタミア、エジプト、ギリシア、中国、インド・・・、各地に、共通して古代思想で散見されます。K.ヤスパースはそれが有史化された時点を指して「枢軸時代」としましたが、その内容はもっと以前に遡るわけです。 その表象の極みが「ノエシス・ノエセオス思惟の思惟」であり、後の『ヨハネ福音』(A.D.100頃)のロゴス神学に展開するような思考法であるといえると思います(因みに『ヨハネ福音』は日本人に一番人気のある福音書であり、ロゴス神学もよく研究され、広がっています。ただ共観福音書ではありません)。
また長くなってすみません。AI研究の底流にあるのは、まさにこの人類に共通の自然原理に対する思考法であると、私は言っているのです!
松田先生も日本人は八百万の・・・、と仰いましたが、全く同意です!そこで観ているのは自然現象の根源的力です。共同体内発生の「神概念」を「共同体支配」と「自然現象支配」との「支配・制御」で混交した歴史が、現在も続いている『バカの壁』だと思います。
ただ「神学」もその表現が正しくないことを前提にしなければならないのは事実です。神学が「キリスト教神学」以前からの神学で扱ってきたのは、共同体内発生の神概念ではなく、自然の原理でありそこに「思惟の思惟」が究極の動的作用が推理され、同時に「イデア」が究極の静的情報として推論されたのでした。従ってtheoの後がryかlogyかの違いであることを主張すべきでした。言ってみれば、宗教としての正しいキリスト教理解は宗教学でなされるべきで、神学という日本語が正しくなく、theoryをロゴスで物語るtheologyであるというべきでした。
AI使用の規範についてのコメントもさせてください。
これも以前に書いたことですが、人間は身体機能の拡張・強化を進展させてきました。実際には人間だけでなく、チンパンジーやカラスの道具使用もあり、多くの動物の巣作りにもそれは観られるようです。ともかく身体機能を延長したきた現在、車・船・航空機・ロケットという運動機能強化や、顕微鏡・望遠鏡・ソナー・レーダー・fMRI等の感覚認識機能強化、ハンマー・刃物・工作機械・建設機械といった手指の製作機能強化が図られてきました。
そうした個体身体機能強化に並行して社会共同体機能も展開させ、治水・灌漑・建築等の工事、縄張争いに始まる戦争の軍事、等々では個体身体数増強という手法も図られてきました。
以上の様な人間の身体機能拡張・強化の進展の一つに、「脳」のそれも当然、加えられます。それは上の諸身体機能の延長・強化と連動するものであり、「認識と制御」の作用、「記憶と伝達」の機能を有します。そして上の諸機能が拡張・強化されてた過程と同様に、人工化されてきました。特に「制御」は共同体機能で「伝達」と共に発展したと思われます。「記憶」も記録として人工化され洞窟壁画に始まり文字文化等で、やはり「伝達」と共進化したと思います。いづれにせよ、脳も身体機能拡張・強化の進展の一つとして展開し、それ現在のAI人工知能になったといえると思います。
こうしてみるとAI 使用の規範作りも、脳機能の人工拡張・強化に対するものであると言えます。結局、脳の持つ「認識と制御」の作用、「記憶と伝達」の機能を、人工的に拡張・強化する際の留意点の確認になると思います。