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エアコンの話
クマとウサギは夏のあつい日、クーラーのきいたへやでしゅくだいをしていました。
つかれたのでアイスクリームが食べたくなった二人は、ちかくのコンビニへ行くことにしました。
クマがエアコンをつけたままへやを出ようとしたのを、ウサギはびっくりして言いました。
「でんきがもったいないわ!すぐにけして!!」
クマは言いました。
「こまめにつけたりけしたりするほうがでんきをつかうんだよ。今日のニュースでやっていたんだ。」
ウサギは、
「ちがうわ!ずっとつけるほうがいけないわ!」
と聞きません。
クマはこまってしまいました。
ウサギはつづけました。
「しょうこならあるわ。わたしのお兄さんは、ずっとエアコンをつけっぱなしにしていたらでんきだいが高くついて、しょくじをがまんしなければならなくなったのよ。」
「わたしのおばあちゃんも言ってたし!」
ウサギのけんまくに、クマは何も言えなくなりました。
そこにライオンがやってきました。
「どうしたの?けんかをしているの?」
ウサギが言いました。
「ねえ、エアコンってこまめにけしたほうがいいよね!?クマくんはつけっぱなしに
したほうがいいっていうんだよ…!」
ライオンは言いました。
「ウサギちゃんは正しいよ。」
ウサギはうれしくなりました。しかし、ライオンはつづけました。
「でも、クマくんも正しいよ。」
クマは少しびっくりしました。ウサギはもっとびっくりしました。
「ちかくのコンビニに行くくらいだったら、つけっぱなしのほうがでんきだいはやすいんだ。でも、ながく出かけるときは、けしたほうがいいんだよ。」
ライオンの家はでんきやさんでした。ですからその手の話にはくわしいのでした。
「ウサギちゃん、クマくんの言っていることもよく聞くといいよ。自分とちがう考えはまちがっているように思うけれど、それが正しいこともあるんだ。あと、自分の考えと同じ考えばかり見ないで、他の考えにもちゃんと目を向けようね。」
ウサギはクマにあやまりました。
「ごめんね。クマくんの話、もっと聞くようにするね。」
クマはわらって言いました。
「いいよ!さあ、みんなでアイスクリームを買いに行こう!」
解説
自分が盲信していることを、相反する意見あるいは事実によってその真偽が問われたとき、人はその信念をより強固にします。これをbackfire effectあるいはentrenchmentと言います。直訳で、backfireとは裏目に出ること、entrenchment とは塹壕に入ることを指します。
物語では、ウサギはエアコンを消さなければいけないという自身の信念がくまに疑われ、クマの意見を取り入れることなく耳を塞いでしまいます。これがbackfire effect、entrenchmentです。
自分の信念を裏付ける情報のみを取り入れ、それに反対する情報は見ないふりをすることを、cherry pickingあるいはconfirmation biasと言います。
cherry picking とは文字通り、良いさくらんぼを選んで摘むことです。confirmation biasとは日本語で確証バイアスと言います。
物語では、ウサギは自分に都合のいいおばあちゃんの意見を取り入れますが、クマの意見は相反するので無視しようとしています。これがcherry picking、confirmation biasです。
参考:David McRaney."The Backfire Effect"
"Confirmation Bias"