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『もの忘れ顛末記 #24』くもり まだ時間はあります

くもりでもそれはそれなりに それぞれの世界の片隅でそれぞれの生き方


【24話  1日6割の別世界 】


 午前中 それなりに調子はいい様子。相方(妻)さんと朝の食事 そのあとのウォーキング  いつものルーティーン。近所の方との談笑  誰が見ても こちらの世界に住んでいる。

こちらの世界に住んでいる。 とは

おじい77歳。  数年かけて人の顔が消えていく最中。そして文字も消えていく。本人一切口にはしないけど  しばらく見ていて気がづきました。

大好きなテレビドラマの時間がゆっくり減っていく。朝 昼 夜1日3度のたのしみが2度になり そして1度へ減っていく。まもなくぴたりと点かなくなって テレビの代わりに壁をにらんでいる毎日。いま 何が見えてるの


文字が消えるというのは  漢字が頭の中から消えていく。  読もうとしても読めない新聞。毎朝 読んでいる新聞が1時間から2時間かかり そのうち3時間へとさらにのび  ピタリと止まりました。


そして今 一番近くにいる相方(妻)さんの記憶が消えはじめ ある日
おじい「 あなた だれ? 」 と 相方さんの顔をのぞき込む。
この一言からはじまりです。 そのあとは順番に家のもの一人ずつ。

最初は1日のうちの何分か  その後は時間がだんだん伸びていく。
顔がわかる時間  それが=こちらの世界

別の世界=顔がわからない時間
この時間は敬語になります。まわりがみんな知らない人になるからなのか

くつろいでおしゃべりしていたら そのうち別の世界へ  目の前にはどんな景色が見えているのか 。一瞬に驚いた目になり おじい自身が不思議そう  全員知らない人になるのですからそれは仕方がないよね。

いまでは 6対4。 離れた実家の出来事です。

                        25話 へ




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