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アヒルは家で弟と宿だいをしていました。
アヒルが弟の宿だいをのぞきこむと、計算のまちがいを見つけました。
アヒルはピシャリと言いました。
「ここ、計算が違うよ。前も同じまちがいをしていたね」
すると弟は言いました。
「うるさいなあ、兄さんだってまちがえるでしょ!」
アヒルはびっくりしました。
「たしかにそうだけど、そんな言い方をしなくたっていいじゃないか…」
2人はそのあと口をきかなくなり、夕食のときもけん悪なムードがただよっていました。
お母さんがふしぎに思って言いました。
「お前たち、けんかでもしたのかい?」
アヒルは、ことのなりゆきをせつめいしました。
お母さんはアヒルの話を聞き、弟に言いました。
「お兄ちゃんがあなたの計算ミスを指てきしたら、お兄ちゃんだってまちがえるじゃないか!と言い返したのね。でも、お兄ちゃんがミスをするからって、自分のミスが指てきされるのをいやがってさけようとするのはあやまりよ。あなたのミスはミスとしてちゃんと受け止めて、次回はまちがえないよう気をつけるのよ」
アヒルは言いました。
「ぼくの言い方は少し気にさわる感じだったよね。ごめんね」
弟は言いました。
「ごめん。同じミスをする自分にムシャクシャして兄さんにつよく当たっちゃったんだ。これからは気をつけるよ」
そして、アヒルの家には楽しい夕食の時間がもどってきました。
解説
アヒルの弟はアヒルに算数の宿題の間違いを指摘された際、改めるのではなく、代わりに、アヒルも同様の間違いをするとの指摘をし反論しました。これは、「お前だって論法」に当たります。「お前だって論法」とは、批判を受けた際、批判された箇所に目を向けるのではなく、相手も同様の批判に値する言動があるのではないか、と反論してしまう誤謬です。
また、アヒルはアヒルの弟の間違いを指摘する際、やや強い口調でした。これは、弟の反発を誘発した原因の一つとなっている可能性があります。これには、「ドクターフォックス効果」が関係します。それは、情報を取得する際、伝達する情報の内容よりも、その伝達方法である、非言語メッセージの影響を大きく受ける、という心理効果です(非言語メッセージとは、身振り手振りや表情、動作などで伝わるメッセージです)。そのため、いくら内容が正当性を持ったものだとしても、伝達をする上での非言語メッセージが不十分な場合、他者を説得することは難しいかもしれません。内容の充実はもちろん、伝達方法にも気を配ることが大切です。
参考:
「お前だって論法」
「ドクターフォックス効果」(Dr.Fox effect)