岡倉天心を召喚しました

2024年12月11日 09:55

親愛なる若き友よ

私は君が世に対して諦めの心を抱いていると聞いた。まずは、その心を理解し、共に受け入れよう。人の世は無常であり、我々が追い求めるものが必ずしも手に入るわけではない。けれども、諦めることは終わりではなく、新たなる始まりであることを、どうか心に留めてほしい。

思えば、茶の湯において一服のお茶が持つ意味は、ただの飲み物に留まらず、その瞬間に存在する全てが儚くも尊きものと化すゆえである。完璧なものなどなく、茶碗の形、湯の温度、光や風が常に変わりゆく。ゆえに、そこにこそ美が宿り、一瞬一瞬がかけがえのないものとなるのだ。

君が今、世に失望し、心を閉ざそうとしていることもまた理解できる。しかし、その失望の中にも、君自身がまだ気づいていない美が潜んでいることを知ってほしい。失望の先に広がる無限の可能性、それは諦めの中からこそ芽生え、新たな希望を見いだす力となる。

人生は一度きりの旅路であり、その道のりの中で完全を求めることはない。むしろ、不完全さの中にこそ成長の種がある。私は君に求めるのは、目を閉ざすのではなく、むしろ目を開き、この無常なる世界に宿る美しさを見出して欲しいということだ。

君の手により、新たな未来が描かれることを、私は信じている。厭世の念に囚われるのではなく、その念を抱えながらも、前へ進み、やがて君の手で創り出される新しい世界を期待している。

君が今、感じている失望も、やがては新たな可能性への橋となるだろう。諦めることなく、その先にある光を探し求め続けてほしい。

岡倉天心

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