マガジンのカバー画像

いだてん噺

45
運営しているクリエイター

2025年1月の記事一覧

[いだてん噺]世界女子競技大会第一日目01(1477文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて24日。
 1926年(大正15年/昭和元年)8月27日、第2回世界女子競技大会第一日目。
 
 人見絹枝が最初に参加したのは、午後6時からの100ヤード走第一予選であった。
 100ヤード走の参加者は19名。第一予選で各組の2着までが決勝へ進める。

 絹枝はイギリスのハイネス選手と同じ第三組(6名参加)で、第一予選に臨んだ。

 6名の選手はスタートして20

もっとみる

[いだてん噺]世界女子競技大会開催(2077文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて24日目。
 1926年(大正15年/昭和元年)8月27日、第2回世界女子競技大会開催日。

 絹枝が暖かいベッドの中で目覚めたのは午前11時を過ぎていた。
 起き上がって部屋のカーテンを引く。窓の下に見える街は真昼間の表情を見せていた。

 起きて来た絹枝に、隣の部屋のマネージャーの黒田乙吉が、にこにこ顔でこう言った。

 「ほう!起きたかね。死んだと思ってい

もっとみる

[いだてん噺]大会前日(3957文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて23日目。1926年(大正15年/昭和元年)8月26日、第2回世界女子競技大会開催の前日。

 朝から絹枝は、マネージャーの黒田とともに、必要なものを揃えるため、買い物に出かけた。
 絹枝が日本から履いてきた靴は、バンケット(晩餐会/パーティ)等に履いていけるものではなかったため、靴店に買いに入った。

 自分の足にあう靴がはたしてあるのだろうか、と心配していた

もっとみる