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カラスは大いそがし
カラスははたらきものでした。
学級委員や体育委員など、たくさんの仕事をひきうけていました。
そんな中、流行のカゼのきせつがやってきました。
先生はみんなに注意しました。
「カゼが流行っているから、予防のために手洗いうがいをしたり、きそく正しい生活を心がけてね。」
「はーい!」
子どもたちは元気よくへんじをしました。
カラスも、カゼに負けないよう、手洗いうがいにきそく正しい生活を心がけました。
一方で、自分だけはかからないだろうとも思っていました。
カラスは学級委員の会議のためのしりょう作り、体育委員としての校内体育大会のルール作り、図書委員としての読書をすすめるためのき画ていあん、また、習い事でも、ピアノの発表会のための練習、絵画コンクールのための作品作り、塾でのテストの準備など、大いそがしで、あまり休みを取らず、むりを重ねました。
そのため、カラスは体をこわし、流行りのカゼにかかってしまいました。
しかし、カラスは頑張るのをやめられませんでした。自分が休んだら、誰かのめいわくになると考えたらからです。
カラスが学校で体調が悪そうにしているのを見て、ほかの子どもたちがうわさをしました。
「カラスくん、流行りのカゼにかかったらしいけど、ちゃんと手洗いうがい、きそく正しい生活をしていないからなんだろうな!」
「え!だめじゃないか。きっとカラスくんは夜ふかしとか体に悪いことをしているからカゼをひいてしまうんだよ。不注意だな。」
カラスは周りの子どもたちのひそひそ話が耳に入り、悲しくなりました。
そこに、カラスと同じ委員会にしょぞくしているカメとゾウが来ました。
「カラスくん、ぼくは君が習い事や勉強に加えて、みんなのやりたがらないことをひきうけてくれるのを知っているよ。それでむりが来ちゃったんだろう。」
「カラスくん、今日は早退した方がいいと思う。いつもありがとう。あとはぼくらに任せてゆっくり休んでね。」
カラスは自分をそういうふうに見てくれているカメとゾウに心を打たれました。
そしてカラスはてきどな休みを取り入れ、自分のやれるはんいで活動するようにしました。
解説
カラスは自分だけは流行りの風邪にかからないと思い込みました。これは特に根拠がないのにも関わらず、自分と同じような属性(性別、年代など)を持った他者よりも、自分は不幸な出来事(犯罪、病気、災害)に見舞われる可能性が低いと考えてしまう「楽観性バイアス」に相当します。
また、病気になってしまったカラスに対して、子どもたちが不規則な生活や不注意による因果応報だとしていますが、これは「公正世界仮説」に基づく、「被害者非難」だと言えます。「公正世界仮説」は、人々が自らの心の平安を維持するために、世界は公正だという信念を保持していることを指します。そのため、世界の公正性が疑われるような、「能力があるのにも関わらず、不遇な人生を送っている人がいる。」という事実を拒否し、何らかの被害者に対して、「努力不足ではないか。」、「非があったのではないか。」と一方的に責任を問う「被害者非難」に繋がって行きます。これらは、被害を受け、心に傷を負った人にとって、深刻な精神ダメージの原因となります。
また、カラスに対して噂をしていた子どもたちが、もし風邪にかかり、その理由は自分たちはいそがしいスケジュールによって疲れてしまったからと、環境によるものだとするならば、これは「行為者ー観察者バイアス」に当たります。行為者として自分の行動の原因を考える時には、状況の影響力も考慮する一方で、観察者として他者の行動の原因を考える時には、行為者の性格や能力のような内的特性を重視しやすい傾向を持つということです。
参考:楽観性バイアス
公正世界仮説、被害者非難
行為者ー観察者バイアス