歴史のすみっこ話(2) 〜HNK大河ドラマ「国盗り物語」のディレクター、司馬氏を口説く〜
歴史のすみっこ話。今回は、1973年に放送されたNHK大河ドラマ、『国盗り物語』。
国民的作家、といっていい司馬遼太郎氏の作品がHNK大河ドラマの原作として初めて取り上げられたのは、1968年の『竜馬がゆく』。
前年の大河ドラマ「三姉妹」は、架空の人物である旗本の三姉妹を主人公にして、女性目線で明治維新を描くという斬新な試みの作品でしたが、斬新すぎたのか視聴率は振るわず、NHKが巻き返しを狙って、司馬遼太郎氏の大ベストセラー『竜馬がゆく』を原作に大河ドラマを制作しました。
しかし、NHK側の制作体制の問題もあって視聴率は「三姉妹」よりも悪いという結果になってしまいました。
そして、再び司馬遼太郎氏作品『国盗り物語』を原作に大河ドラマを作ろうということになったのですが・・・。
前回の『竜馬がゆく』の大河ドラマが不評であったことから、司馬遼太郎氏は、『国盗り物語』の大河ドラマ化には消極的でした。
自分の作品は大河ドラマには向いていない、と思っていたのかもしれません。
しかし、なんとか『国盗り物語』を大河ドラマ化したかったNHKのディレクターは、司馬氏にこう提案します。
単に『国盗り物語』のみを原作とはせず、司馬先生が今まで書かれた戦国時代の小説群を原作に取り込み、多角的に戦国時代を描いてみたい、と。
これを聴いて、それまで乗る気ではなかった司馬氏が「それは面白いですな」と身を乗り出し、大河ドラマ化が決まったのでした。
そのため大河ドラマ『国盗り物語』には、原作の『国盗り物語』には登場しない、司馬氏の『梟の城』の主人公「葛籠重蔵(つづら じゅうぞう)」(演者:露口茂)、『尻啖え孫市(しりくらえまごいち)』の主人公「雑賀孫市(さいか まごいち)」(演者:林隆三)、『功名が辻』の主人公「山内一豊」(演者:東野英心)などが登場し、強烈な印象を残します。
また、『新史太閤記』も原作として取り入れられており、主人公、豊臣秀吉(演者:火野正平)は、(前後編の総集編しか見れていませんが)この大河ドラマでは、道三、信長、光秀に次ぐ主人公であるかのように見えてしまいます。
惜しむらくは、この大河ドラマのフィルムが総集編の前後編しかNHKには残されてなく、今や、全放送回を見ることが叶わないということろでしょうか。
ではでは、本日の歴史のすみっこ話はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。