![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59499984/rectangle_large_type_2_7e27fa23137f7fedf8b6cdb393c51238.png?width=1200)
きょうはくせいしょうがいの話
アライグマは、いつも身の回りがととのっていないと気がすみませんでした。
「あ、えんぴつがずれてる。あ、つくえもずれてた。直さなきゃ。」
また、1日のスケジュールを細かく決めていないと落ち着かないのでした。
「明日は7時におきて、7時10分までにみじたくをして…。」
さらに、手をあらうのに10分以上かかることもありました。
「ああ、まだ足りない。これだと病気になっちゃう。ぼくがこの手でかぞくや友だちにふれたら、みんなを病気にさせてしまう。」
他にも、決めたことを決まったじゅんばんでやりとげられないと、イライラしてしまうのでした。
ある日、学校で図工の授業がありました。
みんなできょうりょくして、おしろを作ることになりました。
「みんなでりっぱなおしろを作ろうね。」
「そうだね!」
「うん!がんばろう!」
しかし、アライグマはこのじゅぎょうを楽しむことができませんでした。
たとえば、友だちがぶちまけたペンにがまんできなくてそろえ出したり、作品の細かいズレやはみ出しが気になったりしてしかたありませんでした。
「アライグマくん、そんなどうでもいいところばかりこだわって、おかしいよ。」
「そうだよ。細かいところばかり見てて、何だかいやみみたいだよ。」
アライグマはついにさけんでしまいました。
「しかたないじゃないか!すごく気になってしまうんだ!」
そしてトイレにかけこんでしまいました。
きょうしつにいる子どもたちはくちぐちに言いました。
「アライグマくんってそういえば、体育のペアダンスの時、ぜんぜん手をつなごうとしなかったよね。」
「ひどいね!」
「そうそう。じゅぎょう中でも休み時間でもとつぜん手を洗いに行っちゃうもんね。」
「この前なんか、遊びにさそおうとアライグマくんの家に行ったら、今日のスケジュールがめちゃくちゃになると言って、ドアを閉められたよ。」
「アライグマくんが自分のペースで生きたいなら、私たちはかかわらなくていいかもね。」
「そうだね。」
そこで、今までだまっていたクマが言いました。
「ねえ、アライグマくんは苦しんでいるんだよ。
ぼくはアライグマくんに、何でそんなにしんけいしつなのか聞いたんだ。
そうしたら、アライグマくんはきょうはくせいしょうがいという病気なんだって。」
「きょうはくせいしょうがい?」
みんなは声をそろえました。
くまはつづけました。
「OCDとも言われていて、自分でもやめたいと思っているけれど、
気がかりからのがれるには、とくていの行動をしないと
気がすまなくなってしまう病気なんだよ。」
アライグマの悪口を言っていた子どもたちはことばをうしないました。
そこにアライグマがもどって来ました。
子どもたちは言いました。
「ごめんね、アライグマくん、ぼくたちは君がOCD という病気になやんでいたなんて知らなかったよ。」
「その病気についてもっと教えてほしいな。」
アライグマは心がいっぱいになって言いました。
「みんな、うけ止めてくれてありがとう。じゃあ、おしろを作りながら話すね。」
みんなで作り上げたおしろは、大きくて、ごうかで、とてもりっぱでした。
解説
強迫性障害とは、強迫的な思考、衝動的な行動(どちらか一つ、あるいは両方)にとらわれ、自身が強迫性障害だと認識していても、それらを克服することが困難な精神疾患です。強迫性障害の症状として、このアライグマに見られるような過度な几帳面さ、衛生観念だけでなく、宗教、道徳心、特定の攻撃的な考え、イメージなどにとらわれるものもあります。しかし、ここで大切なのは、強迫性障害がある方と、単に綺麗好きであることや信仰心が厚いという方との違いの理解です。過った強迫性障害への認識は、本当に苦悩を抱える患者の方への理解を妨げてしまいます。強迫性障害は、耐え難い不快感を伴い、多くの時間を奪い、日常生活に支障をきたし、人間関係を阻害します。強迫性障害に対する周囲の理解やサポートが、患者の方の症状克服に貢献します。
参考:“Obsessive-Compulsive Disorder (OCD)”
“What It's Actually Like Living With OCD”