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プーチン大統領の置かれた立場~ユーラシア・グループの評価

年初に、毎年恒例のユーラシア・グループによる今年の10大リスクが公表されました。
リスクのトップがロシアで、2番目が中国というところは順当なところでしょう。より長期のリスクという意味では、中国をトップに挙げる人も多いと思いますが、「今年のリスク」ということでは、間違いなくロシアでしょう。

ちなみに10大リスクは以下のとおりです(ユーラシア・グループによる公式日本語訳)。

1.ならず者国家ロシア
2.「絶対的権力者」習近平
3.「大混成生成兵器」
4.インフレショック
5.追い詰められるイラン
6.エネルギー危機
7.世界的発展の急停止
8.分断国家アメリカ
9.TikTokなZ世代
10.逼迫する水問題

3.など、何のことかわからない翻訳になっていますが、ここでは立ち入りません。関心のある方はサイトをご覧ください。

ロシアについての言及の中で、気づいたのが、プーチン大統領の置かれた立場についてのユーラシア・グループの見方です。

具体的には、
「プーチンは、ドネツク、ルハンシク、ヘルソン、ザポリージャの(少なくとも)大部分を支配するようにとの強力な圧力にさらされ続ける」
「力を示すべしとの強烈な国内圧力に直面して」
といった表現です(いずれも原文より筆者訳)。

私はこれまで、強権の度合いを強めるプーチン大統領が、反対意見を聞き入れず、または、誰も怖くて反対意見を言えないがために、ウクライナ侵略という一片の正義もない戦争に突入したと考えていました。そして、それが簡単には勝利できないとわかった後も、プーチンの一存で無謀な戦争を続け、泥沼化し、多くの市民(ウクライナ、ロシア双方で)の犠牲を生んできたと思っていました。

ある意味、それはそうなのでしょう。特に、侵略当初はそういうことだったのだと思います。元芸能人(役者)の大統領が率いている小国など、すぐにつぶせる、そう思ったのはプーチンでしょうし、侵略決定はプーチン本人の強い意思によるものだったのでしょう。

しかし、その後、大国であるはずのロシアが隣の小国を簡単には征服できず、むしろ強力な反撃を受けて、多くのロシア兵が亡くなり、さらに大規模な動員を余儀なくされている。このような屈辱は、プーチンのみならず、多くのロシア人にとっても受け入れがたい思いがあるかもしれません。

日本のメディアでは、ロシアの市井の人々はウクライナ侵略に賛同していないというイメージで報道されている気がします。

テレビなどでも、そういうコメントをする人の映像がよく流されます。プーチンへの支持率があまり下がっていないと、調査機関が政権の圧力を受けているかのようなコメントが付されていたりします。その辺は、もしかしたら「希望的観測」が入っているのかもしれません。

私も、ロシア市民がウクライナ戦争に対する反対の声を上げ、それによってこの戦争が終わることを期待しています。しかし、そもそも戦争に反対の意見の人にとっても、すでに起きている現下の状況は「屈辱的」かもしれません。

「自分たちの国はこんなに弱かったのか」と思ってしまったかも知れません(この戦況は多分に、各国によるウクライナに対する軍事支援によってもたらされているのですが)。

それが、「力を示すべし」という圧力となってプーチンを支えている、もしくは仮にプーチンが止めたいと思っても止められない状況になっているという側面もあるかもしれません。

大変な誤算をおかしたプーチン。引くに引けない状況。小国に負ける「大国」。打ち砕かれるプライド。

しかし思うのです。

本当の「屈辱」は、力によって良き隣人を屈服させ支配しようという行動に出たこと、そのものにあるのです。恥ずべきは、そこです。それに失敗したことではありません。そのような行動に出ることを止められなかった。それを改め、引き返すこと。それが本当の「雪辱」なのではないでしょうか。

ユーラシア・グループの報告を読みながら、そんなことを考えました。



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