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キツネはアカペラの動画をスマホで見ていました。
「ラ〜ラ〜ラ〜」
「わあ、きれいなハーモニーだなあ。ボクもこんなふうに歌えたらなあ。」
キツネは地元の歌唱クラブに入ることにしました。
「これからよろしくお願いします!」
「よろしくね。じゃあ早速この曲を歌ってみてほしいな。」
キツネは一生けんめい歌いましたが、あまり上手ではありませんでした。
クラブで歌を指導している先生が言いました。
「ありがとう。元気に歌えたね。もっとうまくなるために、練習していこう!」
キツネは早くクラブの人たちのように歌えたらいいなと思い、練習をくり返しました。
「キツネくん、一緒に帰ろうよ。」
「ああ、ボクはまだ残って歌を練習するから、ごめんね。」
「キツネくん、少し休憩しない?」
「いや、ボクはまだ練習を続けるよ。」
キツネは自分の歌を上手にすることでいっぱいでした。
そして、しだいに他のメンバーと距離を取るようになりました。
そんな中、歌の発表会が迫ってきました。
キツネの歌唱クラブではグループになってひろうします。
しかし、キツネはたくさん練習をしていましたが、まだけいけんが足りないため、他のメンバーに引けを取っていました。
「キツネくん、そこはのびやかに歌わないとダメだよ。」
「キツネくん、そこで息つぎをしてはいけないよ。」
キツネは先生に注意され、グループ全員で歌い直しをすることが増えました。
メンバーたちは注意をされつづけているキツネにいや気がさしてきました。
「あーあ、キツネくんがいなかったら、もう今ごろ他の曲も練習できてたのになあ。」
「そうだよね。何回も歌い直しをしたから、疲れちゃったよ。」
「キツネくんなしでやりたいね。」
「今日の音楽の授業で歌のテストがあったんだけど、ライオンくんすごく上手だったんだ。」
「へえ!すごいね。歌を習ってないのに。」
キツネはみんなが悪口を言っているのを聞いて、ショックを受けました。
キツネはその日の夜、自分の部屋でお気に入りのアカペラ歌手のインタビューの動画を見ました。
「歌うときに大切にしていることはなんですか?」
「そうですね。一人ではハーモニーは作れないので、私は他の人の音楽をきくことを大事にしています。コミュニケーションも重要ですね。日ごろから何を考えているのか、何を感じているのか、知ることで、歌を歌うときに初めて音を合わせられると思っています。」
キツネはハッとしました。
次の日、キツネはクラブでメンバーのみんなに言いました。
「みなさん、ボクのせいで足をひっぱってごめんなさい。ボクはもっと練習が必要だと思うから、がんばります。でも、もっとダメだったのは、みんなの音楽を大切にしなかったことだと思う。自分のことしか見えてなかったよ。だから、今度からは、みんなと音楽を作っていきたいと思います。」
クラブの子たちはおどろきました。そして言いました。
「大丈夫だよ。ボクたちもキツネくんの音楽と向き合っていなかったよ。発表会、がんばろうね!」
発表会当日、会場では元気でいっぱいのハーモニーがひびきわたっていました。
解説
キツネは歌唱クラブで、後から入ったため歌のレベルが少し低く、周りの誘いを断って、一人で練習をするようにしたため、メンバーの子達と距離ができてしまっていました。そのため、「黒い羊効果」での排除の対象である黒い羊となってしましました。「黒い羊効果」とは、自分と同じ集団に所属していると考えている人を、好ましい特徴を持つ場合はより高く評価し、好ましくない特徴を持つ場合はより低く評価する現象です。物語では、クラブのメンバーよりキツネは歌が上手くない点において、より低く評価され、クラブに属していないライオンは授業で歌がある程度上手であった点において、より高く評価されたことが該当します。黒い羊にならないためには、日頃から集団の人たちとコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことが有効です。
参考