不急のビジネスが文化を作る
先日、不要不急について、noteを書きました。
その後、色々考えた結果、一旦の結論にたどり着きました。それは「不要なビジネス」と「不急のビジネス」は、切り分けて考えよう。ということです。
不要=消えるべき。不急=守るべき。
不要なビジネスは「無くて良い」ビジネスです。この機会に、無くなっちゃえばいいんじゃないかと思います。例えば、健康効果の得られない健康食品って不要ですよね。痩せないダイエット食品、痩せない腹筋刺激マシーンめ・・・許さない。許さないぞ。あとは、水素水とかもそうかなと。個人的には、パチンコとかもそうじゃないかなぁって思うんですけど、このあたりは人によって感覚が違うかもなので、本日は論じません。
一方、不急なビジネスは「あった方が良い」ものです。これは、無くなるっても当面は困りませんが、後々で、ボディーブローのように効いてきます。例えば、映画や演劇などのエンターテイメントや、絵画や音楽、文学などのアート作品、ファッション・アパレル関連、居酒屋やバーなどの飲食関連は、この部類に入ると思います。
もちろん、どこで線を引くのか?の定義はありませんし、上の例示に異論がある方もいるでしょう。しかし、具体的に、何をどちらに入れるかはともかくとして「不急」は「豊かな生活を送るためのもの」です。
この不急のものを無くすのは、危険です。
自分の仕事は、どこに位置するのか?
このように考えたとき、たどり着くのは前回と同様に「自分の仕事って、どういう位置づけなのだろうか」というお話です。
例えば、僕のお仕事「コンサルティング」。まぁ、正確に言うと、僕のやっているのは、ファシリテーションとかコーチングとか、そういう表現の方が近い部分もあるのですけれど、提供する便益としては、以下のようなものが挙げられます。
■ 顧客の課題を明確化する:言ってることを鵜呑みにしないで、本当に何を解決すべきかを一緒に探す
■ その課題を解決するために、何をしたら良いか:オプション出しと、オプションの評価を行う。業務上の制約も理解する
■ 解決策の実行計画を練る:やるべき打ち手を見極めて、それを、どういうリソース配分で、どういうスケジュールで実行するかを決める
いわゆる”ファシリテーション”との違いとしては、課題や解決方法の検討に際して、いろいろな業界・事業領域・業務領域の事例や知見を基に、アイデアを出したり、具体的なアドバイスを行ったりできる、というところだと思います。(一方で、いわゆる”コンサルティング”との違いは、答えを出すのではなく、一緒に答えを探すというアプローチにあります)
ご支援させていただくプロジェクトの種類は、「イノベーションを起こす!」「新規事業を立ち上げる!」みたいなお話もあるんですが、多くの場合は「効率を上げる」という話になります。
まぁ、効率とひとことで言っても、「同じコストでより大きなメリットを得る」ということなので、適用範囲は、営業改革・物流改革などのプロセス改善、マーケティング改革・人事改革などのリソース配置の最適化、事業ポートフォリオの見直し(≒中長期経営戦略策定)などの戦略検討まで、多岐にわたりますが、限られたリソースで最大のアウトカムを出すというお話です。
で、本題に戻りましょう。いやー、これね。残念ながら「不急」です。
さすがに「不要だ」とまでは思わないんですが、”より儲けるために” とか ”より楽に働くために” とか ”より多くのお客様に幸せを届けるために” とか、そういう「いま”より”も」という視点なんです。better world を作ろう、という話。
これ、現在のような「疫病を封じ込める」というステージだと、ほとんど役に立たないんですよね。
もちろん
・同じ作業を、いまよりも少人数で作業するにはどうしたらいい?
・対面作業を減らして、リモートで業務を行うためにはどうしたらいい?
・同じ物流網で、もっとたくさんモノを運ぶには?
みたいな視点で、僕たちのスキルが役に立つ部分はあります。
でも、「無いと困る」というよりは「あったらいいな」に分類されちゃうんですよね。間違いなく。敢えて言えば、「不要寄りの必要で、至急度も低い」という位置づけです。ツラい。
不急なものを絶やさない
そんなわけで僕たちの仕事は、残念なことにMUSTではなく、Nice-to-haveですが、そんなものよりも「必要性が高く、至急度が低いもの(=必要/不急)」として、美しい絵や、楽しい音楽、美味しい食べ物やお酒、おしゃれな洋服(※”最低限”の食べ物および衣類はMUSTです)があります。
じゃぁ、そういう「必要だけど不急のもの」が消えてなくなって良いか?というと、それは違います。
人は文化的な生き物です。音楽を聴き、絵画を眺め、着心地の良い服を着て、座り心地の良いソファに座り、良い香りのする珈琲を味わい、葉巻をくゆらせ、琥珀色の酒を舐め、美味しい食べ物を摘まむわけです。
これが「豊かな生活」ということだと思います。(上記が万民にとっての理想形というわけではないのは理解してます。ちなみに、僕、珈琲も飲まなければ、葉巻も嗜みません)
そういう「豊かさ」につながる産業を、この緊急時にどう守るか。あるいは、一旦、消えたとしても、どうやって再興するか、が大事です。
※あれ、コンサルは?って思いました? はい。上記のような生活をするためには「お金」と「時間」が必要なので、それをいかに創出するか、がコンサルの便益なんですよね。でも、まぁ、「コンサルという業種」を保護する必要は無いと僕は思いますけどもね。
耐え忍ぶ時期は「要/急」に注力。余力があれば「急」を支援
そんなわけで、結論です。僕らは「必要/不急を”個人的”に支援すべき」です。
僕たちは、いま緊急事態に直面しています。不要不急の外出は避けよう、というお話が出てますし、不要不急のイベントは軒並み中止です。社会全体が「必要/至急」に全力投球するべき時なのです。
しかしながら、先ほど述べたように、人が人らしく生きる、豊かな生活を送るためには「必要/不急」が大切です。なくなったら困るのです。
繰り返します。いま、社会全体が守るべきは「不要/不急」です。社会の機能が止まるからです。それは最優先です。電気や水道、ガスが止まるのは致命傷です。物流が止まったら生活ができません。医療関係のサービスや、生活必需品の小売業も止められません。こういうものに優先的にリソースが振り向けられるのは仕方ない事です。
だからこそ、個人で「必要/不急」を支援しましょう。お気に入りのレストラン、気心知れた居酒屋、行きつけのバー、大好きなアーティストを応援しましょう。ただし、感染拡大にならないように、細心の注意を払う必要があります。
飲食店ならテイクアウトやデリバリーの検討も良いでしょう。アーティストなら作品やグッズなどの購入。便利な世の中です。各種決済サービスでお金を振り込むこともできますし、口座番号が分かるなら普通に銀行振り込みだってできます。感染回避と、支援の両立を考えましょう。
もちろん、自分自身の生活で手いっぱいの人は、自分のことだけで大丈夫です。余裕がある人だけでいいんです。で、余裕があるなら「必要/不急」を支援しましょう。
僕たちの文化的な生活を形作っている、必要/不急のビジネスが、消えてなくなってしまわないように、最善を尽くして、この緊急事態をみんなで乗り越えていきたいですよね。