How can I change this situation?
最近はどうやって本の企画を通していくのか,そしてやっと出した本をどうやって売るのかに悩んでいます.その作業の中で半分意識的に,半分無意識で,ぼくは2つのことに抗(あらが)っています.
ひとつは,現在の出版の流れです.これは出版ジャンルを問いません.大概は,編集者は良い著者か,この著者で新しい企画を通すのかを判断するのに売り上げしか見ません.それも現実には売り上げではなく,紀伊國屋書店の売り上げを見るPublineというサイトの数字しか見ません.他の書店で売れようと,Amazonのようなネット書店で売れようと無視して,その数字に10とか適当な数字をかけて部数を算出して,それが著者の実力として企画が通る判断材料になります.
だから,編集者とやりとりをして,まだ誰も試みていない切り口の企画を話したところで,「のれんに腕押し」のような感じでしかありません.反応のなさにがっかりします.まだ,「それはだめだ」「読者はたぶん面白いとは感じない」と云われたほうがいいと思ったりさえします.
で,この流れになんとか対抗できるのはないか,と考えています.
対抗策として思いつきそうなのは,ネットでファンを増やしていくことです.でも,正直ここに書いていながらいうのもどうかと思うのですが,ぼくはこれにも少し抗いたいな,と思っています.ネットは上記の売り上げしか見ない編集者とは別の闇を抱えていて,いちおう最終的に通常の出版をするならば,その闇を無視することができないからです.
ネットの場合,like!(いいね!)を過剰に追うと,読み手に媚びることになり,それは表現の可能性を狭(せば)めてしまうかもしれない.そうでなくても,自分のつくるコンテンツに関係ない私的なことがらを述べて,そこを気に入ってもらってというのは正直気持ち悪いし.かと云って,好きなことを云う(書く)のを続けていて,自分に賛成してくれる人ばかりを相手にしていては,思考の幅を狭めてしまうからです.出版するからには,自分と考えが違う人にもまず目を通してもらう,知らない人に読んでもらう,というのが大事だからで,すでにネットでファンを募(つの)って,そこで告知をして買ってもらう,というのはいまをときめくinfluencerの人たちがサロンとかやっているのを見ると今風なのでしょうが,自分には合わないし,かつ自分に向かって「ファンです」と云ってくる人に「ファンはいらない」と「先生」と呼ばれたら,「先生と呼ばれるのは自殺を考えてしまうほど嫌いだから,金輪際自分に寄りつくな」とハッキリ云うのも自分も相手も不快になるだけなので間違いだと思うし.
で,その2つを除くとなかなか企画を通して,さらにそれを売って生計をたてるのなんて,ものすごく難しくなってきます.とりあえず,出してみたらなんとかなるかと思って出したのが,上(↑)のWords for Productionなのですが,まあ,いまのところ売れているという話は聞きませんね.実は,この本,初刷がぜんぶ売れても著者たちには1銭も入りません.音声も自分たちで自腹を切って出して,音声編集をやったので(音声編集をしたのはぼくではありませんが),ハッキリいってマイナスなわけです.でも,まあ,どうしても基本単語に焦点を当てた教材をつくりたかったので出してみました.こちらにお金が入らなくても,少しでも学習者の中に意識が変わる人がでてくればいいかな,と思ったので.
というわけで,いまは突破口をまだ考えている途中です.本当はこういう記事もあまり書きたくないですが,まあ,思考実験として書きました.